フィート律表記と音高
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/02 06:32 UTC 版)
「ストップ (オルガン)」の記事における「フィート律表記と音高」の解説
複数のストップを混合させて音色を作り出す方法は、大きく分けて2つの面から見ることができる。1つは、異なった音色の混合によって生み出されるものであり、そしてもう1つは、異なった音高の混合によって生み出されるものである。この後者のものは、音色の特徴としての倍音構成を複数の音高のパイプ群を組み合わせることで人工的に作り出すものであり、ストップを使用する上で特に重要な概念である。 一般にオルガンのストップ名には数字が添えられているが、これはフィート律によるストップの基準音高の表記である。一般的には、数字の横に「 ' (プライム)」が添えられ、ヤード・ポンド法における長さの単位としてのフィート(以下フィートはプライムで表記)を意味する。 フィート律表記の異なる様々なストップを使用した場合における 記音・鍵盤と実音との違いストップのフィート律表記鍵盤左端の"C"音を奏した場合パイプの長さ発音される音ヤード・ポンド法メートル法記音・鍵盤と実音との関係音名周波数1/4'ストップを使用した場合 0.25ft 0.08m 7.62cm 記音・鍵盤に対して5オクターヴ上の音 c4 2048Hz 1/2'ストップを使用した場合 0.50ft 0.15m 15.24cm 記音・鍵盤に対して4オクターヴ上の音 c3 1024Hz 1'ストップを使用した場合 1.00ft 0.30m 30.48cm 記音・鍵盤に対して3オクターヴ上の音 c2 512Hz 2'ストップを使用した場合 2.00ft 0.61m 60.96cm 記音・鍵盤に対して2オクターヴ上の音 c1 256Hz 4'ストップを使用した場合 4.00ft 1.22m 121.92cm 記音・鍵盤に対して1オクターヴ上の音 c 128Hz 8'ストップを使用した場合 8.00ft 2.44m 243.84cm 記音・鍵盤と同音 C 64Hz 16'ストップを使用した場合 16.00ft 4.88m 487.68cm 記音・鍵盤に対して1オクターヴ下の音 C1 32Hz 32'ストップを使用した場合 32.00ft 9.75m 975.36cm 記音・鍵盤に対して2オクターヴ下の音 C2 16Hz 64'ストップを使用した場合 64.00ft 19.51m 1950.71cm 記音・鍵盤に対して3オクターヴ下の音 C3 8Hz オルガンにおいて、鍵盤どおりの音高が発音されるストップ、すなわち、記音(記譜音)と実音とが一致するストップは8'である。これは一般に鍵盤の左端の鍵はヘ音記号における下第二線のC音となるが、この音を出すために必要な通常の開管のパイプ長がおおよそ8'であることに由来する。オルガンのストップにおける基準音高のフィート律表記は、この鍵盤の最低音のパイプの長さを表記することによっている。したがってストップの全ての音のパイプ長が8'という意味では決してない。1フィート=0.3048メートルであるため、8'=2.4384mとなる。記音の1オクターヴ上の音高で発音するストップは8'の2分の1倍長で4'であり、記音の2オクターヴ上の音高で発音するストップは8'の2×2=4分の1倍長の2'となる。また逆に、記音の1オクターヴ下の音高で発音するストップは8'の2倍長で16'、記音の2オクターヴ下の音高で発音するストップは8'の2×2=4倍長の32'となる。 実際のパイプにおいては、音高に対して様々なパイプ長が採られており、例えば、閉管の場合に要求されるパイプ長は同じ音高の円筒開管の1/2の長さであり、リード管の音高は共鳴管の長さだけでは決定されない。しかしフィート律表記では実際のパイプの長さに関わらず、基準音高に対応する円筒開管のパイプ長によって表記する。 記音・鍵盤に対してオクターヴ間隔以外の音程のストップもあり、ミューテーション・ストップと呼ばれる。5度音程系のものが最も一般的で、次いで長3度音程系が使用されるが、それ以外のものは標準的にどのオルガンにおいても装備されているものではなく、個性的な仕様となる。ミューテーション・ストップは基本的に単体で使用することはないが、稀に単体のミューテーション・ストップを移調楽器のように用いることもある。 上図の中で、特に低い5度音程系のストップは標準的なものではなく、一般に差音効果を生み出すためのものである。例えば低音域のパイプを完全5度の音程関係で2本同時に鳴らすと、低い方のパイプよりも1オクターヴ下の音が聴こえる。この差音の特性を利用した5度音程系のストップは、19世紀のシンフォニック様式のオルガンで流行し、設置場所に充分な高さを必要とする長大な低音パイプに対して、設置スペースを節約するための一つの解消法ともなっている。例えば、32'ストップが設置する空間が確保できないような場合、16'に10 2/3'を同時に鳴らすことで32'の低音を擬似的に得ることができる。 各設定基音上に混合され得る近似倍音の組み合わせ表倍音度数近似音フィート律第64倍音 43度音 C 1' 1/2' 1/4' 1/8' 1/16' 1/32' 1/64' 第48倍音 40度音 G 1 1/3' 2/3' 1/3' 1/6' 1/12' 1/24' 1/48' 第32倍音 36度音 C 2' 1' 1/2' 1/4' 1/8' 1/16' 1/32' 第31倍音 2 2/31' 1 1/31' 16/31' 8/31' 4/31' 2/31' 1/31' 第30倍音 35度音 B 2 2/15' 1 1/15' 8/15' 4/15' 2/15' 1/15' 1/30' 第29倍音 2 6/29' 1 3/29' 16/29' 8/29' 4/29' 2/29' 1/29' 第28倍音 Bb 2 2/7' 1 1/7' 4/7' 2/7' 1/7' 1/14' 1/28' 第27倍音 2 10/27' 1 5/27' 16/27' 8/27' 4/27' 2/27' 1/27' 第26倍音 34度音 A 2 6/13 1 3/13' 8/13' 4/13' 2/13' 1/13' 1/26' 第25倍音 G# 2 14/25' 1 7/25' 16/25' 8/25' 4/25' 2/25' 1/25' 第24倍音 33度音 G 2 2/3' 1 1/3' 2/3' 1/3' 1/6' 1/12' 1/24' 第23倍音 F# 2 18/23' 1 9/23' 16/23' 8/23' 4/23' 2/23' 1/23' 第22倍音 32度音 F 2 10/11' 1 5/11' 8/11' 4/11' 2/11' 1/11' 1/22' 第21倍音 3 1/21' 1 11/21' 16/21' 8/21' 4/21' 2/21' 1/21' 第20倍音 31度音 E 3 1/5' 1 3/5' 4/5' 2/5' 1/5' 1/10' 1/20' 第19倍音 Eb 3 7/19' 1 13/19' 16/19' 8/19' 4/19' 2/19' 1/19' 第18倍音 30度音 D 3 5/9' 1 7/9' 8/9' 4/9' 2/9' 1/9' 1/18' 第17倍音 Db 3 13/17' 1 15/17' 16/17' 8/17' 4/17' 2/17' 1/17' 第16倍音 29度音 C 4' 2' 1' 1/2' 1/4' 1/8' 1/16' 第15倍音 28度音 B 4 4/15' 2 2/15' 1 1/15' 8/15' 4/15' 2/15' 1/15' 第14倍音 Bb 4 4/7' 2 2/7' 1 1/7' 4/7' 2/7' 1/7' 1/14' 第13倍音 27度音 A 4 12/13' 2 6/13' 1 3/13' 8/13' 4/13' 2/13' 1/13' 第12倍音 26度音 G 5 1/3' 2 2/3' 1 1/3' 2/3' 1/3' 1/6' 1/12' 第11倍音 25度音 F# 5 13/23' 2 18/23' 1 9/23' 16/23' 8/23' 4/23' 2/23' F 5 9/11' 2 10/11' 1 5/11' 8/11' 4/11' 2/11' 1/11' 第10倍音 24度音 E 6 2/5' 3 1/5' 1 3/5' 4/5' 2/5' 1/5' 1/10' 第9倍音 23度音 D 7 1/9' 3 5/9' 1 7/9' 8/9' 4/9' 2/9' 1/9' 第8倍音 22度音 C 8' 4' 2' 1' 1/2' 1/4' 1/8' 第7倍音 Bb 9 1/7' 4 4/7' 2 2/7' 1 1/7' 4/7' 2/7' 1/7' 第6倍音 19度音 G 10 2/3' 5 1/3' 2 2/3' 1 1/3' 2/3' 1/3' 1/6' 第5倍音 17度音 E 12 4/5' 6 2/5' 3 1/5' 1 3/5' 4/5' 2/5' 1/5' 第4倍音 15度音 C 16' 8' 4' 2' 1' 1/2' 1/4' 第3倍音 12度音 G 21 1/3' 10 2/3' 5 1/3' 2 2/3' 1 1/3' 2/3' 1/3' 第2倍音 8度音 C 32' 16' 8' 4' 2' 1' 1/2' 基音 元音 C 64' 32' 16' 8' 4' 2' 1'
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