ストップ名
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/02 06:32 UTC 版)
「ストップ (オルガン)」の記事における「ストップ名」の解説
ほぼ同一種のストップでも、地域により名称が異なる場合が多い。例えば最も基本的な中庸なスケールの円筒開管フルー管のストップは地域により以下のように呼ばれる。 フィート律伊独仏英8'Principale Prinzipal Montre Open Diapason 4'Ottava Octav Prestant Principal 2'Quintadecima Superoctave Doublette Fifteenth また逆に同一名称のストップであっても、地域や時代あるいは製作家によって内容が異なることがある。 一般にオルガンの仕様書は、そのオルガンの持つ全ストップをまとめた一覧表を載せている。各言語において以下のように呼ばれる。 英:stoplist・stop-list, specification独:Disposition仏:composition(de l'orgue), disposition伊:disposizione, composizione ストップ名は、鍵盤ごとに、フルー管、複合管、リード管に分けて、それぞれピッチの低い順に並べられる。また仕様書には、楽器に装備されているカプラーの種類や、機構方式、鍵盤数、足ペダルの種類と数(スウェル・ペダル、クレッシェンド・ペダル)、コンビネーション・メモリの保存セット数なども書かれる。 ストップ名の付け方は様々であるが、以下に例を挙げる。 パイプの形状や素材に由来するもの Gedeckt=閉管 decken(蓋をする)に由来 Flûte Conique=円錐型のフルート Holzregal=木製のレガール 実際的な事象に由来するもの Montre=前面陳列管 Hintersatz=背後管 Untersatz=低位管 Mixture=混合管 Flûte harmonique=倍音フルート 音高に由来するもの Octave=8度 Quintadecima=15度 Vigesima Nona=29度 音色の表情に由来するもの Nasard=鼻声 Scharfe=鋭い Dolce=柔和な 音色が連想させる楽器に由来するもの Blockflöte=リコーダー Trumpet=トランペット Viola da Gamba=ヴィオラ・ダ・ガンバ 代表的なストップストップ名説明Bombarde(仏) フランスのオルガンで見られる16'のリード・ストップ。 Clarion(英), Clairon(仏) 4'のリード・ストップ。ピッチの高いTrumpet。 Cornet 名称はコルネット(ツィンク)に由来する。Bourdon8', Prestant 4', Nasard 2-2/3', Quarte de Nasard 2', Tierce 1-3/5'の組み合わせに相当する複合ストップで、リード的な音色を持ち、ソロで用いるほか、リード・ストップの高音域を補うことにも用いられる。8'や4'は省略されることもある。通常、音域は鍵盤の右半分のみである。 Cromorne(仏), Krumhorn(独) 名称はクルムホルンに由来する。円筒形共鳴管を持つリード・ストップ。古典的なフランスのオルガンのポジティフが一般的に備える。 Cymbel, Zimbel(独), Cymbale(仏) 高いピッチのミクスチュア。通常のミクスチュアに加えてさらに鋭い音質を得る。 Dulciana(英) 狭スケールの円筒開管フルー管。非常に静かなストップ。 Flauto(伊), Flûte(仏), Flöte(独), Flute(英) フルート・ストップ(広スケールのフルー管)に広く用いられる名称である。多くのヴァリエーションが存在する。 Gedackt(独), Bourdon(仏), Stopped Diapason(英) 一般的な閉管フルート・ストップ。木製のものが多い。 Gemshorn 名称は同名の楽器に由来。先細りの構造の開管フルー管。フルートとストリングの中間的な音色。 Larigot(仏) 1-1/3'の5度音程系フルート・ミューテーション・ストップ。 Mixtur(独), Mixture(英), Fourniture(仏), Ripieno(伊) 複数の高いピッチのフルー管のパイプ列からなる複合ストップで、高次の倍音を付加することによって輝かしい音色をもたらす。一般にオクターヴ系と5度音程系のパイプ列からなるが、3度音程系を含む場合もある。 Nasard(仏), Nasat(独) 2-2/3'の5度音程系フルート・ミューテーション・ストップ。 Principale(伊), Prinzipal(独), Montre(仏), Open Diapason(英) 中スケールの円筒開管フルー管。オルガンの最も基本的な音色。一般にフロントパイプとしてオルガンのケースの最前面に並ぶ。 Quarte de Nasard(仏) Nasardの4度上、即ち2'のフルート・ストップ。 Quintaten 12度が基音と同じぐらい顕著に鳴る閉管フルート・ストップ。 Regal 同名のオルガンの一種に由来する。非常に短い共鳴管を備えたリード管で、多くのヴァリエーションが存在する。 Rohrflöte(独), Chimney flute(英) 広スケールの半閉管フルー管で、蓋に煙突状のダクトが付いていることが特徴である。ダクトはパイプ内部に隠される場合もある。 Salicional 名称はラテン語のsalix(柳)に由来する。狭スケールの円筒開管フルー管で弦楽器的な音色。17世紀にはハプスブルク領内特有のストップであったが、19世紀には一般的に見られるようになった。 Sesquialtera 2-2/3'と1-3/5'の2列のフルー管からなる複合ストップ。基音のストップにリード的な音色を付加する。 Sifflet(仏), Sifflöt(独) 1'のフルート・ストップ。 1-1/3'や 2'のこともある。 Subbass(独), Soubasse(仏) 16'あるいは32'のBourdon。 Tierce(仏), Tertia, Terz(独) 1-3/5'の3度音程系フルート・ミューテーション・ストップ。特にフランスのオルガンに見られる。 Trumpet(英), Trompete(独), Trompette(仏), Tromba (伊) 非常に一般的なリード・ストップ。長い円錐あるいはフレア型の共鳴管を持つ。 Viola da Gamba(伊), Viole de Gambe(仏) 名称は同名の楽器に由来し、弦楽器に似た音色を持つストリング・ストップの代表であるが、多様な形式のストップがこの名で呼ばれ、共通しているのは弦楽器に似た音色を持っているということだけである。
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