ファインマンの経路積分とは? わかりやすく解説

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経路積分

(ファインマンの経路積分 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/15 17:53 UTC 版)

経路積分(けいろせきぶん)あるいは径路積分は、リチャード・P・ファインマンが考案した量子力学の理論手法である。ファインマンの経路積分とも呼ばれる。

概要

t0 で同時に A 点を出発した粒子が、別の t1 で同時に B 点に到達する無数の経路のうちの 3 つを示している。

古典力学(古典系)では、ある質点の運動の様子(運動の経路)は初期状態を決めてしまえば後は運動方程式を解くことによって一意的に定まる。一方、量子系では量子的な不確定さ(量子ゆらぎ)が存在するため、古典系のような一意的な経路の決定はできない。

量子系で素粒子などの運動の様子を求める方法はいくつか存在するが、その一つとして経路積分による方法がある。

経路積分の数式では、始点と終点を結ぶ経路は無数にかつ大域的に分布している。それら無数の経路を計算上で合成すると求める結果となる。 経路積分法によって求めた測定値の確率分布は、通常の演算子形式で求めた確率分布と一致する。よって演算子形式と経路積分法は等価な理論である。

演算子形式(シュレーディンガーによる波動力学ハイゼンベルク行列力学)では、系の時間発展は運動方程式(例えばシュレーディンガー方程式)を解くことで求まるが、経路積分では運動の経路に着目して、経路全体に対する大域的な視点で量子力学上の問題を扱う。ファインマンは、ポール・ディラックの論文にあった「時刻 tt + Δt(Δt は微小とする)の 2 状態間の遷移の振幅が、該当する系のラグランジアンの指数関数に対応する」という記述に着想を得て、この手法を考え出した。ファインマン自身は、この手法を使って液体ヘリウムの極低温でのロトン励起の問題などを理論的に扱った。

発想

経路積分は古典力学の基本原理であるラグランジュの最小作用の原理を元にしている[1]()[2]。 その際、ファインマンはディラックの著書[3]中の

出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。 記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。2024年11月

論文

  • R. P. Feynman "Space-Time Approach to Non-Relativistic Quantum Mechanics" Rev. Mod. Phys. 20 (1948) 367. PDF
  • R. P. Feynman "Space-Time Approach to Quantum Electrodynamics" Phys. Rev. 76, (1949) pp.769-89 PDF

書籍

  • P. A. M. Dirac『The Principles of QUANTUM MECHANICS』みすず書房、1963年。ISBN 4-622-02512-4 
  • 崎田文二、吉川圭二:「経路積分による多自由度の量子力学」、岩波書店、ISBN 4-00-005313-2 (1986年8月29日).
  • 大貫義郎、鈴木増雄、柏太郎:「経路積分の方法」、岩波書店、ISBN 4-00-010442-X (1992年9月)
  • R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス:「量子力学と経路積分」、みすず書房、ISBN 978-4-622-0410-0-9 (1995年5月10日)
  • L.S.シュルマン、高塚和夫(訳):「ファインマン経路積分」、講談社サイエンティフィク、ISBN 4-06-153217-0 (1995年5月10日)
  • M.B. メンスキー:「量子連続測定と経路積分」、吉岡書店、ISBN 978-4842702544(1995年7月)
  • スワンソン:「経路積分法:量子力学から場の理論へ」、吉岡書店(物理学叢書 74)、ISBN 4-8427-0258-3 (1996年9月10日)
  • 中村徹:「超準解析とファインマン経路積分」、河合出版、ISBN 978-4-87999971-9(1997年9月)
  • 中村徹:「超準解析と物理学」、日本評論社、ISBN 4-535-78248-2 (1998年6月10日).
  • 杉田勝美、岡本良夫、関根松夫:「経路積分と量子電磁力学」、森北出版、ISBN 4-627-78271-3 (1998年10月6日)
  • 米満澄、高野宏治:「経路積分ゼミナール: ファインマンを解く」、アグネ技術センター、ISBN 978-4-90004129-5 (1999年7月30日)
  • 藤原大輔:「ファインマン経路積分の数学的方法:時間分割近似法」、シュプリンガー・フェアラーク東京、ISBN 4-431-70748-4 (1999年10月11日)
  • 藤川和男:「経路積分と対称性の量子的破れ」、岩波書店、ISBN 4-00-007415-6 (2001年2月23日)
  • 森藤正人:「量子波のダイナミクス:ファインマン形式による量子力学」、吉岡書店、ISBN 978-4-8427-0333-6 (2005年11月)
  • J.J.Sakurai , San Fu Tuan『現代の量子力学(上)』吉岡書店、2009年。ISBN 978-4-8427-0222-3 
  • 新井朝雄:「量子数理物理学における汎関数積分法」、共立出版、ISBN 978-4-320-01932-4 (2010年8月10日)
  • 和田純夫:「今度こそわかるファインマン経路積分」、講談社サイエンティフィク、ISBN 978-4-06-156601-9(2014年12月17日)
  • 柏太郎:「経路積分:例題と演習」、裳華房、ISBN 978-4-7853-2513-8 (2015年11月15日)
  • ローリー・ブラウン (編):「ファインマン 経路積分の発見」、岩波書店、ISBN 978-4-00-005330-3 (2016年3月18日).
  • 鈴木増雄:「経路積分と量子解析」、サイエンス社(臨時別冊・数理科学SGC 137)、(2017年11月21日)
  • 江沢洋、中村徹:「ブラウン運動」、朝倉書店、ISBN 978-4-254-13792-7 (2020年9月1日)

関連項目

外部リンク


ファインマンの経路積分

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標準模型の歴史」の記事における「ファインマンの経路積分」の解説

新し量子形式」と量子電磁力学確立繰り込みへの助走 リチャード・ファインマンは、ポール・ディラック著書中の、「 exp ⁡ [ i ∫ t 1 t 2 L classic ( x , x ˙ ) d t ℏ ] {\displaystyle \exp {\left[i\int _{t_{1}}^{t_{2}}{\frac {L_{\text{classic}}\left(x,{\dot {x}}\right)\,dt}{\hbar }}\right]}} は ⟨ x 2 , t 2 | x 1 , t 1 ⟩ {\displaystyle \langle x_{2},t_{2}|x_{1},t_{1}\rangle } に対応する(L はラグランジアン)」という箇所にある指摘興味そそられここから発想得たと言われている。 具体的な経路積分発想は、二重スリット実験関連する二重スリット実験ではスリットの数は2つであるが、これを無限個に拡張した考え方経路積分である。経路積分は、現在用いられている一般的な方法になっている

※この「ファインマンの経路積分」の解説は、「標準模型の歴史」の解説の一部です。
「ファインマンの経路積分」を含む「標準模型の歴史」の記事については、「標準模型の歴史」の概要を参照ください。

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