ピンク・レディー事件
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「パブリシティ権」の記事における「ピンク・レディー事件」の解説
ピンク・レディー事件は、ピンク・レディーが、光文社『女性自身』2007年2月27日号に掲載された「ピンク・レディーdeダイエット」と題する記事において自身の写真が無断で使用されたことに対し、パブリシティ権が侵害されたとして損害賠償を求めた事案である。 最高裁判所は、平成24年(2012年)2月2日の判決の中で、以下のようにパブリシティ権の意義および侵害の判断基準を示した。 パブリシティ権は人格権に由来するものと認めた。 以下の場合すなわち「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」にはパブリシティ権侵害が生じ、不法行為法上違法となるとした。肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付する場合 肖像等を商品等の広告として使用する場合 同判旨は、顧客吸引力を有する者の肖像等の無断使用であっても、肖像等に顧客吸引力を有する者は、社会の耳目を集めるなどして、その肖像等を時事報道、論説、創作物等に使用されることもあるのであって、正当な表現行為等として受忍されるべき場合もある旨判示している。すなわち、表現の自由についても一定の配慮を示した判示といえる。 上記基準を具体的な事案に適用した帰結として、ピンク・レディのパブリシティ権侵害に基づく損害賠償請求は棄却された。 肖像等は,商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり,このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)は,肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから,上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる。他方,肖像等に顧客吸引力を有する者は,社会の耳目を集めるなどして,その肖像等を時事報道,論説,創作物等に使用されることもあるのであって,その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もあるというべきである。そうすると,肖像等を無断で使用する行為は,①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し,③肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,パブリシティ権を侵害するものとして,不法行為法上違法となると解するのが相当である。 — ピンク・レディー事件最高裁判決 判決理由 補足意見 最高裁判所裁判官金築誠志は、ピンク・レディー事件判決の補足意見として、パブリシティ権が問題になることが多い芸能人やスポーツ選手に対する娯楽的な関心について以下のように述べた。 すなわち、ピンク・レディー事件最高裁判決は「肖像等それ自体を独立して干渉の対象となる商品等として使用する場合」に関する事例判断であり、他の類型の事案においてパブリシティ権が保護されるかは慎重に検討される必要があることが示されている。 パブリシティ権の侵害となる場合をどのような基準で認めるかについては,これまでの下級審裁判例等を通じいくつかの見解が示されているが,パブリシティ権が人の肖像等の持つ顧客吸引力の排他的な利用権である以上,顧客吸引力の無断利用を侵害の中核的要素と考えるべきであろう。もっとも,顧客吸引力を有する著名人は,パブリシティ権が問題になることが多い芸能人やスポーツ選手に対する娯楽的な関心をも含め,様々な意味において社会の正当な関心の対象となり得る存在であって,その人物像,活動状況等の紹介,報道,論評等を不当に制約するようなことがあってはならない。そして,ほとんどの報道,出版,放送等は商業活動として行われており,そうした活動の一環として著名人の肖像等を掲載等した場合には,それが顧客吸引の効果を持つことは十分あり得る。したがって,肖像等の商業的利用一般をパブリシティ権の侵害とすることは適当でなく,侵害を構成する範囲は,できるだけ明確に限定されなければならないと考える。また,我が国にはパブリシティ権について規定した法令が存在せず,人格権に由来する権利として認め得るものであること,パブリシティ権の侵害による損害は経済的なものであり,氏名,肖像等を使用する行為が名誉毀損やプライバシーの侵害を構成するに至れば別個の救済がなされ得ることも,侵害を構成する範囲を限定的に解すべき理由としてよいであろう。 — ピンク・レディー事件最高裁判決 金築誠志裁判官補足意見
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