バルブ配置
燃焼室の設計にあたり、バルブを駆動する方法を含めた吸排気バルブの置き方。バルブを駆動する方式には、(1)シリンダーブロック内にカムシャフトを装着したサイドバルブ方式、(2)同OHV、(3)カムシャフトをシリンダーブロックの上部に装着したOHV、(4)シリンダーヘッドにカムシャフトを1本設けたSOHC、(5)1つのシリンダー列に対して2本のカムシャフトを設けたDOHC、の5タイプがある。バルブは前方から見て吸排気バルブが同じ列に並んだものと、V字型に対向したものとがある。また、吸排気効率を向上させるため、V型アレンジにおいて3バルブ、4バルブ、5バルブなどがある。1本のカムシャフトでロッカーアームを用いてV型のバルブ配置を実現したエンジンもある。バルブ配置はエンジンの基本性能にきわめて大きく影響する。
バルブ配置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/18 03:39 UTC 版)
第二次世界大戦前後までの黎明期の車両用エンジンは、ポペットバルブはシリンダーと平行に逆さの状態で配置された。これは一般的にはサイドバルブ(SV)と呼ばれ、シリンダーヘッドの外形が平たかったためにしばしばフラットヘッドとも呼ばれた。この形式は極めて簡素な構造で信頼性や耐久性も高かったことから第二次世界大戦中の軍用車両では積極的に用いられたこともあった。しかし燃焼室が横に長く伸びる形状となることと、吸気と排気が同じ側に向かうターンフロー(カウンターフロー)構造しか採れなかったことから、吸排気効率が非常に悪くて最高回転数は2000-3000rpm程度に限定され、またこの燃焼室形状では大きな表面積により冷却損失が大きいために熱効率が低く、しかも排気がシリンダー側面を這うように出て行くために放熱を妨げるなど、エンジン性能面では不都合が多かった。 そのため、戦前頃からSVをベースにシリンダーヘッド側にポペットバルブを配置するOHV(頭上弁)形式が登場した。当初のOHVは楔(ウェッジ)形燃焼室やターンフローなどのSV時代の影響が強いデザインが多かったが、後にクライスラー・ヘミエンジンなどから、吸排気バルブ間に角度を持たせて配置することで燃焼室形状が表面積の小さな半球型へと変わるとともに、吸気から排気へとヘッドを横切って流れていくクロスフロー構造に移行していき、熱効率と最高回転数が大幅に向上したOHVがSVに代わって主流となった。 当初のOHVでロッカーアームを押してポペットバルブを開いていたのは、クランクシャフトとほぼ同じ高さにあるカムシャフトからの長いプッシュロッドだった。しかしこれの慣性質量の大きさが追従性を下げていて高回転高性能化の妨げだったため、プッシュロッドを短く軽くしたハイカムOHVを経て、ついにはプッシュロッドを無くしたOHC形式(SOHCあるいはDOHC)が登場し、現在では多くのエンジンに採用されている。ただし特にV型エンジンにおいては、両バンクのバルブ開閉をバンク間に配置した1本のカムシャフトで賄え、その場合でもハイカムにはなることから、OHCだけでなくプッシュロッドを用いるOHVも採用され続けている。
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