バイパスフィルターとフルフローフィルター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/05 16:33 UTC 版)
「オイルフィルター」の記事における「バイパスフィルターとフルフローフィルター」の解説
戦前の黎明期の自動車エンジンはオイルフィルターが搭載されていなかった。エンジンオイルの品質も低かったために、非常に頻繁なオイル交換が(酷い場合には自動車を動かす度に)必要であった。最初に登場したオイルフィルターは非常に簡単なもので、オイルポンプの吸入口に金属製のスクリーンが置かれているだけであった。 1923年、アメリカ人発明家のErnest SweetlandとGeorge H. Greenhalghは初めて実用的な自動車用オイルフィルターを開発し、"pure oil later"の混成語である「Purolator」と名付けられた。「Purolator」は、今日ではバイパスフィルターと呼ばれるタイプのオイルフィルターである。バイパスフィルターとはオイルポンプからエンジン内部へオイルが送られる経路を2つに分け、片方をメイン経路とし、もう片方にオイルフィルターを接続しオイルを濾過する経路とした。全てのオイルが濾過されるには長時間かかることになるが、オイルフィルターが全くないよりは遙かに信頼性のあるシステムであった。現在でもバイパスフィルターは後述のフルフローフィルターとの併用式という形でディーゼルエンジンの大型車両に採用され、純正オイルフィルターを二種類搭載する車両も多い。バイパスフィルターはフルフローフィルターのように全ての油圧が集中してフィルターに掛かることがないため、流量制限や濾紙密度の制約などが無く、時間を掛けて濾過する非常に濾過性能の高いフィルターを作ることが可能である。そのため、バイパス・フルフロー併用式の車両の場合は、形状がほぼ同じバイパスフィルターとフルフローフィルターを間違えて取り付けないように注意が必要である。 バイパスフィルターの登場から20年後に、最初のフルフローフィルターが登場した。オイルポンプからエンジン各部にオイルが送られる前に全てのオイルが濾過される構造のフィルターで、現在のオイルフィルターはほぼ全てこの形式である。 しかし、この形式のオイルフィルターは取り付けられるエンジンの規定油圧やオイル総量などに応じて、オイルフィルター自体の大きさや濾過可能な最小粒径などがある程度制限される。そのため、エンジンによってはスピンオン式オイルフィルターにフルフローフィルターとバイパスフィルターの両方を内蔵し、フルフロー側はある程度濾過粒径に余裕を持たせた設計とし、バイパス側はより細かな粒子を濾過出来る設計としているものもある。このようなデュアルフィルター構成のオイルフィルターは主に大型のディーゼル機関などに見られ、油圧経路の簡素化とフィルター個数半減によるコスト低減のために用いられている。
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