ニュー・シンセシス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 06:15 UTC 版)
「マクロ経済思想史」の記事における「ニュー・シンセシス」の解説
詳細は「New neoclassical synthesis」を参照 1990年代に「新しい新古典派総合」、あるいは単に「新しい総合」(ニュー・シンセシス)と呼ばれる学派が現れ、ニュー・ケインジアン派とニュー・クラシカル派の両方のアイデアを統合した。ニュー・クラシカル派から合理的期待を含むRBCの仮説と方法を取り入れ、ニュー・ケインジアンから名目硬直性(価格粘着性)やその他の市場不完全性を取り入れた。ニュー・シンセシス理論はRBCモデルを発展させ動的確率一般均衡(英語版)(DSGE)モデルを開発した。DSGEモデルは、企業や家計の行動や選好について仮説を立てる。得られたDSGEモデルの結果から数値解が計算される。これらのモデルには、経済へのショックによって生み出された「確率」要素も含まれる。元のRBCモデルでは、ショックは技術変化に限られていたが、近年のモデルでは他の実質変化も取り入れられている。DSGEモデルはルーカス批判を回避する点で理論的に優れているとされた。アカデミックな経済学者や中央銀行などの政策当局は直ちにニュー・シンセシスを採用した。 DSGEモデルの計量分析は、実質要因が経済に影響を与えることを示唆する。フランク・スメッツとラファエル・ウォルターズの2007年の論文によると、金融政策は産出量の変動のごく一部しか説明しない。ニュー・シンセシス・モデルでは、ショックが需要と供給の両方に影響を与える可能性がある。ニュー・シンセシスは、ニュー・クラシカルと対照的に、金融政策に経済安定化効果があることを示唆する。 ニュー・シンセシスによって議論の対象がイデオロギーから方法論に変わった。景気循環モデル作成者は2つの陣営に分かれた。一方はキャリブレーションを好む陣営、他方は推定を好む陣営である。モデルのキャリブレーションでは、他の研究を参照したり、思いつきの経験的観察に基づいたりして、パラメーターの値を選択し、統計的検定を使わずにモデルの動作特性でモデルの品質を評価する。キッドランドとプレスコットの1982年の論文は自分たちのモデルを正式に評価していないが、労働時間のような変数は実際のデータに合わなかったけれど他の要素の分散はデータに合ったと報告している。推定方法が使用される場合、モデルは標準的な統計上の適合性基準に基づいて評価される。キャリブレーションは一般にニュー・クラシカル学派のリアルビジネスサイクル・モデルに関連しているが、方法論の違いはイデオロギーを超えている。著名なニュー・クラシカル経済学者のなかでもルーカスやプレスコットやキッドランドはキャリブレーションを提唱しているが、サージェントは推定を好んでいる。
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