新しい古典派
(ニュー・クラシカル経済学 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/28 14:10 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動新しい古典派(あたらしいこてんは、英語: New classical economics)とは、1970年代に生まれたマクロ経済学の学派である。広い意味で新古典派経済学に分類される。
ケインジアンのマクロ経済学に対抗して、新しい古典派は完全に新古典派の枠組みの上に構築されている。特に、新しい古典派は精緻なミクロ的基礎づけ (microfoundation) の重要性を強調している。なお、ミクロ的基礎とは、ミクロ経済学でモデル化された個別の経済主体の行動を基礎にして、マクロ経済学のモデルを構築することである。その意味では、ケインジアンの経済分析にミクロ的基礎を与えることに努力してきたニュー・ケインジアンは、部分的にはこの新しい古典派に対応して発展してきたとも言える。
一部の仮定が、多くの新しい古典派のモデルでは共通のものになっている。まず、すべての個人(経済主体)が合理的(効用最大化行動を取る)で合理的期待(当該モデルと整合的な期待)を形成する。また、一度マクロ経済が完全雇用あるいは潜在的産出量で唯一の均衡を持つと仮定された場合には、この均衡は価格および賃金の調整(市場清算)を通じて常に達成可能であると仮定する。
新しい古典派は、代表的個人 (representative agent) モデルを先駆的に採用している。しかしながら、新しい古典派(および後発のニュー・ケインジアン)はこのモデルを使用することによって痛烈な批判も浴びている。この批判は、Sonnenschein-Mantel-Debreu定理(Kirman, 1992年)や合成の誤謬(ごびゅう)(fallacy of composition) で示されているように、ミクロ経済学的行動とマクロ経済的結果の間には明確な分裂があることに由来している。(代表的個人モデルを用いると、合成の誤謬は起こらない。)このような批判は、新古典派的な総生産 (aggregate production) 関数の存在を疑うケンブリッジ資本論争に似ている。
最も有名な新しい古典派の経済モデルは、リアルビジネスサイクル理論モデルである。ロバート・ルーカス (Robert Lucas Jr.) はこのモデルに先立つアイデアを提案していたが、フィン・キドランドとエドワード・プレスコットがリアルビジネスサイクル理論を提唱した。彼らはこの功績によりノーベル経済学賞も受賞している。
脚注
注釈
出典
参考文献
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- Alan P. Kirman, "Whom or What does the Representative Individual Represent?" Journal of Economic Perspectives 6(2), Spring 1992: 117-136.
- 齊藤誠、『新しいマクロ経済学 : クラシカルとケインジアンの邂逅』、有斐閣、1996年 ISBN 4-641-06790-2
関連項目
ニュー・クラシカル経済学
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「マクロ経済思想史」の記事における「ニュー・クラシカル経済学」の解説
詳細は「新しい古典派」を参照 「ニュー・クラシカル(新しい古典派)経済学」はマネタリズムから進化し、これとは違う方法でケインズ主義と対決した。初期のニュー・クラシカル派はマネタリストを自認していたが、その後ニュー・クラシカル学派は進化を遂げた。ニュー・クラシカル派は、金融政策が経済にシステマティックな影響を及ぼせるというマネタリストの信念を放棄し、最終的に貨幣要因を完全に無視したリアルビジネスサイクルモデルを信奉した。 マネタリストはケインズのアイデアに基づいていたが、ニュー・クラシカル派はケインジアンの経済理論と完全に決別した。ニュー・クラシカル経済学者たちは、ケインズ理論を捨てたにもかかわらず、短期経済変動を説明するための着眼点をケインジアンと共有していた。ニュー・クラシカル派は、マネタリストに代わってケインズ主義反対論の主役になり、マクロ経済学の主要な論点をずらし、短期変動をどう考えるかという議論であったものを、マクロ経済モデルの根拠をミクロ経済理論に置くべきか否かという議論に置き換えた。ニュー・クラシカル経済学はマネタリズムと同様にシカゴ大学を拠点にした。シカゴ大学ではロバート・ルーカスがニュークラシカル経済学の発展を主導した。他の指導者としては、ミネソタ大学のエドワード・プレスコットやロチェスター大学のロバート・バローなどがいた。 ニュー・クラシカル経済学者たちは、初期のマクロ経済理論がミクロ経済理論に依拠していないと指摘し、「マクロ経済学のミクロ経済学的基礎」を提供する方針を表明した。またニュー・クラシカル派は合理的期待を導入し、経済主体の合理的期待を前提とすると政府は経済を安定させる力をほとんど持たないと主張した。とりわけ論争的なのは、ニュー・クラシカル経済学者が市場クリアの仮定を復活させ、価格の伸縮性と市場均衡モデルを仮定したことである。
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