2008年金融危機とコンセンサスの崩壊
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「マクロ経済思想史」の記事における「2008年金融危機とコンセンサスの崩壊」の解説
2007年から2008年にかけての世界金融危機とその後の大不況は、マクロ経済理論にとって試練であった。危機を予測した経済学者はほとんどおらず、その後も危機に対処する方法について意見が大きく分かれた。深刻な不況に対処する政策対応を経済学者たちが議論したとき、ニュー・シンセシスのコンセンサスは破綻した。ニュー・シンセシスは「グレート・モデレーション(英語版)」期に形成されており、厳しい経済環境で検証されていなかった。多くの経済学者は危機が経済バブルに由来する点で同意しているが、主要なマクロ経済学派はどれも金融や資産バブル理論にそれほど注意してこなかった。バブルがどのように形成されるか、バブルをどのように識別するか、そしてバブルをどのように防止できるか。現在の経済理論が危機に対処することができなかったために、経済学者たちは考えを見直さざるを得なくなった。評論家は主流派をあざ笑い、大幅な見直しを提案した。 金融危機後、現代マクロ経済学のコンセンサスの要素は批判された。ロバート・ソローは米国議会証言でDSGEモデルについて「不況対策に役立つことは何も言えない。本質的に信じがたい仮定をおいて、マクロ経済政策は何もすべきではないという『結論』を組み込んでいるからだ」と述べた。ソローはまた、現実の世界は多様で多数の経済主体の複雑な相互作用で構成されているが、DSGEモデルはこれを単一の「代表的経済主体」で表すことができると仮定することが多いと批判した。ロバート・ゴードンは1978年以降のマクロ経済学の大部分を批判した。ゴードンは、不均衡理論と不均衡モデルの復活を求めた。彼は市場クリアを仮定したニュー・クラシカルとニュー・ケインジアンをどちらも非難した。彼は石油のように市場がクリアする財と、住宅のように粘着価格の財の両方を含む経済モデルの復活を求めた。リカルド・カバレロはDSGEモデルを批判しつつ、近年の金融研究は進展しており、現代のマクロ経済学は金融危機後に重点を変えるべきだが廃棄される必要はないと論じた。
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