ナヴィヤ・ニヤーヤ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/14 05:28 UTC 版)
詳細は「ナヴィヤ・ニヤーヤ」を参照 ナヴィヤ・ニヤーヤ(新論理学派)はミティラーの哲学者ガンゲーシャ・ウパーディヤーヤによって13世紀に始められたもので、古典期のニヤーヤ哲学を発展させたものであった。ナヴィヤ・ニヤーヤのその他の影響は初期の哲学者ヴァーチャスパティ・ミシュラ(900年-980年)やウダヤナ(10世紀後期)の著作から発せられた。 ガンゲーシャの著書『タットヴァチンターマニ』(真理の如意宝珠)は部分的には、アドヴァイタ・ヴェーダーンタを擁護してニヤーヤ学派の思想・言語の理論を徹底的に批判したシュリーハルシャの『カンダナカンダカーディヤ』に対する応答として書かれた。著書中でガンゲーシャはこの批判を扱うとともに―さらに重要なこととして―自身もニヤーヤ哲学を批判的に考察している。シュリーハルシャはニヤーヤの実在論的な存在論を上手く論難できなかったが、シュリーハルシャも自分もニヤーヤ思想の論理的・言語的道具を発展・洗練させてより精密・精確なものにする必要があることをニヤーヤ批判の中で見出したとガンゲーシャは述べている。 『タットヴァチンターマニ』ではインド哲学、論理学、集合論、そして特に認識論のあらゆる重要な側面が扱われており、ガンゲーシャはそれらを綿密に考察してニヤーヤ学派の図式を発展させるとともに豊富な問題例を添えた。その結果、特に彼の認識の分析は他の哲学に取り入れられた。 ナヴィヤ・ニヤーヤは理想言語や概念図式を発展させて論理学や認識論の問題を見つけ出し、分析し、解決した。ナヴィヤ・ニヤーヤは旧来のニヤーヤの知識の根拠を大きく次の四つの範疇に分類した。すなわち、直接知覚(プラティヤクシャ)、推論(アヌマーナ)、類比(ウパマーナ)、そして言葉(シャブダ)である。 この比較的遅い時代の学派は東インドやベンガル地方周辺で始まり、ゴットロープ・フレーゲの「固有名詞の意味と意義の違い」や「数の定義」等の現代論理学に類似した理論を発達させ、一方でナヴィヤ・ニヤーヤの「普遍の制限条件」の理論は現代の集合論の発展を先取りした。とりわけウダヤナが「普遍の制限条件」や「無限後退」の理論を発展させて現代集合論の一部を先取りした。キソル・クマル・チャクラバルティはこう述べている。 第三部で我々は、ナヴィヤ・ニヤーヤにおけるいわゆる「普遍の制限条件」の研究が現代の集合論の発展の幾分かをどのように先取りしているかを示そう。[...] この章での議論はウダヤナの提起した「普遍の制限条件」(ジャティバダカ)を中心とする。[...] もう一つの制限条件は「アナヴァスタ」つまり悪しき無限遡及である。この制限条件によって、如何なる普遍(ジャティ)も存在を許されなくなる、というのはそれを許すと悪しき無限遡及が生まれるからである。ウダヤナはその例として、全ての普遍をその要素とする普遍を挙げている。そのような普遍を考えると仮定より全ての普遍を合わせたものが存在してしかも全ての普遍はその大きな普遍に属することになる。しかしその大きな普遍は自身も普遍であるから(そしてウダヤナの考えでは普遍は自分自身を要素とすることができず、この大きな普遍も自身をその要素とできないから)、他の普遍と同様により大きな普遍に属することになり、これが無限に続くことになる。ウダヤナがここで述べていることは興味深いことに、現代の集合論で全ての集合の集合(つまり、全ての集合がそれに属しているところの集合)が存在しないと言われているのと類似している。
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