ドイツ型コーポレート・ガバナンス
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「コーポレート・ガバナンス」の記事における「ドイツ型コーポレート・ガバナンス」の解説
ドイツの株式会社 (AG)では、法律により、取締役会 (Verwaltungsrat) が監査役会 (Aufsichtsrat)とその下の執行役会 (Vorstand)の二層に分化している(英語ではこの制度を two board system という)。また、株式合資会社 (KGaA) 及び従業員数が500人を超える有限会社 (GmbH)では取締役会や執行役会は設置しないが、法律により、監査役会を設置する。監査役会は、経営の最高意思決定機関であり、経営の監督を行うとともに、執行役を任命する。執行役は、監査役会の定めた基本戦略・計画に従い、業務を執行する。両役員を兼任することはできない。そして、共同決定法 (Mitbestimmungsgesetz) により、従業員が2000人を超える大企業では、監査役の半分を株主が、残り半分を従業員(労働者)が選出することとなっている。 ドイツのコーポレート・ガバナンスにおいて実際上大きな影響力を持っているのが、銀行である。ドイツの企業の資本構成は、従来間接金融に依存する割合が高く。株式の保有比率について見れば、大企業の比率が高く持合構造を形成する一方、年金基金の持株比率は極めて低い。銀行自体の持株比率は約10%で低いものの、銀行が(1)預金・貸出業務、(2)有価証券の引受・売却業務、(3)有価証券の寄託業務を行うというユニバーサル・バンク制度があり、銀行を通して株式を購入した非金融企業は、そのまま銀行に株式の議決権を寄託することが多い。そのため、銀行は、大債権者として、かつ50%〜55%の議決権を行使する株主として、企業に対し大きな影響力を及ぼしてきた。特にドイツ銀行、ドレスナー銀行、コメルツ銀行という3大ユニバーサル・バンクは支配的地位を有し、株主選出の監査役、特に監査役会会長を送り込んで経営の監視に当たってきた。また、更には執行役会、特に執行役会会長の人事についてもユニバーサル・バンクが掌握してきた。 しかし、1990年の東西ドイツ統一後、経済が混迷し、多数の企業不祥事が発覚した。ドイツ最大の鉱山金属会社メタルゲゼルシャフト社の投機的投資による巨額損失、クレックナー・フンボルト・ドイツ社の巨額粉飾決算、ドイツ最大の不動産会社シュナイダー社の不正な投機による破綻、マンネスマンの背任事件などが発生した。こうした事件を機に、ユニバーサル・バンクのガバナンス能力に疑問が投げかけられることとなった。例えば、ユニバーサル・バンクから派遣されている監査役は10社以上の監査役を兼任していることが多いこと、監査役会は年2回しか開催されない場合が多いこと、監査役会は執行役会の提供する情報に依存していることなどが指摘された。さらに、ドイツ企業も資金を求めてアメリカの株式市場に上場するようになり、自己資本比率が高まるとともに、アメリカ型の会計制度や情報公開が求められるようになっている。
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