デジタル放送専用レコーダーの私的録画補償金に対する訴訟
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「私的録音録画補償金制度」の記事における「デジタル放送専用レコーダーの私的録画補償金に対する訴訟」の解説
2009年(平成21年)9月に、私的録音録画補償金制度について、私的録画補償金管理協会(以下SARVH)が「アナログチューナ非搭載DVDレコーダー機器」が、著作権法に関する政令の対象かどうかを文化庁に照会したところ、文化庁著作権課長名で、「デジタル専用録画機も私的録音録画補償金制度の対象機器である」旨を回答した。 しかし、デジタル放送専用レコーダーは、ダビング10やコピー・ワンス機能による「コピーガード」により、DVDレコーダー「VARDIA」は、デジタル著作権管理がされ、無制限にデジタルでの複製が出来無いため、私的録音録画補償金制度による補償金の対象外であるとして、東芝が補償金の支払いを拒否した。 このため、SARVHが、文化庁の見解に基づき、東芝に補償金と損害賠償の支払いを求めて、2009年(平成21年)11月10日に提訴した。なお、パナソニックも2009年(平成21年)5月以降に発売した、デジタル放送専用レコーダー「DIGA」について、補償金を上乗せせずに販売している。 2011年(平成23年)7月24日の日本の地上デジタルテレビ放送完全移行に伴い、新規に販売される録画機が、デジタル放送専用レコーダーのみになる。デジタル放送専用レコーダーが、私的録画補償金制度による補償金の対象外とされた場合、SARVHの収入源が事実上消滅するため、組織維持と補償金制度維持を目的とした訴訟という一面がある。逆に対象とした場合、レコーダーからダビングする記録メディアにも補償金がかかっているため、二重取りとなる。 2010年(平成22年)12月27日、東京地方裁判所は、「製造メーカーが著作権料を集めて協会に支払うことは、法的強制力を伴わない抽象的義務にとどまる」としてSARVHの請求を棄却した。しかし、その一方で「デジタルDVDレコーダーは、利用者が著作権料を負担するべき機器に該当する」と認定していた。SARVHは、2010年(平成22年)12月28日に、東京地裁判決を不服として東京高等裁判所に控訴した。 2011年(平成23年)12月22日、知的財産高等裁判所はSARVH側の控訴を退けると共に、東京地裁での判決も破棄し「アナログチューナ非搭載DVDレコーダは、著作権法施行令第1条第2項第3号の“特定機器”に該当しない」と判決を下し、東芝が全面勝訴した。SARVHは知財高裁判決を不服として、最高裁判所に上告した。 2012年(平成24年)11月8日、最高裁判所第一小法廷にて、金築誠志裁判長はSARVHの上告を棄却。これにより東芝側の完全勝訴とSARVHの全面敗訴が確定判決となり、文化庁の見解が司法判断によって明確に完全否定された。 2011年(平成23年)7月24日の日本の地上デジタルテレビ放送完全移行後にあっては、市場に出回る録画機はデジタル放送専用のみとなっていることから、他のメーカーも補償金の支払いを拒否しており、その結果、2011年度上半期は、4億2628万644円だった私的録画補償金受領額が、2011年下半期では、僅か1万579円にまで受領額が激減した。 更に、この確定判決により、デジタル専用録画機対応の記録媒体(Blu-ray DiscやDVD)についても、私的録画補償金の徴収が出来無くなり、2013年(平成25年)には、録画機や録画メディアからの収入源が完全に断たれた。そして2015年(平成27年)4月1日には、SARVHが解散することとなり、私的録音録画補償金制度の払戻しを受けたい者は、同年6月30日に債権者として申し出る必要があった。 また、東芝の別の期間及び上述のパナソニックに対する補償金相当額の支払いを求める訴訟の第1回口頭弁論が、2012年(平成24年)11月13日に開かれる予定であったが、この確定判決により今後の見通しが不透明となり、その後の動向は伝えられないまま、2015年(平成27年)4月1日をもってSARVHが解散した。
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