セラミック噴射装置とは? わかりやすく解説

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砂撒き装置

(セラミック噴射装置 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/11 19:25 UTC 版)

砂撒き装置(すなまきそうち)とは、粘着式鉄道鉄道車両において、上り勾配や落ち葉等により駆動輪空転して牽引力を失うのを防ぐため、を車輪とレールの間に介在させることによって両者間の摩擦力を増加させる装置である。この装置の改良形であるセラミック粉を増粘着剤として使用する場合には、セラミック噴射装置と呼ばれる。

概要

砂箱と砂撒き装置。車体下部の砂箱から車輪の手前にパイプが伸びている。

鉄道の創始以来、現代に至るまで使用されている装置で、蒸気機関車をはじめとして少数の動軸に大出力をあたえる機関車にはたいてい装備されている。動力分散式の電車気動車は、動軸1軸あたりの出力はさほど大きくないため、装備される例は少ないが、急勾配区間を少数の動力車で通過するなど、運転される線区の条件によってはこれを装備しているものがある。

装置自体は、極めて単純で、蒸気機関車のボイラーランボード上の高所もしくは台車や車体に設けた砂箱に乾燥させた砂を入れ、パイプによって動輪付近のレール上に重力によって落下させる仕組みである。砂撒き装置の操作は、運転台に設けられた砂撒きコックを操作するか(蒸気機関車)、砂撒きペダルを踏む(機関車、電車)ことによって行うものが多い。インドなどでは、機関車の最前部に砂の入った箱を持った係員(サンドマン)が乗り、必要に応じて手で砂を撒くという方法も見られる。また、日本の鉄道においても、急勾配区間を運行する砂撒き装置を装備しない電車列車の場合、運転室内に砂が備え付けてあり、降雨等で空転が多発する場合は一旦停車して乗務員が線路上に砂をまく場合がある。

歴史

最初に搭載されたのは、1830年代である。その時期のアメリカ合衆国ニュージャージー州ペンシルバニア州ではバッタが大量発生しており、営業していたカムデン・アンド・アンボイ鉄道では、清掃員やブラシなどで除去しても効果が薄かったため乾いた砂をまくようになった[1][2][3]

セラミック噴射装置

近鉄1252系電車台車に装備された増粘着材噴射装置(アルミナ)

セラミック噴射装置(株式会社テスの商標:セラジェット)とは、砂撒き装置の改良型である。鉄道事業者によっては「増粘着材噴射装置」や「ミュージェット」、あるいは「アルミナ」とも称す。

改良点としては、

  1. 粘着材に天然砂よりも増粘着効果が大きいセラミック(酸化アルミニウム)粒子を採用し粘着効果を大幅に向上。
  2. 噴射に空気圧を利用し100m/sの高速でかつレール面上の幅25 - 30mmにのみ正確に噴射することによって高速走行中の走行風の影響を排除。

以上の改良によって、従来の機関車の砂まきと比べて1/30の使用量、1/20の材料費で同等以上の増粘着効果を発揮し、信頼性は従来の砂撒き以上、増粘着材の補給サイクルは3か月程度とロングライフ化を実現している。また、従来の砂撒きの場合レールや車輪を傷つけてしまい、車輪転削やレールを研磨する頻度が上がってしまうが、セラミックであれば軽減されるといわれている[4]

緊急制動時の滑走対策用に新幹線車両としては500系ではじめて採用され非常ブレーキ距離を1000m前後短縮。その効果が認められ700系にも搭載されたほか、在来線私鉄の車両にも順次装備が行われている。

新幹線車両では、以下の車両に装着されている。

大手私鉄でも東武50000系京阪3000系の両先頭車にセラジェットが設置されている[5]

受験生の合格祈願として

入学試験に滑らないようにと、受験シーズン前に鉄道各社が受験生に「滑り止めの砂」として袋詰め等にして配布または販売することがある。しかし、2017年(平成29年)に砂の中から発がん性物質(グループ1)である結晶性シリカが検出されたことを受け、受験生に対する配慮から配布や販売を取りやめる例が増えている。なお、労働安全衛生総合研究所によると、結晶性シリカは自然界に存在するものであり、「お守り」程度の微量であれば健康への影響はないとしている[6][7]

脚注

  1. ^ クリスティアン・ウォルツマー(安原和見, 須川綾子 訳):世界鉄道史 血と鉄と金の 世界変革,河出書房新社,2012
  2. ^ RRR 2021年4月号 Vol.78 No.4 出版社:公益財団法人 鉄道総合技術研究所 p.24-27
  3. ^ Michael Portillo: Great American Railroad Journeys. Simon & Schuster UK Ltd., London 2017, ISBN 978-1-4711-5151-4, S. 43.
  4. ^ 昭和鉄道専門学校 編『<図解>鉄道のしくみと走らせ方』かんき出版、第1刷、p.158。
  5. ^ セラジェット説明ページ - テス公式HPの使用車種一覧の写真で判別可能である。
  6. ^ 「滑らない砂」不合格? 鉄道各社の合格祈願グッズ 発がん性指摘で配布中止 研究者「微量なら問題なし」”. 西日本新聞 (2019年1月11日). 2019年1月22日閲覧。
  7. ^ 「滑らない砂」姿消す=受験生に好評も配布自粛-鉄道各社”. 乗りものニュース/時事通信 (2019年1月22日). 2019年1月22日閲覧。
  8. ^ 頑張れ受験生!!「受験生応援プロジェクト」”. JR西日本 (2017年11月30日). 2017年12月9日閲覧。
  9. ^ a b 受験生を応援する取り組み(北陸エリア)”. JR西日本 (2017年1月4日). 2017年12月9日閲覧。
  10. ^ 受験生を応援する取り組み(広島・山口エリア)”. JR西日本 (2016年12月16日). 2017年12月9日閲覧。
  11. ^ “線路スベリ防止砂、受験生に 縁起担ぎ「すべらず合格」”. 朝日新聞デジタル. (2016年12月31日). http://www.asahi.com/articles/ASJDW5WB1JDWPTJB00X.html 2017年12月9日閲覧。 
  12. ^ “合格願う“滑らない砂” 天竜浜名湖鉄道、キーホルダーに”. 静岡新聞. (2017年11月29日). http://www.at-s.com/news/article/local/west/431430.html 2017年12月9日閲覧。 
  13. ^ 合格祈願 すべらない砂” (PDF). 能勢電鉄. 2017年12月9日閲覧。
  14. ^ “鹿児島市交通局が「すべらない砂」配布 新型電車「ユートラムIII」版も”. 鹿児島経済新聞. (2017年12月4日). https://kagoshima.keizai.biz/headline/1369/ 2017年12月9日閲覧。 

関連項目

  • サンダイト英語版 ‐ 1970年代にイギリス鉄道が開発して、使われるようになった砂を主成分に金属粒子などを含んだゲル状の薬剤を改良したもので、イギリスやアメリカなどで使われた。
  • 鉄道レールの空転要因英語版

セラミック噴射装置

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/11 15:24 UTC 版)

砂撒き装置」の記事における「セラミック噴射装置」の解説

セラミック噴射装置(株式会社テス商標:セラジェット)とは、砂撒き装置改良型である。鉄道事業者によっては「増粘着噴射装置」や「ミュージェット」とも称す改良点としては、 粘着材に天然砂よりも増粘着効果大きセラミック酸化アルミニウム粒子採用し粘着効果大幅に向上。 噴射空気圧利用し100m/sの高速でかつレール面上の幅25 - 30mmにのみ正確に噴射することによって高速走行中の走行風の影響を排除。 以上の改良によって、従来機関車砂まき比べて1/30使用量、1/20材料費同等上の粘着効果発揮し信頼性従来砂撒き以上、増粘着材の補給サイクルは3か月程度ロングライフ化を実現している。また、従来砂撒き場合レール車輪を傷つけてしまい、車輪転削やレール研磨する頻度上がってしまうが、セラミックであれば軽減されるといわれている。 緊急制動時の滑走対策用に新幹線車両としては500系ではじめ採用され非常ブレーキ距離を1000m前後短縮。その効果認められ700系にも搭載されたほか、在来線私鉄の車両にも順次装備が行われている。 新幹線車両では、以下の車両装着されている。 500系 - 1・8・916号700系 - 両先頭車 800系 - 両先頭車 E5H5系 - 両先頭車 大手私鉄でも東武50000系京阪3000系の両先頭車にセラジェットが設置されている。特に京阪アルミナ主流関西私鉄では唯一のセラジェット採用事業者でもある。

※この「セラミック噴射装置」の解説は、「砂撒き装置」の解説の一部です。
「セラミック噴射装置」を含む「砂撒き装置」の記事については、「砂撒き装置」の概要を参照ください。

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