セラミック収率
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/10 21:23 UTC 版)
TGAはセラミック複合材料の研究にも使用されている。セラミック収率は、最終生成物に残っている出発物質の質量の割合である。このことから、化学量論は試料中の物質量%を計算するために使用される。 金属アルミナ(MAl2O4)は、多くの用途がある重要な混合陽イオン型の酸化セラミックである 。金属アルミナ塩CaAl2O4 は、水中で硬化する材料としてセメント産業で利用される 。その前駆体は、CaAl2C18H37O9N3である 。CaAl2O4 の形成はTGAで観察できる。これを例に取ると、理論的なセラミック収率は以下のように算出される: CaAl2O4 の分子量を計算: 40.078 + ( 2 × 26.982 ) + ( 4 × 15.999 ) = 158.038 g/mol {\displaystyle 40.078+(2\times 26.982)+(4\times 15.999)=158.038~{\text{g/mol}}} CaAl2C18H37O9N3 の分子量を計算: 40.078 + ( 2 × 26.982 ) + ( 18 × 12.011 ) + ( 37 × 1.008 ) + ( 9 × 15.999 ) + ( 3 × 14.007 ) = 533.548 g/mol {\displaystyle 40.078+(2\times 26.982)+(18\times 12.011)+(37\times 1.008)+(9\times 15.999)+(3\times 14.007)=533.548~{\text{g/mol}}} CaAl2C18H37O9N3 に対するCaAl2O4 の割合を計算する: molecular weight of CaAl 2 O 4 molecular weight of CaAl 2 C 18 H 37 O 9 N 3 × 100 = 158.038 g/mol 533.548 g/mol × 100 = 29.6 % {\displaystyle {\frac {{\text{molecular weight of CaAl}}_{2}{\text{O}}_{4}}{{\text{molecular weight of CaAl}}_{2}{\text{C}}_{18}H_{37}{\text{O}}_{9}{\text{N}}_{3}}}\times 100={\frac {158.038~{\text{g/mol}}}{533.548~{\text{g/mol}}}}\times 100=29.6\%} 以上から、熱重量分析におけるCaAl2C18H37O9N3 の理論的なセラミック収率は29.6%となる。この計算値は実験的に求められたセラミック収率の28.9%とよく合う。 理論的なセラミック収率を計算したもう1つの例として、TGAのシュウ酸カルシウム一水和物を挙げる。先と同様に、理論セラミック収率を計算すると、シュウ酸カルシウム一水和物は146g/mol、最終セラミックの CaO は 56g/molであり、収率は38.4%となる。TGAで実際に測定された収率は、39.75%であった。 理論と実測収率の差異は、炭化金属の形成でCO2 が取り込まれたことによる。 シュウ酸カルシウム一水和物のTGA測定において、最初の質量減少は水和水の損失に対応する。第2の重量減少は、脱水されたシュウ酸カルシウムの炭酸カルシウムおよび一酸化炭素および二酸化炭素への分解に対応する。最後の重量減少は、炭酸カルシウムの酸化カルシウムおよび二酸化炭素への分解によるものである。 次の4種のポリマーはTGA測定で異なった結果を示す、(a)ポリ塩化ビニル、(b)塩素化ポリ塩化ビニル、(c)塩素化ゴム、(d)ポリ塩化ビニリデン。これらの4種類のポリマーには2段階の分解がみられる。 第1段階は塩化水素の脱離であり、約250℃で完了する。この第1段階の反応は、より多くの塩素(塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニリデン)を含有するポリマーにおいて、より低い温度で起こり、これら3種のポリマーは、ポリ塩化ビニルよりも不安定であると考えられる。 第2段階は、ポリマーの炭化であり、250-500 ℃の間で起こる。これは、250 ℃と500 ℃の間の大きな重量減少に対応する。タールと水素やメタンなどの単純な気体が放出され、残りの炭素は500-900 ℃の間で重量はほとんど減少しない。この第2段階では、ポリマーの塩素含有量が高いほど、タールの収率は低い。これは塩素が、タールの形成に化合物に必要な水素を、除去するからである
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