ストーリー構築
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 13:56 UTC 版)
仮想戦記は娯楽作品であるが故に、特定の勢力を活躍させたり作品的な盛り上げのためにご都合主義的な前提条件を設定したり、いい加減な時代考証を基に用いたりとその粗雑さが指摘されることが少なくない。特にその傾向は仮想戦記が一大ブームとなっていた時期に顕著であり(詳しくは仮想戦記を参照)、考証を重んじる従来の戦記小説の読者層から批判的なレッテルを張られることも多かった。例えば太平洋戦争を題材とした場合、軍事評論家の井上孝司は「「逆転指南書」(架空戦記のこと)の多くは戦術レベルの話に終始して」いると指摘し、「どうあがいても太平洋戦争に勝ち目はなかった」理由と「小国が勝てる、あるいは負けないための条件」を列挙している。 佐藤はこの種の多くの仮想戦記というジャンルに属する作品が抱えていた問題点を受け止め、歴史評論やナレーションでしばしば指摘し、自作品のプロット製作において重要な指針としている。具体的には「有力な後ろ盾となる同盟国がいない」という問題があれば過去に遡って利害を共に出来うる超大国(例えばイギリス)との同盟関係を強化する改変を仕込む、「工業力が不足している」と指摘されれば、同じく工業力を早期に増加させる改変を仕込み、単純な統計数字の書き換えでは説得力が薄いことを考慮して、工業力が早期に増加するための経緯までを考え抜いて世界設定を行なっている。こうした説得力ある考証に拘る姿勢は『レッドサン ブラッククロス密書』『主砲射撃準備良し』、主に1990年代に行なわれたインタビュー記事で度々表明されている。余り知られていない史実に関しては本文でも詳しく採り上げられ後書きで補足を入れることもある。 また日本が強大な影響力をもつ並行世界を作り上げるという流れは佐藤の作品で頻出する展開であるが、その際に他の日本の躍進を描く仮想戦記が拘りがちな太平洋戦争の勝敗に必ずしも拘らない姿勢も特徴的である。実際、『征途』『レッドサン ブラッククロス』『遙かなる星』などの作品は日本が第二次世界大戦では敗北するが、その後のプロセスで改変の影響が顕になり、最終的には超大国化するタイプの作品である。
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