スタイル、評価、再評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 04:36 UTC 版)
「カール・リッター (映画監督)」の記事における「スタイル、評価、再評価」の解説
『勲功十字章』以降、リッターの映画は、早い動きと多数のエピソードが特徴となった。リッターは絵コンテを用いて、詳細な準備をして映像を作った。また、乱暴なユーモアも彼の傾向であった。ゲッベルスは日記に、リッターが「国家主義的論点を、他者を赤面させるほど躊躇なく表現する」と記したが、リッターの重々しい表現にも言及しており、1940年の映画『勲功十字章』について「リッターは微妙な心理描写には向いていない。彼はもっと感動的なものに向かっている。」とも述べている。結果的に、リッターは今日では高く評価されていない。1969年に発表したナチスの映画について包括的な研究のなかで、デイヴィッド・スチュワート・ハル (David Stewart Hull) は、リッターの作品の特徴を「重々しい扱いで、極端におしゃべりが多い」ことだとし、『勲功十字章』は「押しつぶされそうなほど退屈」で、『急降下爆撃隊』は「彼の最悪な面が全て出た、図々しいまでのプロパガンダであり、いい加減な制作、粗雑な編集、ひどい台本」だとしたが、『GPU』には一定の評価をして「技術面では、他の作品ほどのいい加減さは目立たず、演技はリッター作品のいつもの低水準よりも相当に優れている」と述べた。これとは対照的に、ドイツ・プロパガンダ映画についての1983年の研究のなかでデイヴィッド・ウェルチ(英語版)は、『GPU』における敵の描き方が透明感のある、非現実的なものであり、ドイツ人の観衆もこれを説得的だとは思わなかっただろうとし、「これを演じた俳優の荒々しく誇張された演技はまったく説得的ではなく」、拷問者の描写は「単純化された紋切り型でプロパガンダの説得力を削いでいる」と述べている。カールステン・ヴィッテ(ドイツ語版)は、1993年に出版された書籍の中で、リッターについて「出来の悪いアクション映画をベルトコンベア上で監督し続けた」と評した。ライナー・ロター(ドイツ語版)は、2003年に発表した『急降下爆撃隊』についての研究の中で、この作品について、「純粋な力量不足」と「芸術的感性の欠落」があると述べた。しかし、リッターの映画作品の大部分は、その発表当時において成功を収めていた。彼は「第三帝国において最も有名で、最も高い報酬を得ていた映画監督のひとり」であった。ポーランドの映画史家イエジー・テプリッツ(英語版)は、「もしカール・リッターが、よりまともな脚本を得ていたら、...もし彼が大げさな台詞の危うさにもっと敏感であったら、彼の作品はずっと良くなっていただろう。彼の作品は生き生きとしており、多くは興味深いが、芸術的な深みには欠けている。彼の作品は、声高でしつこいプロパガンダの域を脱することがない」と評している。ジョン・アルトマン (John Altmann) は、1936年から1939年にかけて制作されたリッター作品を、600万人の少年たちが鑑賞して、感化されたものと推定している。『急降下爆撃隊』に代表される彼の時事映画は、軍事的サスペンスを描いた現代映画、例えばローランド・エメリッヒが監督した1996年の映画『インデペンデンス・デイ』などの先駆けと見る刺激的な見解もある。
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