サファイア (リボンの騎士)
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サファイアは手塚治虫の漫画、およびそれを原作とするアニメ『リボンの騎士』に登場する架空の人物で、同作の主人公である。
人物
リボンの騎士
黒髪の美少女サファイア(サファイヤの版もあり)はシルバーランドの王室の正嫡の女子(年齢は漫画では少女クラブ版は12歳、なかよし版は15歳。アニメでは12歳。)として生まれたが、出生前に天使チンクが天上で起こした悪戯により男女両方の心を持って生まれた。 この国の掟では男性だけが王位継承権を持つため、自分の息子を王位に付けることを狙うジュラルミン大公を欺くために、王とその側近により世間を欺き王子であることにして育てられる。舞踏会では身分を隠すためにかつらを被り、亜麻色の髪の乙女となる。事故により国王が崩御したことによりサファイアが王位を継承する式典の中で、ジュラルミン一派の謀略によって実は王子ではないことが暴露されてしまう。罪人として母である太妃と共に棺桶塔に幽閉されたが、こっそりと隙を見て抜け出してはリボンの騎士に扮して国民に圧政を強いるジュラルミンと戦う。
以降、母国・シルバーランドを乗っ取ろうとするジュラルミン一派や「女としての心」を奪おうと狙う魔女(アニメ版の悪魔は男の心を狙う)を向こうにして戦うことになる。しかし戦いの中で結局はシルバーランドを追われ、時に隣国にして敵対国でもあるゴールドランドに囚われることにもなった。
後に亜麻色の髪の乙女として出会った永遠の恋人フランツ・チャーミング王子(ゴールドランドの王位継承者)をめぐり物語が展開。彼の助力とシルバーランドに在していた彼女の支持者の協力を得て男性のみの王位継承を撤回させてシルバーランドの最初の女王として即位。後に紆余曲折を経てフランツと結婚してシルバーランドとゴールドランドの対等な平和的併合を果たした。
なお、原作である『少女クラブ』版とリメイク作である『なかよし』版とでは、以下の点が異なる。
『少女クラブ』版では亜麻色の髪の乙女=サファイアという疑いを持ったフランツの手によって逃がされ、彼と互いの身分を隠したまま、ひとつ屋根の下で過ごす期間を持つ。また、メフィストと契約してウサギ・馬・花に変身する能力を得たことも。女王として即位した後、フランツのおじが勝手に軍を動かしてシルバーランドを攻撃してきた事態にフランツとともに協力して対応することになる。フランツたちの協力で、強硬派であるフランツのおじを拉致。フランツとサファイアとおじと3人で生活し、自身の人物を見てもらい、フランツのおじに結婚の許しを得て、これをもって両国の和平と平和的併合の筋道を作る。
『なかよし』版では、逃亡の途中で海賊ブラッド(実は政争の果てに故国ゴールドランドを追われたフランツの実兄)と出会う。彼とフランツの両方より求愛されるが、シルバーランドのごたごたでその両方に応えられぬまま、ジュラルミン一派の一人、ナイロン卿の手により瀕死の重傷を負う。ブラッドの命を懸けた活躍により、命を完全に失うことは逃れるが、その代わりにブラッドは死亡。仮死状態となったサファイアを目覚めさせるため、フランツは美の女神・ヴィーナスに、その生還を請う。しかしヴィーナスはフランツに惚れてしまい、サファイアは彼女の嫉妬を買うこととなるが、サファイアを守ってきたチンクらの応援もあり苦難を乗り越えてフランツと結ばれる。
双子の騎士
フランツと結婚して後、彼との間にデージィとビオレッタという男女の双子を儲けて、2児の母となる。しかし、再び巻き起こった国の覇権をめぐる騒動に巻き込まれ、デージィが行方不明となる。サファイアはこのことを国民から隠すため、娘のビオレッタにかつての自分と同じく男女の二重生活を強いてしまい、この事に心を痛めるようになる。
そして騒動はついに側近・ダリヤ公爵の政治的な反乱という形で破綻をきたし、娘のビオレッタともども城の塔に幽閉される。悲しむビオレッタに力を与え、自ら生きられるようにするため、彼女に剣を教え鍛え上げて「リボンの騎士」の後継者とした。その後、ビオレッタは見事にその役目を果たし「2代目リボンの騎士」として行方不明の兄・デージィを探し出し、彼とともにサファイアたちを助け出すことになる。
一方でサファイア自身は助け出される寸前にダリヤによって毒を飲まされ、仮死状態に追い込まれる事となる。母の死に涙するビオレッタだったが、ほかならぬサファイア自身は自らの心臓の拍動を取り戻し、自らがまだ生きていることを無言で娘に伝え、ビオレッタに「解毒剤を与えれば生き返る」という希望を与えた。
その他
2009年4月25日、手塚が少年時代を過ごした兵庫県宝塚市より特別住民票の交付を受けた[1]。手塚作品の登場人物に対する特別住民票の交付は埼玉県新座市のアトムに続き2例目。
また宝塚市観光大使の名称として『リボンの騎士「サファイア」』が用いられている[2]。
登場作品と設定の差異
リボンの騎士シリーズ
作品における手塚によるスター・システムでの登場時の人物像の大元。詳細は上記および各作品の項目を参照。
- 『リボンの騎士』(少女クラブ版・なかよし版)
- 主人公。王子を演じねばならず、自らの社会的立場や恋愛においてジレンマを抱える少女。
- 『双子の騎士』
- 主人公であるビオレッタの母親。落ち着きと気品、優しさや静かな強さを持つ女性。娘に背負わせてしまった運命を嘆きながら、それでも自らと同様の境遇に陥った娘に自身の「全て」を受け継がせる。
- 『リボンの騎士』(少女フレンド版)
- ストーリー原案は手塚治虫、作画は北野英明。単行本化されていない。
- 『サファイア リボンの騎士』(シナリオ:高橋ナツコ / 作画:花森ぴんく)
- リメイク作品の一つであり、主人公の遠い祖先として第1話扉にシルエットと名前のみ登場する。
- 『RE:BORN〜仮面の男とリボンの騎士〜』(シナリオ:神楽坂淳・作画:フカキショウコ)
- リメイク作品の一つであり、本来はプラスチックに授かるはずだった男の心を持って生まれたことが原因で、王子として育てられた姫として登場する。
ブラック・ジャック
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『リボンの騎士』と同じ作者の『ブラック・ジャック』では従来以上に積極的なスターシステムの採用により、同作者作品の様々なキャラクターが別設定で幾度も登場する。サファイアもこの例に漏れず、いくつかの話にそれぞれ別設定で登場している。
括弧内は役名。物語の主役およびキーパーソンとして登場する話は役名を太字で表記する。
- 第4話「アナフィラキシー」(看護婦)
- 第15話「ダーティー・ジャック」(保母)
- 園児たちとの遠足の最中、園のバスの後方を走っていたブラック・ジャックとともにトンネル崩落事故に巻き込まれる。事故の中で最後まで子どもたちを元気付けて守ろうとした。
- 第49話「二つの愛」(有馬律子)
- 交通事故で若き寿司職人の両腕を奪ってしまい、その代わりとなるため彼の弟子となる元トラック運転手の妻を演じた。なお、元トラック運転手の夫・有馬明役を演じたのは『リボンの騎士・なかよし版』でフランツの恋敵役として登場した海賊ブラッドである。
- 第94話「サギ師志願」(力の母)
- 川崎病の子どもの母親。家はしがない一般労働者で金が無く、子どもを医者に診せるかどうかで、それを反対する夫とケンカになる。
- 増刊「U-18は知っていた」(患者)
- コンピュータによる診断治療システム『U-18』によって眠らされた患者の一人。
- 第212話「ある女の場合」(ホームの女性)
- ホームで倒れてブラック・ジャックに助けられた女性。その時は金が無かったが、後に金持ちと結婚したため、手術料を支払おうとする。しかし、女性の考え方・価値観が原因でブラック・ジャックはそれを拒否する。
- 『ブラック・ジャック NEO』
- 補足
- 手塚は、どろろを少年役で出演させるのに対し、サファイアは完全に女性役のみで出演させている。
その他
- テレビ東京開局35周年記念番組 ドラマ「永遠のアトム・手塚治虫物語」(1999年4月15日)
- 劇中アニメに登場。
- アニメ『手塚治虫が消えた!? 20世紀最後の怪事件』
- 容疑者の一人として登場。原作とは異なり女性らしさが強調されている。
- アニメ『海底超特急マリンエクスプレス』
- 太古のムー帝国の王女。
- アニメ『鉄腕アトム』
- 27話『ブラック・ジャックの大作戦』でロックが怪我を負わせてしまった王女。ここでも王子のふりをしていたが、彼女の手術をしたブラック・ジャックに嘘はいけないと諭され、自分が女であることを自白する。
- 漫画『#こんなブラック・ジャックはいやだ』
- つのがいによる手塚プロ公認のパロディ漫画。5巻にヘケートとともに当人として登場。手塚プロ全キャラ集合時以外眠っているという設定で、いつも眠っているのでヘケートに『依存の騎士』と呼ばれ愛想をつかされてしまう。それまでの話にもモブとしてヘケート共々登場している。
サファイアを演じた人物
- 声優
-
- 太田淑子 - テレビアニメ版、『海底超特急マリンエクスプレス』、『手塚治虫アカデミー大賞』
- 白石冬美 - テレビアニメ・パイロット版[3]
- 岡本茉利 - 『鉄腕アトム』(アニメ第2作)
- 冬馬由美 - KYOTO手塚治虫ワールド上映版[4]、『手塚治虫が消えた!? 20世紀最後の怪事件』
- 高橋和枝 - ラジオドラマ版
- 俳優
脚注
- ^ 「リボンの騎士」サファイア、宝塚“市民”に(読売新聞・2009年4月25日)
- ^ “宝塚市観光大使リボンの騎士「サファイア」”. 観光・文化・産業. 兵庫県宝塚市. 2024年1月14日閲覧。
- ^ “リボンの騎士(パイロット)”. 手塚治虫公式サイト. 2021年2月11日閲覧。
- ^ “リボンの騎士 - オリジナルアニメ -”. 手塚治虫公式サイト. 2021年2月11日閲覧。
関連項目
サファイア リボンの騎士
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/07 04:14 UTC 版)
サファイア リボンの騎士 | |
---|---|
ジャンル | 少女漫画、ファンタジー漫画 |
漫画 | |
原作・原案など | 手塚治虫(原作) 高橋ナツコ(脚本) |
作画 | 花森ぴんく |
出版社 | 講談社 |
掲載誌 | なかよし |
レーベル | KCデラックス |
発表号 | 2008年5月号 - 2009年7月号 |
巻数 | 全4巻[1] |
テンプレート - ノート |
『サファイア リボンの騎士』(サファイア リボンのきし)は、原作・手塚治虫、脚本・高橋ナツコ、作画・花森ぴんくによる日本の漫画作品。
作品概要
講談社の漫画雑誌『なかよし』にて2008年5月号から2009年7月号まで連載し、増刊『なかよしラブリー』2009年7月発売号に「完結編」が掲載された。
連載開始時には「『なかよし』創刊55周年カウントダウン企画第1弾」・「手塚治虫生誕80周年記念企画」と銘打たれ、新聞記事[2]やテレビ番組[3]でも取り上げられた。
手塚治虫の漫画『リボンの騎士』のリメイク作だが、『美少女戦士セーラームーン』や『東京ミュウミュウ』シリーズのような、変身バトルヒロイン物の要素を兼ね備えたものとなっており、現代の社会事情や雑誌購読層の嗜好にマッチするよう、様々な設定の改変がなされた。また、舞台についてはシルバーランドという架空の国だけでなく、近未来の東京も加わっており、物語の終盤を除いてはむしろ東京が主な舞台となっていた。
本作は単なるリメイクではなく続編としての構想を持って作られており[4]、主人公は原作の主人公初代サファイアの子孫という設定になっている。一方で、前作・原作となる『リボンの騎士』や、その関連作である『双子の騎士』とは作風が大幅に変えられている点もある。
なお、以上の事情から当記事内で「サファイア」の名を用いた際、原作である『リボンの騎士』の主人公であるサファイアと、当作の主人公との判別が紛らわしいため、基本的に当記事内においては単に「サファイア」とした場合は当作の主人公を指すこととし、『リボンの騎士』の主人公であるサファイアに関しては「初代サファイア」と表記する。
登場人物
- サファイア
- 本作の主人公。東京の私立中学に通う少女。シルバーランドという国の王女だったが、内紛に巻き込まれて3人の侍従と共に日本に亡命、日本人・藍音サファイアとして生活していた。なお国王夫妻は内紛により死亡している。その後、14歳の誕生日にリボンの騎士としての力が覚醒、「プリンセスナイト・リボンの騎士」に変身できるようになり、シルバーランド復興のために戦い始める。
- 掟により王位は男子にしか継承されない[5]ため、シルバーランド王家の人間として行動し、リボンの騎士としての力が発動している時には、王子として振舞わねばならない。
- 王家の証として所有する「王家の宝玉(プレシャス)」を、敵であるジュラルミン大公たちに狙われている。
- フランツ・チャーミング
- サファイアの上級生。彼女より1学年上で、その正体は闇の手によって滅ぼされた国家・ゴールドランドの王子。祖国復興をかけて闇と戦う宿命にあり、闇の支配下にあるシルバーランド=悪しき闇だと思い込む。そのためシルバーランドの王子であるリボンの騎士に激しい敵愾心を燃やしていた。
- 彼もまた王家の証として宝玉を持ち、その力によって「シュヴァリエ・エスメラダ(エメラルドの騎士)フランツ」に変身できる。
- ガリゴリ
- サファイアが通う私立中学の校長。実はシルバーランドの王室に仕えていた侍従であり、校長は世を忍ぶ仮の姿である。内紛に巻き込まれた際、まだ乳児だったサファイアと、2人の若い侍従、ウラナール(男性)、アソーヌ(女性)と共に日本に亡命した。
- チンク
- サファイアが身につけているペンダントに潜む妖精。ピーターパンを縮めたかのような外見の持ち主。サファイアのことを「王子」と呼ぶ。彼女の中に眠っていた、リボンの騎士としての力を覚醒させてしまう。
- ヘケート
- ヘル夫人が「王家の宝玉」を奪い取るために、サファイアのもとに送り込んだ人造物。容姿は人間の少女そのもので、サファイアのクラスに「白綺ヘケート(しらきヘケート)」と名乗って転入。人形のような美貌で、瞬く間にクラスの人気者となる。事ある毎にサファイアにつきまとい、彼女と親しくなる。
- 瑠璃(るり)
- サファイアの友人でクラスメイト。ツインテールが特徴。
- 真珠(まじゅ)
- サファイアの友人でクラスメイト。ロングヘアが特徴。
- ジュラルミン大公
- シルバーランドの王権を狙い、悪しき闇と手を結んだ反逆者。サファイアの持つ「王家の宝玉」を狙う。
- ナイロン
- ジュラルミンの腹心。闇の面々との連絡係を担う。
- ヘル夫人
- ジュラルミン一派と手を組む闇の魔女。『闇の使い魔(ファセット・コール)』と呼ばれる悪魔を呼び出し、サファイアたちを襲わせていたが、サファイアに自邸を襲撃され殺された。
- ソーマ
- ジュラルミンの息子。ヘル夫人亡き後のヘケートの保護者的存在。
書誌情報
- 原作・手塚治虫、脚本・高橋ナツコ、作画・花森ぴんく 『サファイア リボンの騎士』 講談社 〈KCデラックス〉 全4巻[1]
- 2008年9月5日発行、ISBN 978-4-06-375553-4
- 2009年1月13日発行、ISBN 978-4-06-375643-2
- 2009年4月28日発行、ISBN 978-4-06-375702-6
- 2009年9月4日発行、ISBN 978-4-06-375782-8
脚注
- ^ a b “講談社BOOK倶楽部|検索結果”. 講談社. 2010年6月23日閲覧。
- ^ リボンの騎士:41年ぶり復活 手塚治虫の名作マンガ、4月から「なかよし」で毎日新聞 2008年3月4日付
- ^ 『ズームイン!!SUPER』第2部(四国放送除く日本テレビ系列)2008年3月12日付け「ズムとく!」で紹介。日本テレビ公式HPトップ→情報→ズームイン!!SUPER
- ^ 連載第1話の扉より。同種の関係を持つ前例作品として『8マン』と『8マン インフィニティ』などが挙げられる。
- ^ ただし原作では、この掟は初代サファイアの時代に撤回されたことになっている(そのために原作の続編『双子の騎士』では兄と妹の間で継承権争いが生じ、これが物語の発端となっている)ため、設定に齟齬が生じてる。この矛盾については、2009年6月初めの時点では公式アナウンスがない。
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