ギリシア空軍とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ギリシア空軍の意味・解説 

ギリシャ空軍

(ギリシア空軍 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/07 00:19 UTC 版)

ギリシャ空軍
Ελληνική Πολεμική Αεροπορία
創設 1912年
国籍 ギリシャ
軍種 空軍
タイプ 軍事航空
任務 航空戦闘
上級部隊 ギリシャ軍
渾名 HAF
モットー Αἰὲν Ὑψικρατεῖν
常に高みを支配する
戦歴 バルカン戦争
第一次世界大戦
希土戦争
第二次世界大戦
朝鮮戦争
トルコのキプロス侵攻
湾岸戦争
対テロ戦争
リビアへの軍事攻撃
識別
国籍識別標
フィンフラッシュ
使用作戦機
電子戦機 EMB-145H
戦闘機 F-4E
F-16C/D/V
ミラージュ2000-5 Mk.2
ラファールEG/DG
汎用ヘリ ベル 205
AS 332C1
偵察機 ペガサス英語版
練習機 T-6A
T-41
T-2E
輸送機 C-27J
C-130H
テンプレートを表示

ギリシャ空軍(ギリシャくうぐん、ギリシア語: Ελληνική Πολεμική Αεροπορία)は、ギリシャ軍を構成するギリシャ空軍組織である。ギリシャ国防省英語版の管轄下に置かれている。

概要

設立期

ギリシャ最初の軍用機ニューポール IV.Gの同型機

ギリシャで最初の航空部隊は、フランスの支援のもと1911年に設立された。6 人のギリシャ軍人がフランスへ訓練に送られ、その後4機のファルマン機が発注された。

最初のギリシャ人飛行家となったエマヌエル・アルギュロポウロスは、1912年2月8日にニューポール IV.G戦闘機で最初の飛行に成功した。また、デメトリオス・カムベロス中尉は最初の軍事任務をこなした。カムゲロスはまた、6月にはファルマン水上機「ダエダロス」号に乗って水上離陸に成功し、海軍航空隊を発足させた。9月には、ギリシャ陸軍が最初の航空隊となる航空中隊(Λόχος Αεροπόρων)を発足させた。

実戦への参加

ギリシャ空軍は、バルカン戦争第一次世界大戦希土戦争第二次世界大戦に参加した。また、度重なる内戦クーデターでも一定の影響力を持った。

当初は陸軍航空隊と海軍航空隊は別個に存在していたが、1930年に航空省が発足するとその管轄下におかれる空軍に統合され、陸・海軍に続くギリシャ第3の軍隊となった。1931年には、空軍アカデミーであるイカロン学校が開校した。

戦間期における機材は、初期にはスパッド S.VIIのような第一次世界大戦期の航空機、中期以降はポーランド製のP.24やフランス製のMB.151ドイツ製のDo 22などが運用された。

第二次世界大戦初期の1940年には侵攻したイタリア軍を首尾よく撃退したが、翌1941年4月にはナチス・ドイツ軍によってギリシャ空軍は壊滅した。空軍は中東方面でイギリス空軍の1飛行隊として再建され、スピットファイアハリケーンボルティモアを運用した。

1944年にはイギリス軍が上陸し、ギリシャはドイツ軍を撃退した。しかし、ギリシャ国内は各派が争って混乱を極め、そのままギリシャ内戦に突入した。

戦後

TA-7CコルセアII練習攻撃機

1950年代、軍は再建と北大西洋条約機構(NATO)標準への再編成を行った。ギリシャ空軍は朝鮮戦争に参加し、1 部隊が輸送任務を行った。ギリシャは2001年までNATOの核戦力の一端を担ったが、核攻撃に際してはアメリカ合衆国より給与されるB61核爆弾A-7 コルセア II若しくはF-104Gによって投下する予定であった。1980年代末まで、空軍はアメリカ合衆国より給与される核弾頭を装備できるナイキ・ハーキュリーズ地対空ミサイルを運用した。

トルコとの間断なき緊張関係の末、1974年にはトルコ軍キプロス島に侵攻した。キプロス紛争では、ギリシャ空軍機とトルコ空軍機との間で空中戦も発生した。アメリカ合衆国は核兵器をギリシャやトルコから撤去し、実戦に使用される不安を除去した。ギリシャはこれをNATOによるトルコ擁護策だとして批判し、1974年から1980年まで自国軍をNATO軍の指揮下から外す措置をとった。

その後、ギリシャはNATOとの関係を修復し、1981年には欧州共同体(EC)の10番目の加盟国となった。空軍ではF-4EファントムIIミラージュ2000C-130ハーキュリーズなどの新型機材の導入を進め、隣国の中でも能力の高い機材を保有する軍隊へと成長していった。最新の機材は、フランス製の戦闘機ミラージュ2000-5やアメリカ製のF-16Cブロック52+の他、2020年9月にはフランス・ダッソー製のラファール戦闘機を18機導入する計画を発表した[1]。また、F-4Eは「ピース・イカロス」計画のもと自国で近代化改修され、F-4E PI2000となった。防空ミサイルでは、9K331「トール」S-300という旧東側製の機材も運用している。

なお、世界でも珍しく農業機部隊を保有している。発展途上国や(空軍ではないが)アメリカ麻薬取締局などでは麻薬対策として(除草剤を麻薬植物の畑に強行散布する)保有しているケースはあるが、ギリシャ空軍は専ら民生用に用いており、グラマン アグキャットPZL M-18ドロマデルを装備している。

組織

ギリシャ空軍の組織図

管理組織

  • ギリシャ国防軍参謀本部
    • 空軍参謀
      • 戦術空軍司令部
      • 空軍訓練司令部
      • 空軍支援司令部

戦力

  • ギリシャ空軍参謀
    • 第251空軍総合病院
      • 航空医学センター
      • 最高空軍病院委員会
  • 戦術訓練司令部
    • ラリサ空軍作戦センター
      • 第110戦闘航空団
        • 第337全天候戦闘飛行隊
        • 第348戦術偵察飛行隊
      • 第111戦闘航空団
        • 第330戦闘迎撃飛行隊
        • 第341戦闘爆撃飛行隊
        • 第347戦闘爆撃迎撃飛行隊
      • 第114戦闘航空団
        • 第331戦闘迎撃飛行隊
        • 第332戦闘迎撃飛行隊
      • 第115戦闘航空団
        • 第340戦闘爆撃飛行隊
        • 第343戦闘爆撃飛行隊
      • 第116戦闘航空団
        • 第335戦闘飛行隊
        • 第336爆撃飛行隊
      • 第117戦闘航空団
        • 第338戦闘爆撃飛行隊
        • 第339迎撃飛行隊
      • レーダー部隊
        • 第1空域管制センター
        • 第2空域管制センター
        • 第3空域管制センター
      • 戦闘群
        • 第126戦闘群
        • 第130戦闘群
        • 第131戦闘群
        • 第132戦闘群
        • 第133戦闘群
        • 第134戦闘群
        • 第135戦闘群
        • 第138戦闘群
      • 第350誘導ミサイル連隊
        • 第21誘導ミサイル中隊
        • 第22誘導ミサイル中隊
        • 第23誘導ミサイル中隊
        • 第24誘導ミサイル中隊
        • 第25誘導ミサイル中隊
        • 第26誘導ミサイル中隊
        • 整備小隊
      • 特別部隊
        • 第380早期警戒飛行隊
        • 航空作戦センター
        • 戦術兵器学校
        • 航空写真解析センター
        • 第140電子戦中隊
  • 空軍支援司令部
    • 第112戦闘航空団
      • 第31特殊戦飛行隊
      • 第353海洋偵察飛行隊
      • 第352要人輸送飛行隊
      • 救急ヘリコプター部隊
      • 戦術輸送飛行隊
        • 第354戦術輸送飛行隊
        • 第355戦術輸送飛行隊
        • 第356戦術輸送飛行隊
      • 捜索救難飛行隊
        • 第358戦術輸送飛行隊
        • 第384捜索救難飛行隊
      • 第113戦闘航空団
        • 第383航空消火飛行隊
      • 第129支援航空団
        • 輸送飛行隊
        • 補給飛行隊
      • 第206空軍インフラ航空団
        • 第201空軍補給処
        • 第204弾薬補給処
        • 石油配給部隊
  • 空軍訓練司令部
    • 空軍アカデミー
      • 第360初等訓練飛行隊
    • 第120訓練航空団
      • 第361航空訓練飛行隊
      • 第362航空訓練飛行隊
      • 第363航空訓練飛行隊
      • 第364航空訓練飛行隊
    • 海上サバイバル訓練学校
      • 第123戦術訓練航空団
    • 防空要員訓練センター
      • 第124基礎訓練連隊
        • 第1士官訓練中隊
        • 第2士官訓練中隊
        • 第3士官訓練中隊
        • 局地防衛訓練中隊
    • 空軍幕僚大学
    • 空軍戦術下士官アカデミー
    • 空軍管理下士官アカデミー
    • 空軍無線航空士アカデミー
    • 第128情報航空電子機器訓練小隊

階級

士官

  • OF-9 大将 (Πτεραρχος)
  • OF-8 中将 (Αντιπτεραρχος)
  • OF-7 少将 (Υποπτεραρχος)
  • OF-6 准将 (Ταξιαρχος)
  • OF-5 大佐 (Σμηναρχος)
  • OF-4 中佐 (Αντισμηναρχος)
  • OF-3 少佐 (Επισμηναγος)
  • OF-2 大尉 (Σμηναγος)
  • OF-1 中尉 (Υποσμηναγος)
  • OF-1 少尉 (Ανθυποσμηναγος)

准士官

  • OR-9 准尉 (Ανθυπασπιστής)

下士官

  • OR-8 上級曹長 (Αρχισμηνιας)
  • OR-7 曹長 (Επισμηνιας)
  • OR-6 軍曹 (Σμηνίας)
  • OR-5 伍長 (Υποσμηνίας)

  • OR-4 無し
  • OR-3 1等空兵 (Εφεδρος Σμηνιας)
  • OR-2 無し
  • OR-1 2等空兵 (Σμηνιτης)

装備

機種名 画像 バージョン 運用数 備考
戦闘機攻撃機
F-4[2] F-4E[2] 33[2]
F-16[2] F-16C/D[2] 154[2] 1987年にブロック30型40機、1993年にブロック50型40機、1992年にブロック52型50機(後に10機を追加)、2005年にブロック52型21機を発注もしくは導入決定[3]。また、2018年に既存機85機をブロック70/72ヴァイパー仕様へ改修する契約を締結している。
F-16CG/DG ブロック30/50×69機、F-16CG/DG ブロック52+×55機、F-16C/D ブロック52+×20機、F-16V(C/D)×10機を運用中[2]
ダッソー ミラージュ2000[2] ミラージュ2000-5 Mk2[2]
ミラージュ2000[2]
24[2]
(10)[2]
1985年にBG/EG型40機の導入を決定、2000年には2000-5 Mk2型15機の新造と既存機10機の改修を発注した[4]
ミラージュ2000-5EG Mk2 ×19機、ミラージュ2000-5BG Mk2×5機を運用中、ミラージュ2000EG×10機を保管中[2]
ダッソー ラファール[2] ラファールC/B F3-R[2] 18[2] 当初18機を発注し、後に6機を追加発注した[5]。2021年7月から受領開始[6]。ラファールC F3-R×14機、ラファールB F3-R×4機[2]
早期警戒機
EMB-145[2] EMB-145H エリアイ[2] 4[2]
輸送機
C-27J[2] 8[2]
C-130[2] C-130B/H[2] 15[2] C-130B×5機、C-130H×10機[2]
EMB-135[2] EMB-135BJ/LR[2] 2[2] EMB-135BJ×1機、EMB-135LR×1機[2]
ファルコン7X[2] 1[2] 要人輸送機[2]
ガルフストリームV[2] 1[2]
練習機
M-346[2] 2[2]
Tecnam P2002[2] P2002JF[2] 12[2]
T-2[2] T-2C/E[2] 28[2]
T-6[2] T-6A/B[2] 28(推定)[2] T-6A×13機(推定)、T-6B×15機(推定)[2]
回転翼機
AS332[2] AS332C[2] 12[2]
ベル205[2] AB205A[2] 12[2] 捜索救難機[2]
ベル212[2] AB212[2] 4[2] 要人輸送機、輸送機[2]
AW109[2] 3[2]
無人航空機
ヘロン[2] ヘロンI[2] 2[2] リース機[2]
HAI Pegasus[2] PegasusII[2] 2+(4)[2] 2機を運用中、ほかに4機以上が保管中[2]
地対空兵器
パトリオット[2] PAC-2[2] 36[2]
S-300[2] S-300PMU-1[2] 12[2]
クロタル[2] クロタルNG/GR[2] 9[2]
9K331[2] 9K331 トールM1[2] 4[2]
スパロー[2] RIM-7M[2] 20[2] スカイガードシステムと連接[2]
ラインメタル Rh202[2] 複数[2]
Artemis-30[2] 35以上[2]
エリコン GDF[2] GDF-005[2] 24[2]
搭載兵装
AIM-9[2] AIM-9L/P[2]
R.550 マジック[2] マジック2[2]
IRIS-T[2]
MICA[2] MICA-IR[2]
MICA-RF[2]
AMRAAM[2] AIM-120B/C[2]
ミーティア[2]
AGM-65[2] AGM-65A/B/G[2]
SCALP-EG[2]
エグゾセ[2] AM39[2]
AGM-88[2]
GBU-8[2] GBU-8B HOBOS[2]
ペイブウェイ[2] GBU-10/12/16 ペイブウェイII[2]
GBU-24 ペイブウェイIII[2]
GBU-50 エンハンスド・ペイブウェイII[2]
JDAM[2] GBU-31 JDAM[2]
AGM-154[2] AGM-154C JSOW[2]

ギャラリー

脚注

出典

  1. ^ ギリシャ フランス製ラファール戦闘機の調達を決定 既存のミラージュ戦闘機の近代化も”. 乗りものニュース. 2021年1月24日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh bi bj bk bl bm bn bo bp bq br bs bt bu bv bw bx by bz ca cb cc cd ce cf cg ch ci cj ck cl cm cn co cp cq cr cs ct cu cv cw cx cy cz da db dc dd de df dg dh di dj dk dl dm dn The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2024) (英語). The Military Balance 2024. Routledge. pp. 101-102. ISBN 978-1-032-78004-7 
  3. ^ 青木謙知『世界の名機シリーズ F-16ファイティングファルコン<最新版>』イカロス出版、2018年12月28日、81-82頁。 ISBN 9784802206266 
  4. ^ 嶋田久典『世界の名機シリーズ ミラージュ2000』イカロス出版、2011年4月11日、58頁。 ISBN 9784863203686 
  5. ^ Gareth Jennings (2022年3月25日). “Greece signs for additional Rafales”. janes.com. 2025年4月5日閲覧。
  6. ^ Alessandra Giovanzanti (2021年7月22日). “Greece receives first Rafale combat aircraft”. janes.com. 2025年4月5日閲覧。

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ギリシア空軍」の関連用語

ギリシア空軍のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ギリシア空軍のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのギリシャ空軍 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS