オシリス信仰の勃興
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/06 09:11 UTC 版)
「古代エジプトの宗教」の記事における「オシリス信仰の勃興」の解説
「オシリス」を参照 初期の時代には、王たちしか約束されていなかった死後の生命を、中王国時代になると貴族階級も手に入れることが可能となり、古王国時代の末になると、オシリスはラーを凌ぐ人気を博していた。人間の悲劇や苦悩を知っている神、そして善が悪に打ち勝つという神話は、広く人々の心を打つものだったからである。 それに反し、王家の保護の下で特権的な神官たちに支配されていた公的なラー信仰は、人々の心に直接働きかけるような魅力に欠けていた。 ピラミッド・テキストの中にオシリス信仰が取り入れられていることは、この神の重要性が増大してきたことを表わしているだけではなく、オシリス信仰が、公的に太陽信仰に取って代わりつつあった状況を示しているとも考えられるものの、両者同士それぞれを脅かす存在ではなかった。 それはオシリス信仰にかかわる要素が、ラーの強力な支持者であった第3王朝の王たちのピラミッドに初めて記されていることから見ても明らかである。 また、これらの信仰は幾つかの重要な特徴を共有している。たとえば、両神とも死後の生命を約束していた。太陽信仰は、夜を冥界で過ごした後、地平線から昇って来る太陽の日々の復活に象徴されるものである。これに対して、オシリスの死と復活は、ナイル川の氾濫によって乾いた大地から毎年再生して来る新しい植物の成長に反映されている。 ラーは、王の死後の生命と深く結びついていたが、オシリスを通して得られる復活は、後の時代になると広く一般の人々のものとなった。しかし、両神ともに、生、死、そして再生は回帰するものであり、それは自然の中に反映されているという基本的な古代エジプトの思想を象徴するものである。 しかし結果的には、この両神は非常に異なる役割を持つようになった。ラーはヘリオポリスの神官たちと結びついた王家の神として残り、生者の神として見られた。これに対して、オシリスは、いくつかの信仰の中心地を持ってはいたが、エジプト全土の人々を受け入れる用意のある死者の神として見られるようになった。オシリスがこのように人気があった理由のひとつとして、日々の生活に影響力を持つ地方の神々を信仰している者でも、こうした地方神とは別にオシリスを葬送の神として、信仰することができたということがある。 ピラミッド・テキストの中では、ラーとオシリスとの直接の対立は見られないと考えられる。しかし、オシリス信仰がこの中に取り入れられたことは、ラーやその神官たちによって、自分たちの神性に影を落とされた王たちのひそかな願いを反映していると思われる。 なぜなら、その葬送のテキストの中にオシリス信仰の要素を取り入れることによって、王はラーの息子であるばかりでなく、オシリスとイシスとの息子であるホルスの化身としてこの地上を支配し、さらには、死後オシリスとなって冥界の神や裁判官として君臨することができたからである。こうして、ラーは、天における最高神として君臨し続けはしたが、その他の場所では、王が絶対的な力を維持することができたのである。 古王国時代に形成されたと思われる古代エジプト人の人間性に対する概念には、様々な要素がある。 「古代エジプト人の魂」を参照
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