イングランドでの検視官の調査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/17 23:25 UTC 版)
「キンティンスヒル鉄道事故」の記事における「イングランドでの検視官の調査」の解説
事故が起きたのはスコットランドであったが、一部の負傷者はその後、適用される法律が異なるイングランド側に運ばれてから死亡したため、法的な位置づけが複雑なものとなった。スコットランドでは、検察官(英語版)が死亡者を調査し、もしその死に対して誰かに責任があると判断すれば、逮捕を命じて過失致死で起訴する。イングランドでは、検視官が死亡者を調査し、死因審問で死亡が過失によるものであるとされた場合、検視官が容疑者を過失致死で起訴することができる。カーライル担当の検視官、T.S.ストロングは、内務省に指示を求め、イングランドで死亡した被害者については、通常通り調査を行うように指示された。調査は5月25日に開始されたがそれからまもなく、ドルイト中佐の調査が完了する6月23日まで休止された。ティンズリー、ミーキン、ハッチンソンなどから2日に渡る聴取を終えて、ストロングは19人で構成される陪審に対して証拠をまとめた。彼は、ミーキンかティンズリーが、(a) 線路が再び列車に占有されたことを通知する (b) 信号扱いてこの固定器具を装着する (c) 正しく列車運行記録簿を付ける、のいずれかの規定を守っていれば、停車中の列車を見落とさなかっただろうと強調した。彼はまとめでこのように結論付けた。 陪審の皆さんの審議の結果として、関わった鉄道員のいずれかが規定や安全上の措置を破っていた、言葉を変えれば、彼らには怠慢があったと判断した場合、さらにみなさんが決定しなければならないことがある。このような怠慢は、周囲のすべての状況を考慮に入れて、非難に値する怠慢、言葉を変えれば重大な怠慢と言えるであろうか?もしそうであれば、これは過失致死である。 陪審は退室し、1時間後に戻ってきて、ティンズリー、ミーキン、ハッチンソンの重大な怠慢のために、今回の審問の対象である27人が死亡したとする評決を出した。このため検視官は、3人を次に開催されるカンバーランドの巡回裁判に過失致死の容疑で送った。3人とも保釈を認められた。 3人を弁護していた弁護士は、本件で問われている容疑はスコットランドで発生したものだとして、彼らを巡回裁判にかけるのは検視官の管轄範囲外であると抗議した。検視官は、内務省から通常の調査を進めるように指示されたものであると述べた。1915年5月29日にスコットランド当局がティンズリーを逮捕し、過失致死で起訴していたため、このイングランドでの評決により、彼の立場は異例のものとなった。ティンズリーは、同じ事件でイングランドでもスコットランドでも過失致死に問われることになったのである。イングランドとスコットランドの法務担当官の間で議論が行われた結果、3人に対する裁判はスコットランドで行われることになった。 3人は、イギリスを構成するカントリー2か所(イングランドとスコットランド)で同じ事件で起訴された初めての人物となった。
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