イングランドおよびウェールズとは? わかりやすく解説

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イングランドおよびウェールズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/16 01:58 UTC 版)

  イングランドおよびウェールズ
  その他の連合王国

イングランドおよびウェールズEngland and Walesウェールズ語: Cymru a Lloegr)は、イギリス(連合王国)を構成する4つの国(country)のうち2つを含む法域である。イングランドウェールズを併せたものが旧イングランド王国の統治機構上の後継者であり、イングランド法という単一の法体系に従う。

権限委譲を受けたウェールズ国民議会National Assembly of Walesウェールズ語: Cynulliad Cenedlaethol Cymru)が1999年に連合王国議会によって1998年ウェールズ統治法に基づいて創設されており、ウェールズにおいては一定の自治が認められている。ウェールズ国民議会の権限は2006年ウェールズ統治法(en:Government of Wales Act 2006)によって拡大され、ウェールズ政府は今では独自の法令を提案し可決することができるようになった(en:Contemporary Welsh Lawを参照。)。

イングランドおよびウェールズにスコットランドと合わせればおおむねグレートブリテン島とその付属島嶼を構成し、さらに北アイルランドを加えれば連合王国を構成し、さらに3つの王室属領を加えると法的意義におけるブリテン諸島(British Islands)を構成する。

歴史

ローマ時代の先住民

ローマ時代は、現在のイングランドおよびウェールズが1つの単位として統治された最初の時代である(ハドリアヌスの長城の北側を除く。)。当時、ローマ領ブリタンニアの先住民はみなブリソン諸語を話し、みなブリトン人とされていたが(これに対して現在のスコットランドであるカレドニアの先住民はピクト人という。)、多くの部族に分かれていた。征服後、ローマ人はこの地域を1つの単位として統治した。ブリタンニア属州である。

ウェールズはその独自の法体系(en:Welsh lawを参照。)を発展させており、これを最初に法典化したのがハウェル・ザー (Hywel Dda:ハウェル良王。在位 942950)であり、彼がウェールズの大部分を支配する王であった時であった。しかしながら、11世紀のノルマン人によるウェールズ征服(en:Norman invasion of Wales参照。)の後、ウェールズのノルマン人征服地域(ウェールズ辺境領(en:Welsh Marches))においてはイングランド法が用いられるようになった。1283年には、イングランド王エドワード1世に率いられたイングランド人が、11世紀以来最大規模の軍隊によってウェールズの残りの地域を征服し、しかる後にウェールズ公国を置いたが、これは1284年のルドラン法(en:Statute of Rhuddlan)によってイングランドの王位に結びつけられたものであった。

ウェールズ法は、その後も民事事件については用いられ続けたが、それは16世紀にウェールズがイングランドに併合されるまでであった。1535年から1542年にかけてのウェールズ法諸法 (Laws in Wales Acts 1535-1542)は、ウェールズの全領域の行政を統合し、イングランド王国の法体系に完全に編入した[1]

1746年までは法令における「イングランド」との呼称がウェールズを含むか否かははっきりしなかったため、1746年に議会は1746年ウェールズ・ベリック法を採択した。これにより、過去および将来の法律において、「イングランド」との呼称は原則としてウェールズ(およびベリック)を含むことが明確化された。1746年ウェールズ・ベリック法は1967年に廃止されたが、同法の創設した「イングランド」の制定法上の定義はその廃止前に採択された法律については維持されている。同法の廃止後は、従前「イングランド」と呼ばれていたものは「イングランドおよびウェールズ」となり、「イングランド」と「ウェールズ」はそれぞれの地域を指す呼称となった。

イングランド及びウェールズの裁判所制度

イングランドおよびウェールズは多くの場合に1つの単位として取り扱われる。両者を併せたものがイングランド王国の統治機構上の後継者だからである。スコットランド法が維持されることは、1706年の合同条約(en:Treaty of Union)において保障され、1707年連合法につながった。その結果、イングランド法1801年より後はアイルランド法も)もまた別のものとして存続した。2つの連合法に従って、議会はその法律の効力を王国の一部に限定することができ、その場合、一般にその効力は旧王国のうちの1つか2つに限定された。こうして、イングランドに適用される多くの法律はウェールズにも適用される。しかしながら、議会は今やウェールズにのみ適用がありイングランドには適用がない法律を採択することがあり(その逆もまた然り。)、このようなことは20世紀半ばより前はまれであった。その例としては、1967年ウェールズ語法(en:Welsh Language Act 1967)や1993年ウェールズ語法(en:Welsh Language Act 1993)、1998年ウェールズ統治法がある。さらに、2006年ウェールズ統治法(en:Government of Wales Act 2006)によりウェールズ国民議会条例がウェールズに適用されることとなり、これはイングランドには適用されない。

2006年ウェールズ統治法は2007年5月に施行されたが、これに従って、ウェールズ国民議会は権限委譲を受けた事項について立法を行うことができる。ウェールズが自身の権限で立法を行うことができるのは、直近約500年の中で初めてである。ウェールズにおいて立法される法律は、Act of the Assemblyという。公式に提案されたウェールズ国民議会による最初の立法は2008年NHS救済(ウェールズ)法規(en:NHS Redress (Wales) Measure 2008)である。2011年3月3日のレファレンダム(en:Welsh devolution referendum, 2011参照。)により、ウェールズ議会はウェストミンスターに諮ることなく直接に法律を制定する権限を獲得した。

王立裁判所

会社登記

イギリスにおいて設立される会社は、企業登記局(en:Company House)へのその登記申請の際に、当該会社の登記営業所をイングランドおよびウェールズ(またはウェールズ)、スコットランドまたは北アイルランドのいずれに置くかを明らかにする必要があり[2]、これによって当該会社に適用すべき法が定まる。当該会社がその名称の末尾に「Limited」または「Ltd.」の代わりに「cyfyngedig」または「cyf」を用いたい場合には、登記営業所所在地をウェールズとすることもできる。

その他の団体

法体系の外では、位置づけはさまざまである。「イングランドおよびウェールズ」を併せる団体もあれば、そうでないものもある。

1920年にウェールズ聖公会が国教会でなくなるまでは、聖公会イングランド国教会の管轄下でウェールズとイングランド全域を運営していた。

席次

イングランドおよびウェールズにおける席次(en:order of precedence in England and Walesを参照。)は、北アイルランド、スコットランドおよび他の英連邦王国における席次とは区別される。

国立公園

イングランドおよびウェールズの国立公園は、他とは区別される法制上の枠組みと歴史を有する。

脚注

  1. ^ Cannon, John (2009). A Dictionary of British History. Oxford University Press. p. 661. ISBN 0-19-955037-9. https://books.google.co.jp/books?id=TYnfhTq2M7EC&printsec=frontcover&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q&f=false 15 October 2010閲覧。 
  2. ^ 2006年会社法(Companies Act 2006)9条(2)項

関連項目


イングランドおよびウェールズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/12 16:56 UTC 版)

イギリスの警察」の記事における「イングランドおよびウェールズ」の解説

イングランドおよびウェールズでは、関係地自治体ごとに設けられ警察管理者 (Police authority) が警察維持管理にあたってきた。これは地方議会議員治安判事および有識者からなる合議体であり、政府の承認得て警察本部長本部長補の任命定員上限設定施設・整備品などの地方警察行政にあたっていた。その後2011年警察改革及び社会責任法の制定によってこの制度原則廃止され警視庁以外の地方警察では公選公安管理官 (Police and crime commissioner) がその業務引き継ぐとともに助言監視のため、公安委員会Police and Crime Panel)が設置された。また2017年警察及び犯罪法(英語版)によって、消防活動警察本部長管轄下に入ることになった。 なお警察教育内務省機関によって行われており、初任教育は6ヶ所に設けられ警察教育センター幹部養成警察大学校担当している。 警察本部長 (Chief constable) は地方警察の長であり、警察能力能率に関して責任負い警察管理に対して年次報告書提出する。また政府はこの報告書複写提出を受けるとともに上記女王監察官監察によって警察機能確認している。各警察本部では、通例本部長副本部長のほかに数名本部長補が配置されそれぞれ若干の部・課を擁して警務刑事地域などといった警察業務担当している。また下組織として、警視長署長とする警察署設置され、さらに主任警部を長とする分署附置されている。 上記通り、現在、イングランドおよびウェールズには、ロンドン警視庁および市警察除けば下記41個の地方警察設置されている。 エイボン・サマーセット警察 ベッドフォードシャー警察 ケンブリッジシャー警察 チェシャー警察 クリーブランド警察 カンブリア警察 ダービーシャー警察 デヴォン・コーンウォール警察 ドーセット警察 ダラム警察 ダベッド・ポーイス警察 エセックス警察 グロスタシャー警察 大マンチェスター警察 グエント警察 ハンプシャー警察 ハートフォードシャー警察 ハンバーサイド警察 ケント警察 ランカシャー警察 レスターシャー警察 リンカンシャー警察 西マーシア警察 マージーサイド警察 西ミッドランズ警察 ノーフォーク警察 ノーサンプトンシャー警察 ノーザンブリア警察 ノッティンガムシャー警察 スタッフォードシャー警察 サフォーク警察 サリー警察 サセックス警察 テムズバレー警察 ウォリックシャー警察ウェールズ警察ウェールズ警察 ウィルトシャー警察ヨークシャー警察 西ヨークシャー警察ヨークシャー警察

※この「イングランドおよびウェールズ」の解説は、「イギリスの警察」の解説の一部です。
「イングランドおよびウェールズ」を含む「イギリスの警察」の記事については、「イギリスの警察」の概要を参照ください。

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