イエメン産とエチオピア産
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 00:48 UTC 版)
イエメン産のコーヒー豆は特に「モカ・マタリ」 (Mokha Mattari、 Mocha Mattari) ともいい、イエメン北西部の高地産である。(マタリは産地であるバニー・マタル(バニーマタル)にちなむ。マタルは雨という意味の男性名でバニー・マタルすなわちマタルの子孫たち・マタル族が一帯に居住していたことに由来する地名で、サナアにはこのようなバニー・某という行政地区名が複数存在する。直訳では「雨の子孫達」となるが実際には「雨座右衛門の一族」「雨座右衛門の子孫」「雨座右衛門一家」的な意味であり雨が多い地域であることを意図した命名ではない。) さわやかな香りと強い酸味のある味わいが特徴で、かつて「コーヒールンバ」に唄われていたためか、日本でも人気が高い。「No.9」というのが、欠点豆の混入が比較的少ない等級であるが、ブラジルのNo.2抔と比べると数倍から十倍ほどの欠点豆があり、焙煎に際しては、入念なハンドピックが必要である。 エチオピア産は、シダモ (Sidamo)、ハラー (Harrah)、ディマ、レケンプティなど、収穫地名をつけて販売されることが多い。焙煎・抽出後のコーヒーは苦みが少ない代わりに酸味が非常に強く、フルーティーな香りがある。 モカコーヒーは、フルーティーな香りと強い酸味が特長で、高価なイエメン産、廉価であるエチオピア産、と長らく位置付けてきた。 2000年代に入り、スペシャルティコーヒー(高品質コーヒー)の需要が高まるにつれて、コーヒーチェリーをそのまま天日で乾かすナチュラル製法(天日乾燥式)が生産の中心だったエチオピアコーヒー生産の現場に、中南米で広く行われている水洗処理式(果皮を剥いたのちに、発酵槽で豆の周りの粘液質を除去する製法。ウォッシュト製法とも呼ばれる)を取り入れる生産者があらわれるようになった。これにより、イルガチェフェやシダモなどで、花の香水のような印象的な香りと、オレンジのような明快な風味と酸をもった高品質エチオピアコーヒーが生産されるようになり、それらは高値で扱われるようになり、エチオピアのコーヒーブランドを大きく高めた。2020年よりエチオピアはスペシャルティコーヒーの国際品評会カップ・オブ・エクセレンス開催国となり、今後の発展が期待される。また、発酵した味が出やすかったナチュラル製法も技術の進歩に伴い、完熟フルーツのような甘く個性的な香りのスペシャルティコーヒーを生産することができるようになった。 モカコーヒーは個性的な香りと印象的な酸味から、ブレンドコーヒーの配合にも多く使用される。「モカ」からスタートしたコーヒーは、その後、インドを経由し、16世紀にインドネシアのジャワ島(英語読みではジャバ)にもたらされた。ジャバが「モカ」に続く2つ目のコーヒー生産地域となった歴史を踏まえ、欧米のコーヒーショップでは、ブレンドコーヒーのひとつの型として、モカとジャバを配合した「モカ・ジャバ」を扱うことが多い。「モカ・ジャバは世界で最も歴史が古いブレンド」という謳い文句で扱われることも少なくない。ちなみに今でこそ、ジャバはロブスタ種の有数の産地だが、ジャバにロブスタが入ってきたのは1900年のことで、16世紀当時に生まれたとされるモカ・ジャバはアラビカ種同士で作られたものである。
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