アルバート・ハワードによる批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 02:35 UTC 版)
「バイオダイナミック農法」の記事における「アルバート・ハワードによる批判」の解説
シュタイナーのバイオダイナミック農法と双璧をなす初期有機農業の源流アルバート・ハワード(英語版)(1873 – 1947年)は、インドで農業研究に携わるうちに化学肥料中心の西洋の近代農学に疑問を持ち、現地の農業を研究し、インド、中国や日本の伝統的な農法をヒントに「インドール方式」という農法を作り上げた。彼は西洋の近代農法を批判したが、同時にシュタイナーのバイオダイナミック農法も批判している。シュタイナーは、人糞尿の肥料としての利用を「肥料としてごくわずかな効果しかない」「人糞尿で育った植物には、人糞尿の段階のままでとどまっているものが含まれる」という漠然とした説明で、「できる限り用いないほうが良い」としており、シュタイナーの門弟たちは「人間の排泄物の施用は有害である」としていた。ハワードはこの点を批判し、「ルドルフ・シュタイナーの門弟たちが、自然の諸法則を本当に解明し、彼ら理論の価値を実証する実例を提示できたとは考えられない」と述べた。 また、バイオダイナミック農業の肥料の配合方法は秘儀的な要素が強く、農法の伝承も人智学徒以外に必ずしも開かれているとはいえないが、ハワードはこの点も批判している。ハワードは著書で、バイオダイナミック農業の名を明示はしないが、明らかにわかる形で次のように述べている。インドール式には何の秘密もなく、秘法的知識に基づいたり健康と幸福が促進されると主張する「糞と魔法の混合」とでもいうべき農法のような主張は一切しない、インドール式は単に自然の土の中で行われていることの模倣である、と述べている。 シュタイナー自身は、講演会における「どのような人間が作業をするのかということは、意味を持つのでしょうか。それとも誰でも作業をしていいのでしょうか。作業をするのは、人智学的なものに関心のある人でなくてはならないのでしょうか」という聴衆からの問いに、次のように答えている。 瞑想的な生活を営むことで心の準備ができている人が、そういう仕事を見事に為しうるのです。瞑想している人は、イマジネーションを含み持つ窒素に対して、ほかの人と全く異なった関わり方をします。…わたしはこうした事柄について公衆の面前で自由に語るのは気が進まないのです。 — ルドルフ・シュタイナー、藤原辰史『ナチス・ドイツの有機農業 「自然との共生」が生んだ「民族の絶滅」』 藤原辰史は、ここでシュタイナーは精神修行を行った人智学徒に限るとしているわけではないが、自らの農法を伝える相手を厳しく制限することを望んでいたことは間違いないと述べている。シュタイナーが一方的に教えるという関係は揺らぎないものであり、「授ける側」-「授けられる側」という権威的な構図が固定しており、聴衆が問いシュタイナーが答えるという形しかなかった。ハワードは、インドール式はバイオダイナミック農法と違い、明快で開かれた農法であると自負していた。
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