アイナメ科とは? わかりやすく解説

アイナメ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/15 00:21 UTC 版)

アイナメ科
リングコッド Ophiodon elongatus
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
上目 : 棘鰭上目 Acanthopterygii
: カサゴ目 Scorpaeniformes
亜目 : アイナメ亜目 Hexagrammoidei
: アイナメ科 Hexagrammidae
学名
Hexagrammidae
Gill1863
英名
Greenlings
Atka mackerel
下位分類
本文参照

アイナメ科学名Hexagrammidae)は、カサゴ目に所属する魚類の分類群の一つ。アイナメ亜目を構成する唯一ので、アイナメホッケなど沿岸魚を中心に5亜科5属12種が記載される[1]

分布・生態

アイナメ科の魚類はすべて海水魚で、北太平洋に固有の分布を示す[2]温帯から寒帯域まで広範囲に分布し、北極海に生息する種類も知られている[1]。生息水深は潮間帯から600mを超える深海にまで及ぶが、通常は沿岸から200m以浅の大陸棚にかけての範囲であることが多い[2]。日本の近海からは、アイナメ属およびホッケ属の少なくとも7種が報告されている[3]。ほとんどの種類が漁獲対象となり、食用魚として広く利用されている[3]

アイナメ類はその多くが岩礁や砂礫底の海底で生活する底生魚で、ホッケ属(ホッケキタノホッケ)のみ、中層での遊泳生活を送ることが知られている[1]食性肉食性で、甲殻類端脚類多毛類や他の魚類・魚卵など、捕食対象となる餌生物は多様である[2]。一部の種類は成長段階や性差によって著しい色彩変異を示し、生息地の違いや産卵周期に応じた変化も顕著である[2][3]

本科魚類の雌は粘着性の高い沈性卵を産み、雄は卵塊を孵化まで保護する習性がある[3]仔魚は表層での浮遊生活を経た後に海底に移行し、ごく限られた範囲での定住生活を送ることが多い[3]

形態

アイナメ科の仲間は左右に平たく側扁した、やや細長い体型をもつ[2]。多くの種類は体長45cm未満だが、最大種のキバアイナメOphiodon elongatus)は全長1.5mに達することもある[1]。他のカサゴ目魚類に見られるような頭部のトゲや突起はもたず、両側の眼の直上に肉質の皮弁が1-2対存在する[2]側線は1本または5本で、浮き袋を欠く[1]。よく発達した前鼻孔を両側に1対備える一方で、後鼻孔は退化的である[1]はリングコッドのみ円鱗で、他のではすべて櫛鱗[2]

背鰭は1つで、16-28本の棘条と11-30本の軟条で構成される[1]。腹鰭は1棘5軟条、臀鰭は0-4棘12-28軟条で、臀鰭の棘条は退化的であることが多い[2]。顎と鋤骨に小さな歯を備え、口蓋骨の歯の有無はさまざま[2]。鰓条骨は6-7本、椎骨は36-63個[1]

分類

アイナメ科にはNelson(2006)の体系において5亜科5属12種が認められている[1]Zaniolepis 属を独立の科として扱う見解もある[2]

アイナメ亜科

アイナメ Hexagrammos otakii (アイナメ属)。日本各地の沿岸で観察される普通種で、食用魚としての価値が高い

アイナメ亜科 Hexagramminae は1属6種を含み、南日本からメキシコ北部にかけての太平洋岸に分布する[1]。頭部は鱗に覆われ、側線は1本あるいは5本[1]

背鰭のほぼ中央、棘条部と軟条部の境界に切れ込みをもつ[1]。臀鰭の棘条を欠き、尾鰭後縁の形状は円形からやや陥凹形までさまざま[1]頭蓋骨に明瞭な突起をもたず、椎骨は47-57個[1]

ホッケ亜科

ホッケ Pleurogrammus azonus (ホッケ属)。日本では馴染みの深い食用魚の一つ。本科魚類としては例外的に、広い範囲を回遊する習性がある
Oxylebius 属の1種(O. pictus)。本科魚類の特徴である、眼の上の皮弁が明瞭である

ホッケ亜科 Pleurogramminae は1属2種からなり、北日本からアラスカにかけての北太平洋に分布する[1]。遊泳性が強く、特に未成魚はしばしば大規模な回遊を行う[1][3]。頭部の鱗は部分的で、側線は5本[1]

背鰭に切れ込みをもたず、鰭条は21-24棘24-30軟条[1]。臀鰭は棘条を欠き23-32軟条で、尾鰭は二股に分かれる[1]。頭蓋骨によく発達した突起をもち、椎骨は59-62個[1]

Ophiodontinae 亜科

Ophiodontinae 亜科は1属1種で、キバアイナメのみが記載される。アラスカからメキシコ北部にかけての東部太平洋に分布する[1]。頭部の鱗を欠き、側線は1本[1]。牙のように鋭い歯を備えた大きな口をもち、他の魚類や甲殻類イカ類を貪欲に捕食する[1]

背鰭に深い切れ込みをもち、24-28本の棘条部と20-24本の軟条部を分かつ[1]。臀鰭は3本の未分枝鰭条と21-25軟条で構成され、尾鰭後縁は截形あるいは陥凹型[1]。椎骨は57-59個[1]

Oxylebiinae 亜科

Oxylebiinae 亜科は1属1種で、ブリティッシュコロンビア州カナダ)からカリフォルニア州にかけての沿岸に生息する[1]。頭部は鱗に覆われ、側線は1本[1]

背鰭の切れ込みは浅く、尾鰭後縁は円みを帯びる[1]。臀鰭は3本の発達した棘条をもち、第2棘は特に長い[1]

Zaniolepidinae 亜科

Zaniolepis 属の1種(Z. latipinnis)。本属の仲間は細長く伸びた背鰭鰭条を特徴とする

Zaniolepidinae 亜科には1属2種が記載され、Oxylebiinae 亜科と同様の分布域をもつ[1]。側線は1本。

背鰭の切れ込みは深く後方に位置し、棘条のうち前方の3本(特に第2棘)は著しく伸長する[1]。腹鰭の鰭条は、前方の2本が厚みを増す[1]

  • Zaniolepis
    • Zaniolepis frenata
    • Zaniolepis latipinnis

出典・脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag Fishes of the World Fourth Edition』 pp.330-332
  2. ^ a b c d e f g h i j Hexagrammidae”. FishBase. 2012年1月8日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 『日本の海水魚』 pp.223-225

参考文献

外部リンク


アイナメ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 07:45 UTC 版)

カサゴ目」の記事における「アイナメ科」の解説

アイナメ科 Hexagrammidae は5亜科5属12種を含み、すべて北部太平洋分布する多く種類沿岸暮らし、卵を保護する習性がある。 頭部トゲ突起はないが、眼の上に皮弁がある。鼻孔は1対のみ発達し、もう1対は欠くかごく小さい。背鰭1つで、切れ込みをもつことがある側線は1本あるいは5本。浮き袋もたないアイナメ亜科 Hexagramminae アイナメ・クジメなど1属6種。頭部覆われる背鰭切れ込みはほぼ中央部にあり、棘条部と軟条部の境界となっている。臀鰭棘条はなく、尾鰭丸み帯びる。側線は1あるいは5本。アイナメ属 Hexagrammos ホッケ亜科 Pleurogramminae ホッケキタノホッケのみ1属2種構成されいずれも重要な漁業対象種である。遊泳性比較強く若魚広範囲回遊を行う。頭部部分的で、背鰭切れ込みはない。臀鰭棘条をもたず、尾鰭二又分かれる頭蓋骨発達した突起をもつ。側線は5本。ホッケ属 Pleurogrammus Ophiodontinae 亜科 1属1種で、アラスカからメキシコ北部にかけて分布する食用種リングコッド(O. elongatus)のみが所属する体長1.5mに達す大型種で、他の魚類や甲殻類イカなどを貪欲に捕食する背鰭には深い切れ込みがあり、棘条部と軟条部を分かつ臀鰭には3本未分鰭条がある。口が大きく、牙のような歯をもつ。頭部はなく、側線は1本。キンムツ属 Ophiodon Oxylebiinae 亜科 1属1種背鰭切れ込みは浅い。臀鰭には3本発達した棘条をもち、2本目が最も長い頭部覆われ側線は1本。Oxylebius 属 Zaniolepidinae 亜科 1属2種背鰭切れ込み後方にあり、深い。背鰭棘条先頭3本発達し、特に2本目著しく長い側線は1本。Zaniolepis 属

※この「アイナメ科」の解説は、「カサゴ目」の解説の一部です。
「アイナメ科」を含む「カサゴ目」の記事については、「カサゴ目」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「アイナメ科」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「アイナメ科」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「アイナメ科」の関連用語


2
100% |||||

3
100% |||||

4
100% |||||


6
100% |||||

7
100% |||||

8
100% |||||

9
100% |||||

10
100% |||||

アイナメ科のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



アイナメ科のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのアイナメ科 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのカサゴ目 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS