どうだん‐つつじ【▽灯▽台躑=躅/満=天=星】
どうだんつつじ (灯台躑躅)





●わが国の本州、伊豆半島以西から四国・九州に分布しています。おもに蛇紋岩地帯の山地に生え、高さは1~2メートルになります。葉は長卵形から広披針形、狭倒卵形などと変異が大きく、縁には微細な鋸歯があります。4月から5月ごろ、新葉とともに、枝先に小さなベル形の白色の花を咲かせます。名前は、枝ぶりが灯台(台座の上に一本の竿を立て、その上に油皿をのせたもの)の脚に似ていることから。「満天星」と表記されることもあります。葉の幅が広いものは「ヒロハドウダンツツジ(var. japonicus)」と呼ばれ、徳島県や高知県に分布します。
●ツツジ科ドウダンツツジ属の落葉低木で、学名は Enkianthusperulatus。英名は Japanese enkianthus。
ドウダンツツジ
(どうだんつつじ から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/23 14:50 UTC 版)
ドウダンツツジ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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ドウダンツツジ
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分類(APG分類体系) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Enkianthus perulatus (Miq.) C.K.Schneid. (1911)[1] |
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シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ドウダンツツジ |
ドウダンツツジ(満天星、灯台躑躅[3][4][5][6]、学名: Enkianthus perulatus)は、ツツジ科ドウダンツツジ属の落葉低木。庭木や公園樹にされる。
名称
和名ドウダンツツジは、「トウダイツツジ(灯台躑躅)」が転訛したものである[7][8][9]。このトウダイ(灯台)は鼎のような三本脚で油皿を支える結び灯台を意味し[8][9][10][11]、壺状の花が下垂する様子を喩えたとも[8][9]、枝分かれしている様子をその脚部に喩えたともされる[10][11]。略して「ドウダン」と言われるほか[7][12]、フデノキの別名がある[7]。
漢字表記は「満天星」である[3][13][12][7][14][注釈 1]。これは花を満天に喩えたものであり、和製の表記であるとされる[8]。一方、漢名「満天星」は、近世において『群芳譜』にキクの品種の名として見える[8]。現代中国では、カスミソウ(糸石竹)の別称とされる[8][9]。また、「満天星」は中国医学ではミズゴケを指す[8]。日本では、「満天星」という漢名はハクチョウゲにも充てられる[9][15][注釈 2]。
形態
落葉広葉樹。低木で、高さ1–3 m (メートル)[5]。株立ちして枝を出し、若木の樹皮は灰褐色をしていて、成木になると表面が不規則にはがれてまだら模様になる[10]。本種を含むドウダンツツジ類は、枝先に5–7枚前後の葉が集まってつくことが多い[4]。短枝には葉が束生し、長枝では互生する[5]。
葉は、菱形に近い卵形で先がやや尖り[16]、最大幅は先端寄りにある[5]。大きさは通常約2–4 cm(センチメートル)[5]、大きなものは、約5 cm になる。葉柄長は3–12 mm(ミリメートル)葉身には少し毛がある[16]。葉の背軸面には、基部の主脈沿いに軟毛が生え、その量には変異が見られる[5]。葉が幅広いものは品種ヒロハドウダンツツジ f. japonicus として区別される[5]。これは植栽個体にはなく自生品に見られるが、中間形も多い[5]。
花期は、葉が出てから約1週間後(4月上旬から5月中旬頃、地方によって違う)。花序は散形花序である[5]。花がつく枝は上を向いていて、1か所から数本花が出て下向きに咲く[17]。花は、白い壺形花冠[18][5]。5ミリメートル (mm) ほどの大きさ。
冬芽は黄褐色から赤褐色で、長枝と短枝の先につく頂芽は卵形[10]。頂芽の最も外側にある芽鱗は、頂芽の長さの半分以下になるのも特徴である[10]。葉痕は三角形で[19][20]、稜が下に伸びている[10]。
近縁種との区別
本種を含むドウダンツツジ属は、枝が直線的で規則正しく分枝し、枝先に葉が集まってつくことや、葉が鋸歯縁で最大幅が先端寄りであること、赤色から橙色の紅葉を示すこと、壺形花冠から鐘形花冠であることなどが共通する[5]。本種は壺形花冠で、散形花序であるのが特徴的で、果実が上向きにつくことが明瞭な識別点である[5]。
アブラツツジ E. subsessilis は本種によく似て、花も白色の壺形であるが、総状花序であり、葉柄や背軸面には褐色の縮れた毛が生える[21]。
ベニドウダン E. cernuus f. rubens およびシロドウダン E. cernuus f. cernuus は本種に比べ、鋸歯が顕著で葉柄が短めであることで区別できる[22]。また花は鐘形で、ベニドウダンは花色が赤色である[22]。
また、サラサドウダン E. campanulatus は本種より葉が明らかに大きく、鐘形花冠の先端が淡紅色である[16]。カイナンサラサドウダン E. sikokianus はそれに似るが、葉の最大幅が中央寄りで、花序は長くなる[22]。
分布と生態

日本の本州(関東地方・伊豆半島以西)、四国、九州の低地に分布する[4][10]。本州では東端は千葉県であり、東海地方から九州にかけて、暖温帯に局地的にみられる[5]。
温暖な岩山に生えるが、自生地は少なく、野生の個体は稀である[4][10]。自生するものは、蛇紋岩など超塩基性岩質のところに多い[16]。
紅葉は寒冷な地で10月中旬から11月上旬頃、温暖な地で11月中旬から12月中旬頃であり、ツツジ科の中でもひときわ美しく鮮やかな赤色に紅葉する[4][16][5]。日当たりが悪いところでは、橙色から黄色に色づき、グラデーションになる[4]。
人間との関わり
利用
観賞用に栽培される[9]。かなり強く剪定してもよく耐え、樹形を自由に調整できるため古くから生垣用の植物として好まれ庭に植えられてきた[16]。また庭園、公園、ビル街の植え込みなどに植えられることも多い[16]。庭や公園の植え込みとしてはごく普通に植えられ[4]、属内では低地の都市部で最もよく植栽される[5]。寒冷地でも耐えるが、関東以西の温暖な地に多く植えられる。
木本であるが樹高が低く場所を取らないため近年でも庭木としての人気が高く現在では近縁種のサラサドウダンなどとともに街の花店やホームセンターの園芸コーナーなどでも複数の品種が流通し容易く苗を入手できる。
迷信
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本種は古来より有毒であると言われ続けてきた。これは比較的近年まで続いていたことであり1980年代以前の植物図鑑などには本種を有毒とする表示のある物も多数存在した。しかし、実際の中毒事例は人は元より家畜やペットなどの動物を含めても全く報告事例が無く、さらに分子科学的解析が行われても該当するような物質が全く見当たらず現在では単なる迷信であり本種は無毒であると結論付けられている。しかしツツジ科の植物には実際に有毒な植物も多く存在する。
文化
1991年2月に発見された小惑星6786には本種にちなみ「満天星(ドウダンツツジ)」の名が与えられている。
脚注
注釈
出典
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Enkianthus perulatus (Miq.) C.K.Schneid. ドウダンツツジ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年1月2日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Enkianthus taiwanianus S.S.Ying ドウダンツツジ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年1月2日閲覧。
- ^ a b 三省堂 1995, p. 15.
- ^ a b c d e f g h 林 2008, p. 74.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 林 2020, p. 634.
- ^ 日外アソシエーツ 2015, p. 37.
- ^ a b c d e 新村 2018, p. 1980.
- ^ a b c d e f g h 加納 2008, p. 397.
- ^ a b c d e f 加納 2007, p. 126.
- ^ a b c d e f g h 鈴木ほか 2014, p. 81.
- ^ a b 辻井 2006, p. 154.
- ^ a b c d 新潮社 2007, p. 1328.
- ^ 学研 2000, p. 24.
- ^ a b 加納 2008, p. 396.
- ^ a b 三省堂 1995, p. 17.
- ^ a b c d e f g 辻井 2006, p. 156.
- ^ 辻井 2006, pp. 154, 156.
- ^ 清水 2001, p. 38.
- ^ 馬場 1981, p. 258.
- ^ 平野 1989, p. 41.
- ^ 林 2020, p. 637.
- ^ a b c 林 2020, p. 635.
参考文献
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- 加納喜光『動植物の漢字がわかる本』山海堂、2007年1月10日。 ISBN 9784381022004。
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- 三省堂編修所 編『何でも読める難読漢字辞典』三省堂、1995年9月10日。 ISBN 4385135916。
- 清水建美『図説 植物用語事典』梅林正芳(画)、亘理俊次(写真)、八坂書房、2001年7月30日。 ISBN 4-89694-479-8。
- 新潮社 編『新潮日本語漢字辞典』新潮社、2007年9月25日。 ISBN 978-4-10-730215-1。
- 新村出 編『広辞苑 第六版』(第6版)岩波書店、2018年1月12日。 ISBN 978-4000801317。
- 鈴木庸夫、高橋冬、安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日。 ISBN 978-4-416-61438-9。
- 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、154–156頁。 ISBN 4-12-101834-6。
- 日外アソシエーツ 編『難読/誤読 植物名漢字よみかた辞典』2015年2月。 ISBN 978-4-8169-2522-1。
- 馬場多久男『冬の落葉樹図鑑』亀山章(監修)、信濃毎日新聞社、1981年1月20日、284頁 。
- 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日。 ISBN 978-4-8299-0187-8。
- 林将之『樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類』(増補改訂)文一総合出版〈山溪ハンディ図鑑14〉、2020年1月5日。 ISBN 978-4-635-07044-7。
- 平野弘二『検索入門 冬の樹木』村田源(監修)、保育社、1989年11月30日。 ISBN 4-5-86-31035-9。
外部リンク
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