たたら場とエボシ御前
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 02:50 UTC 版)
エボシのたたら場の構成員に対する態度は大きく2つに分かれる。戦争で人狩りにあって売られた女たちと、社会から差別を受けてきた癩者(ハンセン病患者)とみられる病者に対しては温かい手を差し伸べているのに対し、病者以外の男たちに対しては乙事主やその配下の猪神たちに対するおとりとして利用されて猪神ともども吹き飛ばされて命を失うことを承知の上でシシ神退治に動員し、その最後の様子を崖の上から眺めているなど、極めて冷淡な態度を取っている。 特に崖の下の牛飼いなど男衆には戦闘前にわざわざ防護柵を張り巡らせて敵の猪神の攻撃を防ごうとする姿勢は見受けられるが、実際は崖の斜面を登って来る敵の猪神を、唐傘連が震天雷を崖の上から落とし、崖に向かって来る猪神を、崖の下に地雷火を地中に埋めて吹き飛ばし、破片や猪神の死骸が落下して甚大な被害が出た。 だが、エボシは女たちに対しても重大な事実を隠している。それは、売られた鉄が武器に加工されて侍の手に渡り、戦争に用いられ、その結果、歴史学者の藤木久志が「奴隷狩り」と称した現象が引き起こされることである。つまり、女たちはエボシが作らせた鉄で作られた武器によって、奴隷として売られてエボシの下にやってきたのである。当然、エボシもこうした矛盾がいつかたたら場を崩壊させかねないことを認識していた。歴史学者の市沢哲はエボシがアシタカに告げた「私の秘密」の正体を社会的弱者である病者たちに新しい石火矢を作らせて同じ弱者である女たちに持たせて侍の鎧を打ち抜かせていくことで侍の力を奪い、鉄が侍のために使われるシステムを打破することで矛盾を解消し、更に労働によって得られた果実の分配のあり方を変えていくという「国崩し」の実現を図ることとして捉え、森(=シシ神)との戦いはこの目的の中においては局所的なことに過ぎないとする。 その一方で、エボシの出現はサンの位置づけを根本的に変えた。元々サンは山の神 (この場合はモロの君) へ生贄として捧げられたものである。しかしエボシが現れ人々が山の神に対抗しうる力を持ったことで、人々は神の力の前にただひれ伏す存在ではなくなった。それによりサンは宙ぶらりんの立場に追い込まれ、人でも神でもない、「もののけ」として生きざるをえなくなった。 女尊男卑する文化と建物構造も女重視で男軽視の構造になっている。 牛飼いたち男衆はタタラ場の中でも下層に住居も仕事場も全ての生活の場を構えており、敵と戦闘になった際は切り捨てて大屋根を含む上層だけを守り抜く構造になっている (しかし劇中では、アサノ軍に男たちがシシ神退治で留守中を狙われたので、トキたち女衆の防衛隊は最初から下層の防衛を捨てて上層の防衛に専念している)
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