『自然哲学の諸原理』における、万有引力という考え方の公表
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ニュートンは、1679年にフックから手紙を送られた当時、光学の研究に忙しく、フックがその5年前に惑星の運動を説明するための仮説を学会に提出していたことも知らなかった。この手紙を見たニュートンは、13年ほど前にウールソープ(ニュートンの家)で試していた地上の重力が月にまで及んでいると想定した計算をやり直すことにした。それは、次のようなものであった。 .mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}まず、月に対して何の力も働かなければ、月はガリレオの慣性の考え方によれば直線方向にAからBまで1分間に37.4km進む、と計算される。(月を円軌道とし、地球一周に27日7時間43分かかることから算出)。だが、月はBではなくB´の位置にいる。つまり1分間にBB´だけ「落下する」と考えることができる。その長さは直角三角形AOBにピタゴラスの定理を用い計算でき、毎分4.9mの落下、となる。毎秒ならば、その3600分の1、4.9/3600となる。ところで地上の落下は、ガリレイが見出した法則により、毎秒4.9mである。月の位置で働く引力は、地球上の3600分の1まで弱まっている、ということになる。月までの距離は地球半径の60倍だから、結局、この引力というのは距離の2乗に反比例しているということになる(逆2乗の法則)。 1684年1月のある水曜日、ロンドンのコーヒーハウスにあつまったフック、天文学者エドモンド・ハレー、王立学会会長兼建築家クリストファー・レンは、残る問題となった、逆2乗の引力をもとにして、いかにケプラーの第1法則と第2法則を導くことができるかを話題にした。同年8月、ニュートンを大学で訪問したハレーは、ニュートンがすでに独自にこの問題を解決していたことを知り、11月に、それを出版することをすすめ、『自然哲学の数学的諸原理』(プリンキピア)の核心部分が出来てゆくことになった。しかし、フックは引力については自分がニュートンに教えたのだとし、二人の間で対立が生じることになった。その後、ハリーの資金面での援助やフックとの先取権をめぐるいざこざの仲裁などといった支援もあり、ニュートンは『自然哲学の数学的諸原理』の刊行にこぎつけた。 『自然哲学の数学的諸原理』は、1687年に刊行された。同書は三篇で構成されており、第三篇の「世界体系について」で惑星の運動が主として扱われている。例えば、「月は地球に向かって重力で引かれる」という、ニュートンがウールスソープ時代に思いついた命題は、第三篇の命題4において提示されており、逆2乗の引力が木星とその衛星、5つの惑星と太陽の間でも働くことを、ケプラーの第2法則と第3法則からこの引力を逆に導き出しつつ主張した。さらに命題7で重力は物の量(質量)に比例することを述べ、第三篇の命題8において、この宇宙ではどこでも物質には互いに物質の量の積に比例する逆二乗の引力が働いている、すなわち万有引力の法則を主張した。
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