『商品による商品の生産』
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「ピエロ・スラッファ」の記事における「『商品による商品の生産』」の解説
主著『商品による商品の生産 The Production of Commodities by Means of Commodities, 1960年』はもともと、リカードなどに発展させられた古典派経済学の価値理論を完全にする試みであった。主流であった新古典学派における一般均衡理論の価値と発展理論の欠点を明らかにし、その代替理論を提出した。アルフレッド・マーシャルなどが課題とした「完全競争という条件の下での収益逓増という現象」を批判したスラッファは、この30年の沈黙を破って発表した論文によって収穫不変を前提にした(ただし,序文冒頭においてスラッファは,収穫不変の仮定は読者にとっての一時仮説としてよいと示唆するものの,実際にはそのような仮説は立てられていないと明言している)。 この理論の話題は①価格体系において利潤率、実質賃金のトレードオフと利潤率決定の理論的開放性を明らかにするとともに、②技術の選択において利潤率(利子率)の低下と資本集約的技術の行儀のよい選択を当然視する新古典派のマクロ生産関数の根本矛盾を決定付ける〈ケンブリッジ資本論争〉を引き起こす。③マルクス経済理論において、価値と価格の乖離、搾取の存在証明の現代の基本モデルを提供した。 サミュエルソン、ソローはポストケインジアンのJ.ロビンソン、スラッファの愛弟子パシネッティにマクロ生産関数の理論には一般性がないことを認める結果となる。しかし、この論争は一般均衡理論を反駁できたわけではなく、マクロ経済学でも、行儀の悪い生産関数は無視できると決め付け、新古典派成長理論は生き残り、この論争を不毛な結果にしている。しかし、スラッファの真の意図は一般均衡理論による需給均衡による価格決定を否定し、生産条件による価格決定を打ち出した革新性にある。その理論の含意は50年近く経て未だに山積しているが、一国経済に関してはパシネッティにより、ほぼ完成した理論が提出されており、国際経済についても塩沢由典による新理論がある。
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