論理説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 21:03 UTC 版)
論理説は、最初に、ヴェルナー・ゾンバルトとコンラッド・シュミットにより提起された。『資本論』第III巻の発表後であったから、かれらは「価値の概念的位相」を問題とし、「価値」概念は思想的・論理的にな事実であるとした。ゾンバルトは、「価値」は純粋な仮説であるとし、シュミットはそれは仮説ではあるが「論理的に必要な仮説」であると主張した。シュミットは、エンゲルスと親しい関係にあったが、エンゲルスは、この主張を却下した。 20世紀のマルクス経済学者の大部分は、論理説を取り、なんらかの意味でより基本的な概念である価値から生産価格の成立を説明しようとした。その根拠として多くの変種が現れたが、以下のものなどがある。 量的転化説 マルクスが『資本論』第III巻で説いたもので、総価値は総生産価格に等しく、総剰余価値は利潤の総額に等しいという総計一致の二命題に依拠する。 総計一致の命題は、転形計算の仕方により、一命題はつねに成立するようにできる。そのとき、なにを一致させるかについて主張が分かれた。また両者ともに成立ないならば、総計一致命題は棄却されるべきであるという意見もある。。 反復計算論 マルクスの転化計算を一度だけに止めず、多数回繰り返すと、生産価格に収束することに依拠する。置塩信雄、A.シャイク 単純な価値形成過程説 「単純な価値形成過程」とは、「資本によって支払われた労働力の価値が新たな等価物によって補填されるま転までしか継続しない」(『資本論』第I巻国民文庫版訳pp.340-41)価値形成、すなわち労働者が必要労働時間のみ働く経済をいう。このような経済においては、価値法則が厳密に成立することを主張する。宇野弘蔵が「労働価値説の論証」は「資本の生産過程において行なわれなければならない」として、考えたものはこの事態であると考えられる。 なお、単純単純な価値形成過程のみからなる経済は剰余のない生産体系となる。この体系は、P.スラッファの『商品による商品の生産』第1章「生存のための生産」(あるいは自己補填)と基本的に同型と考えられる。 転化不要説 置塩信雄は、(上記反復計算論などを唱えたことがあるが)総計一致二命題が維持しがたいことを認めて、価値から生産価格への転形を意義のないこととし、各産業が正の利潤率をもつとき、労働価値で計算すれば搾取率が正となることを示す(置塩によるマルクスの基本定理)だけで、転形にこだわる必要はないとした。 標準体系転化説 高須賀義博が唱えた。経済がフォンノイマン成長径路あるいはスラッファの標準体系にあると考えると、総計一致の二命題が成立する。マルクスは、暗にこうした経済での転化を考えていたと主張した。
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