古典派経済学の現代的展開
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「古典派経済学」の記事における「古典派経済学の現代的展開」の解説
リカードの理論は、新古典派の創始者の一人ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズによっても厳しく批判された。これに対し、アルフレッド・マーシャルはリカード・ミルの体系に対しより融和的な立場を維持したが、古典派経済学はマーシャル経済学によって乗り越えられたと一般に評価されている。 これに対し、20世紀に入り、ピエロ・スラッファが出た。スラッファは、マーシャル経済学の基礎に疑問を出すとともに、『リカード全集』の編集を進めてリカード再評価の機運を作り、『商品による商品の生産』においてリカードを20世紀に復活させる契機をもたらした。 スラッファの『商品による商品の生産』(原著1960年)は、限界原理に基づく新古典派の経済学とは異なる価格理論が可能であることを示し、後にスラッフィアンとか、ネオ・リカーディアンと呼ばれる潮流を作りだした。日本では現代古典派と自称する場合もある。スラツフィアンの代表的存在は、イアン・スティードマンである。スティードマンは、マルクス経済学の価値論を批判するとともに、HOS型貿易理論の批判を展開した。 スティードマン以外にも、スラッファに示唆を受けた一群の経済学者がおり、ポスト・ケインジアンの3大潮流の一つを形成している。ルイジ・パシネッティ、ビエランジェロ・ガレニャーニ、ハインツ・クルツ(Heiz Kurz)、スタンレー・メトカーフ(Stanley Metcalfe)、ネリ・サルバドーリ(Neri Salvadori)などがいる。 日本では、菱山泉が早くからスラッファを紹介した。菱山にとって、スラッファはむしろフランソワ・ケネーの経済学を発展させるものであった。塩沢由典は、スラッファの価格理論に、オクスフォード経済調査(1930年代後半)のフルコスト原理を接続することにより、古典派価値論を21世紀の理論として展開することを提唱している。塩沢は、またリカード貿易理論を発展させることにより、新しい国際価値論が構成できたと主張している。国際価値論の不在は、古典派価値論の弱点のひとつであった。塩沢の達成は古典派価値論が新古典派価値論に対抗しうる理論として再生したことを意味する。
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