『別録』と『七略』
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成帝の書籍収集と同じ政策の一つとして、劉向に命じて書物の校訂整理が行われた。この作業は劉向が死去しても完成せず、哀帝の命を受けた子の劉歆に引き継がれ、紀元前後の頃に完成したと考えられる。劉氏父子以外にも、任宏・尹咸・李柱国ら多くの学者が協力した。 劉向がこの時の校書の成果を著したものが『別録』である。書物の篇目を序列し、主旨を要約し、文章にまとめたものを「序録」と呼ぶが、『別録』はこの序録だけを取り出し、編集しなおしたものである。『別録』の全体は現在は散佚したが、劉向の署名を有する序録として『荀子』『戦国策』『晏子』がある。例えば『荀子』の序録では、まず本の題名・巻数・篇数を記し、次に一書全体の篇名を列挙し、最後に文章で整理の状況・方法、荀子の伝記、本が書かれた経緯、そして書物の評価が述べられている。 そして劉向の作業を引き継ぎ、劉歆がその書目を示したものが『七略』である。『七略』は、図書を大きく六種の「略」に分類し、これに解説文だけをまとめたセクションである「輯略」が加えられて、「七略(七つの略)」となっている。『七略』も現在は散佚したが、『漢書』芸文志は『七略』を抜粋したものであることが知られている。 劉向・劉歆の校書と目録編纂の水準は非常に高く、この事業は目録学の出発点であると同時に到達点であるとも考えられてきた。多くの目録学の概説書や研究書においては、彼らの事業を高く評価し、以後の目録家に対する評価は総じて低い。劉向・劉歆の事業の特徴は、書籍を精密に校正した上で、書籍の配列法・分類法をその由来(特に古代の事実、古代国家の官職との関係)から考察したことにある。 彼らの目録の体裁は、『詩経』や『書経』の序に起源をもつ。これらはもともと篇目を列挙するためのものであった。また、劉向以前で同じく自序や小序を含む例として司馬遷『史記』や揚雄『法言』がある。
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