『一寸法師』以降の明智探偵
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「明智小五郎」の記事における「『一寸法師』以降の明智探偵」の解説
明智のこの姿は、翌年大正15年発表の『一寸法師』以後、より一層洗練されたものとなる。ここでは明智は御茶ノ水にある「開化アパート」(架空の建物。モデルは大正14年竣工の「御茶ノ水文化アパート」だとされている)2階の表3室を事務所とし、上海で事件を解決してきたあと暇を持て余す有名な素人探偵として登場。派手な浴衣や木綿の着物姿から、上海で誂えた黒の支那服や、背広を着こなして、貧窮下宿時代からの友人小林紋三から「いくぶん、見栄坊になった」と称される洋装の紳士となっている。 こちらの明智も「モジャモジャの頭」、「にこにことした朗らかな笑顔」、「伯龍そっくりの顔」、「飄々とした行動」、「本に埋もれた生活」は変わらないが、葉巻タバコの「フィガロ」を好み、コーヒーを「カフィー」と呼んで飲むなど、西洋通またはキザなキャラクターとなり、その卓越した推理力から、警察関係者からは「奇人」と呼ばれる存在となっている。 『蜘蛛男』での明智は「『一寸法師』事件から3年ぶりの帰国」となっており、インド帰りで登場したその姿は「鼻の高い日に焼けた顔」、「白い詰襟の上下にヘルメット帽」と、「まるで植民地の英国紳士か、欧州の印度紳士」と形容されるものとなっている。続く『魔術師』では、明智の年齢は「30代後半」となっている。 『黄金仮面』では、明智は「『蜘蛛男』事件の際はホテル住まいをしていたが、このあと御茶ノ水の開化アパートの2階2室を借り、それぞれ事務所と寝室に使っている」と説明されている。この寝室には、明智の変装用の小道具が収納されている。 この『黄金仮面』など、連載当時の挿絵では、明智は口髭を生やした姿で描かれたものがあった。また、文中では「モジャモジャ頭」と記述されているにもかかわらず、なぜかどの挿絵でも、これに反して整髪した頭で描かれていた。 明智の探偵方法は、証拠の科学的な検証は「好きでない」として専門家に任せ、論理的演繹によって犯行や犯人をあぶり出すという手法である。乱歩は時代時代に明智像を合わせていったため、やがて明智探偵は部下や自動車を使って悪漢を追ったり、「石礫で遠方の標的を正確に打ち飛ばす」、「犯人が気づかないうちにピストルから弾丸を抜いてしまう」といった手品まがいの芸当も見せるなど、現実感希薄な天才・英雄タイプの「行動型探偵」に変身していった。また、探偵手法として「変装」を得意とするようにもなり、この変装は友人の波越警部らにも見破れない本格的なものである。 謎と見ると放っておかれず、仕事抜きで事件に関わっていくことも多い。また国家的事件の解決のために、朝鮮やインドなど海外に出張することも多い。「人間豹」などのおよそ人間とかけ離れた半人半獣とも戦った。この明智探偵は子供向けの「少年探偵団シリーズ」と並行して、戦後も引き続き乱歩の探偵小説で活躍している。
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