「王者」の「編み合わせ作業」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/11 06:07 UTC 版)
「政治家 (対話篇)」の記事における「「王者」の「編み合わせ作業」」の解説
続いて客人は、「王者/政治家の知識/技術」では、そうして選抜された「優良」な者たち、すなわち 生来の素質に恵まれ、うまく教育を受ければ「高尚な心」を持つように陶冶され、「王者/政治家」が行う「編み合わせ(相互混合行政)活動」の対象となり得る者たち の中から、 「勇気」の素質が勝った者たちを、堅く引き締まった「縦糸」として、 「慎重」の素質が勝った者たちを、厚みがあって柔らかな「横糸」として、 分けつつ、(本来は相互に反対方向へ進もうとし、決して混じり合わない)両者を、「魂/肉体」の両面から、すなわち 「美/醜」「正/不正」「善/悪」を教授し、「真理」に根ざした「真なる思わく/思いなし(ドクサ)」を、確信/信念として彼らの「魂」の中に生じさせ、その「神々しい絆」を以て、両者を堅く合体させ、「勇気」の気質が強い魂は、こうした「神々しい真理」を深く理解し堅く所持すれば、教化された温順なものとなり、国家における「正義の顕現活動」に参与したいと願うようになるが、そうでないと「正道」を逸脱し、野獣同然の狂暴性を目指す「邪道」へ堕落していくことになるし、 「慎重」の気質が強い魂も、先の「信念」をその中に宿すと、「国家公共体」の中で生活する者として真の意味で思慮深くなり、知性を備えたものになるが、そうでないと「単純愚直なお人好し」に堕してしまう。 さらに、国家による婚姻管理によって、(一般の「近親気質選好」的な選択法とは反対に)「勇気」「慎重」それぞれの家系の「血統」が偏り過ぎる/濃くなり過ぎるのを防止/抑止する。「勇気」の気質が強い「血統」だけで幾世代も交配が行われると、「狂暴化」していくし、 「慎重」の気質が強い「血統」だけで幾世代も交配が行われると、「不活発」になっていき、やがて「不具不能者」となる。 ことによって、「魂/肉体」の両面から、「堅く一つにまとまった、滑らかで細密な織り物」を織り上げた上で、 国家の各種の権力機関を、常に両者が分かち合うものとして委託する。すなわち、或る国家が「単独支配者」を必要とする事態に至っている場合には、「両方の性格を一身に兼備している者」を選んで、国家統括者の地位に登用し、「数名の者から成る集団指導評議会」を必要とする国家においては、両方の性格の集団の中から代表者を選んで巧みに混合し、「評議会」を構成する。(こうした記述から、本篇で述べられている「王者/政治家」なるものが、単なる「一国の王者/政治家」を指しているのではなく、諸国の上位に「諸王の王」として君臨する、「神」のごとく超越的/特権的な「指導者/助言者」を指していることが、改めて確認される。またこれは同時に、『第七書簡』『第八書簡』に見られるプラトン自身のような、あるいは『法律』におけるアテナイからの客人のような、「哲学者的な国制/国政助言者」を暗喩しているとも解することができる。)「勇気」を身上にしているような人々の道徳性格は、「進取敢行」の活力に優れるが、「公正/克己」が劣るし、 「慎重」を身上にしているような人々の道徳性格は、極度に用心深く、「公正」で「旧習墨守」な反面、「俊敏旺盛」の気概や、「進取敢行」の決意力を欠いているから。 ことになると指摘する。ソクラテスも同意する。 そして客人は、「王者/政治家の知識/技術」がこのように、 優良な両性格の人間たちを統合し、「最も規模壮大かつ優秀な織り物」を完成させ、その「織り物」の中に、自由人・奴隷も含む(国家を構成する)「残余の全員」も包み込み、一致団結させ、「幸福な国家」が享受するにふさわしい「最大限の恵み」をいかなる分野・点においても授けながら、国家の支配・統括を行う時にはじめて、当の「織り物」の「完全な姿」が見られる。 と指摘する。 ソクラテスは「王者/政治家」の説明が十分に述べ尽くされたことを理解し、客人に(「ソフィスト」の説明に続いて二度目の)お礼を述べる。
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