「アートワールド」とアートの定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 16:24 UTC 版)
「アーサー・ダントー」の記事における「「アートワールド」とアートの定義」の解説
ダントーは、アートを制度的に定義づける極めて重要な著述を発表し、新しい現象としての20世紀のアートが突きつける問題に対して答えようと試みた。「アート」という言葉の定義については常に議論が絶えず、多くの著作・論文が「アートとは何か?」という問いに解答を与えようとしてきた。定義は2つのカテゴリーに分けることができる。1つは慣習的な定義、もう1つは非慣習的な定義である。非慣習的な定義は、「美的なもの」という概念を内在的性質と捉え、アートという現象を説明しようとする。慣習的な定義は、美的なものを形式的・表出的な性質と同一視してアートの本質を定義しようとはしない。その代わりに、「アート」は基本的に、制度的・歴史的なものであるという意味で、社会学的なカテゴリーであると主張するのである。アートの定義問題について、ダントーは慣習的なアプローチをとっている。彼が主張する「アートの制度的定義」においては、形式的定義は重要視されず、アートに関わるあらゆるもの、例えば美術大学、美術館、アーティストなど全てが考察される。ダントーはこのテーマについて最近の論文で扱っており、著作『ありふれたものの変容』で詳細な議論を展開している。 1964年に「アートワールド(The Artworld)」という題名の論文を発表した。この論文で、ダントーは、理論的な雰囲気が作品の見方を変えてしまうことを問題にした。ダントーは「アートワールド」という概念を生み出した。これは、文化的コンテクストもしくは「アートに関する言説を取り巻く雰囲気」を指す言葉である。論文は最初、1964年の『Journal of Philosophy』誌に掲載され、その後、多くの発行物に再録されることになった。この論文は哲学的美学に多大なる影響を与えた。哲学教授のスティーブン・デイヴィッド・ロスによると、「とりわけジョージ・ディッキーの考案したアートの制度理論」への影響が見られるという。ディッキーはアート作品を「ある特定の社会制度(アートワールド)を代表する任意の人もしくは人々が鑑賞する候補、という地位を与えられた人工物」(43頁)だと定義する。 『スタンフォード哲学百科事典』はダントーの定義を次のようにまとめている。 ある対象がアートであるための必要十分条件とは、 1つのテーマを持つ ある態度・観点を投影している(言い換えれば、「スタイルがある」) レトリック的(たいていは隠喩的)な省略がなされており、それにより鑑賞者は欠如した部分を埋めようと促される 当該の作品とそれについての解釈が美術史的コンテクストを要求する。この条件が、この定義を「制度的」なものにする要素である。 しかし、この定義に対しては、レトリックを多用した美術評論もアートになってしまうこと、ある文脈を美術史的とするものは何なのかについて、まとまった説明がなされていないのに、それを要求していること、そして、音楽にはこの定義があてはまらない、という批判があるとする。
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