《山葵》の正しい読み方
「山葵」の正しい読み方
「山葵」は「わさび」と読む。山は「やま」、葵は「あおい」と訓読みで読むことができる。しかし、「山葵」を「やまあおい」とは読まない。「山葵」と書いて「わさび」と読むのは、熟字訓といわれる読み方である。熟字訓とは、二字以上の漢字を合わせてできた言葉である熟字を訓読みにすることである。熟字訓は熟字をひとまとまりの言葉として訓読みにしたものであるため、「山」を「わ」、「葵」を「さび」と分解して読むことはできない。
「山葵」の意味解説
「山葵」は日本原産のアブラナ科の多年生根菜であり、渓流のほとりに自生する。自生することは珍しく、清流沿いや畑で栽培がされている。地下茎は肥厚した円柱状をしており、葉とともに強い辛み成分をもつ。根出葉は心臓形をしており、春には白い四弁の花を咲かせる。山葵には捨てる部分がなく、葉や根は香辛料やわさび漬けの材料として使用する。刺身や蕎麦の薬味とされる。西洋わさびと区別して本わさびと呼ばれることもある。
山葵は非常に繊細な植物で、冷たく澄んだ水が豊富にないと育たない。水が濁っていると根に酸素が足りなくなって育成障害が起こってしまう。
なぜ「山葵」と読むのか・理由
918年の薬草辞典である「本草和名」によれば、深山に生息し、葉の形が銭葵の葉に似ているため山葵という和名が生まれたようである。しかし、なぜ「わさび」と呼ばれるようになったのかについては諸説があり、はっきりとしていない。わさびの特徴である鼻につんとくる辛さから「わさび」と呼ばれるようになったという説が多いようである。まず、「悪障疼(わるさわりひびく)」が短くなったという説がある。また、わさびの辛さが鼻を走ることから、「走る」の古語「わしる」が「わさ」に変化し、実を表す「び」と合わさって「わさび」と読むようになったという説もある。
わさびは沢に生える植物であり、わさびの葉が葵の葉に似ていることが語源であるともいわれている。沢葵(さわあおい)が短くなって「さわひ」となり、「わさび」に変化したという説である。
「山葵」の類語・用例・例文
「山葵」の類語としては「薬味」「香辛料」「唐辛子」「からし」などが挙げられる。どれも料理に添えて食事を美味しくするものであるという意味で同種の言葉であるが、山葵と意味が同じ言葉はない。山葵は山葵醤油、山葵漬、山葵おろしのように用いられることもある。
・山葵醤油で刺身を食べる。
・彼らはまた朝早くから四里も五里も山の中の山葵沢へ出掛けて行く。…山葵や椎茸にはどんな水や空気や光線が必要か彼らよりよく知っているものはないのだ。(梶井基次郎「温泉」)
・何でも山葵おろしで大根かなにかをごそごそ擦っているに違ない。自分は確にそうだと思った。(夏目漱石「変な音」)
・山葵が利いたものか…(夏目漱石「吾輩は猫である」)
「山葵」の英語用例・例文
寿司や刺身が世界で食されるようになってきて、「wasabi 」は日本語と同じ言い方でも通じる英語となっている。horseradishは西洋わさびのことであり、日本のわさびは英語で「Japanese horseradish」 ともいう。・There is a lot of wasabi in this.(ずいぶんわさびが利いているねえ)
・Please don’t put wasabi into his sushi.(彼の分にはわさびを抜いてください)
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