二律背反
二律背反の意味とは
二律背反は、哲学の用語で、ふたつの矛盾する(併存し得ない)命題がどちらも成立し得る状況のことである。論理的根拠に基づき、ある命題と、その否定命題が、同等の妥当性を持って証明できる状況。現代の 一般的な文脈では、「どちらも正当であり、かつ、互いに対立する主張」を指すような意味で用いられることが多い。どちらも捨てがたいが両取りはできない選択肢、たとえば「商品の品質向上」と「商品の低価格化」、あるいは「環境の保護」と「産業の発展」のような対立。単に「矛盾」や「逆説(パラドックス)」と言い換えても差し支えない意味合いで用いられることも多い。
二律背反の語源
「二律背反」は Antinomie(アンチノミー)の訳語である。なお Antinomie はドイツ語の表記であり、英語では antinomy と表記する。「アンチノミー」の概念そのものは、古代ギリシア哲学にも見られるが、ドイツ哲学(とりわけイマヌエル・カント)において追究された。カントは「時間・空間は有限である」「時間と空間は無限である」といった二律背反を提示した。カントによれば、二律背反は本来生じるはずのない状況であるが、時に人間理性の誤解によって生じるという。
二律背反の類語と使い分け
二律背反の類語・類似表現としては「パラドックス」や「ジレンマ」などが挙げられる。おおむね「本来成り立たない状態が成り立っている」ことを指すという点で共通している。ちなみに「自己矛盾」も、二律背反と同様、Antinomie の訳語として用いられることのある語である。これは理論や行動そのものの中に自らを否定する要素が含まれている状況を指す。
にりつ‐はいはん【二律背反】
二律背反
二律背反
二律背反
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/25 15:38 UTC 版)
二律背反(にりつはいはん、アンチノミー、独: Antinomie)とは、正命題、反命題のどちらにも証明できる矛盾・パラドックスのことである(しばしば勘違いされるが単なる矛盾・パラドックスではない)。字義通りには、二つの法則が現実的にであれ見かけ上であれ相互に両立しないことを意味し、これは論理学や認識論で使用される術語である。
概要
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哲学用語として矛盾する二つの命題をいう。 概念自体は古代ギリシアのギリシア哲学のエレア派に見られた。
哲学におけるアンチノミー
この術語は、イマヌエル・カントの哲学において特別な意味を要求する。カントは、感覚的知覚あるいは経験(現象)の領域のみ用いられるカテゴリーあるいは理性の規準を純粋思惟の領域に適用した際に生じる、同等に合理的ではあるが矛盾する帰結を記述するのに用いた。理性はここでは合理的な真理を確立する役割を演じることができない。なぜなら、それは可能な経験を超えているし、理性を超越しているものの領域に適用されているからである。
カントにとって、以下のものに関連する四つのアンチノミーが存在する。
これらそれぞれについて、純粋理性は経験的なものに対して、正命題と反命題として、矛盾を提出する。 これは、学問と哲学的な探求に対する制限を規定するカントの批判的企図の一部である。カントは、これらの矛盾を、それがいかに現実に反対するものによって方向付けられていても、あるいは批判的な解明なしに心に現れているに違いないにしても、いかなる場合にも矛盾は実在的ではない、ということによって解決すると主張する。従って、互いに矛盾する選択肢に関して同等に強い議論がなされているという意味で、カントのせいにすること―しばしばなされたように―は正しくない。困難は現象体 (phenomenon) と英知体 (noumenon) の領域の混同から生じている。実際、いかなる合理的な宇宙論も可能でない。
参考文献
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出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。
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- ジョン・ワトソン、「カントからの選択」(トランス・グラスゴー、1897)、155頁。
- W.ウインデルバンド、「哲学の歴史」(英訳1893年)
- H. Sidgwick、 Philos。 カントの講義、x。 xi。 (Lond。、1905)
- F. Paulsen、 Kant (Eng。trans。1902)、pp。216 foll。
関連項目
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二律背反と同じ種類の言葉
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