改札 概説

改札

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/07 16:30 UTC 版)

概説

日本の多くの鉄道では、旅客の運賃は乗車券を事前に発売(出札)することで収受し、旅客は購入した乗車券の有効範囲内で乗車できる制度を採っている。その制度において、発売された乗車券(未使用)を乗車開始の際に検査の上、既使用(使用開始)に改める行為である。具体的には次の通り。

  • 係員による
    • 入鋏
      駅によって鋏痕が異なる改札鋏で券の一部が切落とされる。
    • 押印
      日付、駅名などのスタンプが押される。
  • 機械による
    • 印字
      時刻などが印字される(別途磁気にも時刻・乗車駅が記録される)
    • 開孔
      券に小さな穴が開けられる(別途磁気にも時刻・乗車駅が記録される)

鉄道駅では原則的に改札済みの旅客しか立ち入れない区域(改札内ラッチ内(ラチ内)又は(狭義の)構内[1] と呼ぶ)を設けて管理している。航空における搭乗手続船舶における乗船手続、映画館等の娯楽施設もぎり(半券回収)に似ている。路線バスでも高速バスなど長距離路線の多くで同様のシステムを採る事例がある。乗車券は基本的に旅行終了の駅(下車駅)にて回収(集札)される。

一方、ヨーロッパの殆どの鉄道駅には改札口は設けられていない[2]。ヨーロッパの鉄道では信用乗車方式を採用して、車内改札を行うのが一般である。その分不正乗車が発覚した際の罰金額を高く設定して不正乗車を防いでいる。

なお、バスにおいても検札が行われる場合があり、シンガポールのバスでは不定期に検札が行われており、有効な乗車券を所持していない場合(紛失した場合も含む)、罰金が課される。

改札口

鉄道駅の駅構内には、実際に列車を利用する旅客のみ立入ることの出来る場内と、誰もが立入れる場外があるが、その両者が仕切られている場所を改札口(かいさつぐち)と呼び、駅係員が改札口に立って改札を行う。この改札口は鉄道用語でラッチまたはラチ(英語:Latchに由来)と呼ばれ、柵や仕切板とともに改札係員が入る専用のブースが設置されている(有人改札口の画像を参照)。このブースのことを同様にフネ(係員が入った状態の外見を「舟」に見立てての意)と呼ぶ。

有人改札口(JR長岡駅、2006年)
自動改札機による改札口
(JR一ノ関駅、2010年)
回転棒式改札機による改札口
臨時改札口(原宿駅

日本の鉄道駅

日本では前述どおり、駅係員が改札口に立って改札を行う場合が多かったが、係員の代わりに機械が改札を行う自動改札機導入が大都市圏だけでなく地方都市圏にも広がりつつある。自動改札機が設置された場合でも、対応しないきっぷや精算のために兼掌窓口が設置されることが多い。

入場時には、きっぷに使用開始(入場済)であることを示す印が入れられる。係員による有人改札ではそのための道具として、日本では鉄道創業以来長らく改札鋏(かいさつばさみ、かいさつきょう)という専用の鋏で独特の切込みを入れてきたが、1990年代を境に順次、駅名や鉄道事業者名と日付を示すスタンプ改札印(入鋏印、スタンパー、もしくは製品名のチケッターとも呼ばれる)が導入され、これに切替えられた鉄道事業者が多い。また同時期に普及が進んだ自動改札機ではきっぷが改札機に投入された際、券面に穴を空ける。いずれの場合も、使用開始(入場済み)であることを示すためにきっぷに改札鋏等で印をつけることを入鋏(にゅうきょう)と言う。出場時には、原則としてきっぷを回収する。

なお少数派ではあるが、事業者・駅によっては、改札口における入場時の改札を省略して出場時の集札や運賃収受のみを行うところや、入場時に集札や運賃収受をしてしまい出場時の動作を省略するところなど、様々なケースが存在し、その運用形態は必ずしも一律では無い。前者は土佐くろしお鉄道中村駅広島電鉄広電宮島口駅京福電気鉄道四条大宮駅などや四国旅客鉄道(JR四国)の小規模な駅で、後者はスカイレール線の各駅都電荒川線王子駅前電停等で採用されている。

異なる鉄道事業者の経営する路線間乗換、一部の鉄道事業者では自社線間乗換(主に幹線ローカル線)、新幹線停車駅における新幹線・在来線相互の乗換、一部の有料特急ホーム等では、中間改札(連絡改札とも)を設けている。主な目的は、前2者では事業者間での有効な乗車券類保有確認と乗換に伴う精算、後2者では特急券類の保有確認または非保有者による入場制限である。

一部のバスターミナル港湾空港における旅客ターミナル等でも、改札口を設置している。

無人駅電停等では、改札口による改札が出来ないため、代わりに車掌が改札・集札業務を代行する場合が多い。その他、無人駅に乗車証明書発券機を設置して、着駅もしくは乗換駅の中間改札で精算をする場合もある。さらに路線が一駅間のみのピストン輸送で一方の駅で本線と接続している盲腸線では、接続駅にもう一方の駅の券売機と改札を併設してもう一方の終着駅を無人駅としていることがあり、東武鉄道大師線西日本旅客鉄道(JR西日本)和田岬線山陽本線支線)等で見られる。

また、通勤通学時間帯などの時間や繁忙期に一時的に乗客が集中する場合には、臨時改札口と称する改札を設ける場合もある。但し臨時改札口と言っても、人が通れるだけの隙間を空けて集札のみを行うものから、渋谷駅ハチ公臨時改札のように、恒常的に自動改札機を設置し、直ぐ近くに自動券売機がないこと以外は通常の改札口と変わらない運用をするものまで様々である。

ラッシュアワー等で駅構内に収容できない恐れがある程混雑した場合には、時間を区切って改札業務を一時停止し、通路を閉鎖する改札止め(かいさつどめ)が行われることもある。

ヨーロッパの鉄道駅

先述のようにヨーロッパ諸国の鉄道ではプラットホームへ出るために通る改札口が駅構内に設けられないことが多い[2]。きっぷに日付が印字されていなければ駅等に備え付けられた刻印機で利用客が日付を刻印するシステムが一般的に取られている[2]。例えば、オーストリアの公共交通機関では改札口又は車内での乗車券への刻印が義務付けられている[3]

一方、地下鉄大都市近郊路線では主として自動改札機による改札口が設けられている[注 1]

フランスパリと近郊都市圏のメトロの駅では、入場時に自動改札機にきっぷを通すのみで出場時の集札は行なわれていない。

列車別改札

改札中である旨の表示がある改札口(弘南鉄道平賀駅

列車別改札(れっしゃべつかいさつ)はの改札口の出入りを常時行わず、1本か2本の列車の発着ごとに行う方式である。この場合、発車時刻の数分前から発車間際まで改札を行い、他の時間は改札口が閉じられている。不正乗車の防止、乗降ホームの閉鎖による安全管理・コスト対策、旅客の誤乗(乗り間違え)防止が主目的とされる。このような方式は北海道に多く、稚内駅[注 2]網走駅新得駅等で見られる。この場合、忘れ物等を除き写真撮影や送迎等の目的であっても原則としてホームに立入ることは出来ない。列車別改札方式は主に列車本数の少ない駅で行われることが多いが、当然ながら本数が増えれば方式そのものが困難となるため、地下鉄など都市内鉄道では行われない事例がほとんどである。また博多南駅ガーラ湯沢駅のように、自動改札機設置駅でも採用している例があり、この場合は改札が開始されるまで実質的に乗車券類投入が出来ない状態となる。

日本では、鉄道草創期は列車本数が少ない事から各列車の発着ごとに改札を行っていたが、電車により頻発運転が可能となった区間では待合室の混雑など実施が困難になり、順次廃された。例えば上野駅(いわゆる国電を除く)では1954年まで[4]名古屋駅では1960年まで[5][6]実施していた。現在では北海道東北地方の一部の駅、ケーブルカー等で各列車発車時刻の5 - 20分前から改札が行われている程度である[注 3]。また、大阪近郊では福知山線の主要駅(宝塚駅伊丹駅など)で1986年の全線電化まで実施しており、大都市近郊では比較的遅くまで実施されていた例である。

韓国では、韓国鉄道公社 (KORAIL) の長距離列車では列車別改札が基本で、韓国高速鉄道 (KTX) 運行区間の駅に自動改札機が導入された時点でも変化は無かった。そのため、改札開始放送がある前に自動改札機に乗車券を入れると、エラーメッセージが出て改札が閉まる。しかし、トラブル多発により自動改札機の使用は中止され、事実上の信用乗車方式となっているため、一部地方駅を除いて、列車別改札は行われていない。


注釈

  1. ^ 先述のパリと近郊都市圏のメトロとRERロンドン地下鉄等。
  2. ^ 早朝深夜時間帯は無人。
  3. ^ 大都市圏では竜ヶ崎駅西大垣駅鞍馬駅博多南駅など僅か。
  4. ^ 磁気またはIC方式のプリペイド乗車カード類、モバイルSuica等のおサイフケータイ等を含む。
  5. ^ 但し、実際には近鉄などでICカード入場記録を確認出来る携帯端末を導入している事業者もある。
  6. ^ なお、JR東日本の車掌では無く、JR東日本サービスクリエーション所属グリーンアテンダントが車内改札を行っている。
  7. ^ 但し、不正乗車防止などの観点から、抜打ちで車内改札を実施することがある。
  8. ^ 例外で、名阪甲特急では近鉄名古屋行は鶴橋駅発車後に、大阪難波行は近鉄名古屋駅発車後に、それぞれ車内改札を行っている。
  9. ^ 例:児島 - 岡山間、坂出 - 高松間、今治 - 伊予北条 - 松山間、土佐山田 - 後免 - 高知間。
  10. ^ 但し、両新幹線の一部駅では、モバイルSuica特急券用の自動改札機しか設置されておらず、紙の特急券で乗車した場合、検札が行われる。
  11. ^ 自由席車両では継続。

出典

  1. ^ 改札内の意味での構内の使用例 - 新宿駅東西自由通路開通に伴う京王線から新宿駅東口方面へのご通行ルートの変更のお知らせ” (PDF). 京王電鉄 (2020年6月19日). 2020年6月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月26日閲覧。
  2. ^ a b c JTBパブリッシング『ララチッタ アムステルダム・ブリュッセル』2015年、129頁
  3. ^ a b JTBパブリッシング『ララチッタ ウィーン・プラハ(2016年版)』、15頁
  4. ^ 日本国有鉄道 上野駅『上野駅100年史』弘済出版社、1983年7月28日、85頁。 
  5. ^ 大野一英、林鍵治『鉄道と街・名古屋駅』大正出版、1986年、139頁。 
  6. ^ 徳田耕一『名古屋近郊電車のある風景今昔II』JTB、2004年3月1日、28頁。 
  7. ^ グリーン車Suicaシステムの利用方法”. 東日本旅客鉄道. 2023年4月29日閲覧。
  8. ^ 普通列車グリーン車 > 料金・きっぷ”. 東日本旅客鉄道. 2023年4月29日閲覧。
  9. ^ a b 「名鉄ネット予約サービス」を開始します” (PDF). 名古屋鉄道 (2019年4月17日). 2020年3月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月14日閲覧。
  10. ^ “山陽新幹線の検札廃止、東海道には広がらず JR”. asahi.com(朝日新聞社). (2006年6月17日). オリジナルの2006年10月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20061006110742/https://www.asahi.com/life/update/0617/002.html 2023年4月29日閲覧。 
  11. ^ 【社長会見】東海道新幹線における車内改札方法の変更について』(PDF)(プレスリリース)東海旅客鉄道、2015年11月19日https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000028479.pdf2023年4月29日閲覧 
  12. ^ 新幹線の「車内改札」が今になって終わる事情 不評の多かった"恒例行事"がいよいよ廃止に”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社 (2015年12月5日). 2023年4月29日閲覧。
  13. ^ “「指定席の切符拝見もうやめます!」 ついにJR東海が東海道新幹線で今春廃止へ 真の狙いはここにあった!”. 産経ニュース>経済インサイド. (2016年1月7日). https://www.sankei.com/article/20160107-AH3JY33IKVJGDER7ZEVHLHDAGU/ 2016年1月9日閲覧。 
  14. ^ JTBパブリッシング『ララチッタ ロンドン(2015年版)』、129頁
  15. ^ “台鐵百年查票鉗打洞2/1起走入歷史! 改用驗票章取代”. Now News. (2008年1月14日). オリジナルの2009年2月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090211021434/http://www.nownews.com/2008/01/14/545-2217223.htm 2023年4月9日閲覧。 






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