主食
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/09 18:29 UTC 版)
小麦、大麦、トウモロコシ、エンバク、ライムギなどの禾穀類(かこくるい)が主食となっている国々や地域が多い(ヨーロッパ、南アメリカ・北アメリカ、中国など)が、イネが主食となっている国々や地域も少なくない(主として東南アジア)[3]。その他に、各種豆類(大豆等)、果実類(プランテン、パンノキ)、サゴ等を主食にする人々も。だが、ノルウェーの人々のように何世紀にもわたり魚類を主食に生きてきた人々や、イヌイット(エスキモー)のように狩猟で得た生肉を主食として生きてきた人々もいる。
概要
主食は日常の食事の中心になる食べ物である。それぞれの国や地域においてどの作物が主食に選ばれるかは、気候・土壌・地形・生態系等の自然条件、農業政策や農業技術等の社会条件、好まれる味覚や食文化によって左右される。世界には食用となる植物が50,000種以上あるが、人類の栄養源として特に重要度の高い作物は数百程度である。そのうち15種の作物が全世界で摂取される食物エネルギーの90%を支え、うち米・トウモロコシ・小麦だけで世界人口の3分の2に当たる40億人の主食を占める[4]。
食物エネルギー源が畜産物33%・穀類26%・芋類4%で構成される西ヨーロッパの主食は畜産物や穀物だと言える。 該当する代表的な作物には、小麦、大麦等の穀類、豆類、ジャガイモやキャッサバ等の芋類がある。イヌイットの主食は肉と魚である。
イネ科穀類には10,000種以上があるが、広く耕作されている種はその一部である。世界的に特に重要な作物としては小麦、大麦、トウモロコシがあり、東南アジアや中国南部(や日本)などでは米もよく栽培され食べられている。途上地域においては、モロコシ(別名:ソルガム・コーリャン)や雑穀類(アワ・キビ・ヒエ・シコクビエ・トウジンビエ等)も重要な栄養源である。ヨーロッパ南部の温かい地域では小麦や大麦。ヨーロッパのうち小麦の生育に適さない寒冷で土壌の痩せた地域では、伝統的にライムギやエンバク(オートミール)が利用されてきた。テフはエチオピアの伝統的な主食作物である。イネ科以外の作物についても穀類に含めることがあり(「擬似穀類」)、ソバ、アンデス地域のキヌア・アマランサス等が該当する。穀類は生食に適さず、そのまま加熱して粒食(米飯等)するほか、製粉して麺(パスタ等)や発酵パン等に加工して食される。
芋類(ジャガイモ・タロイモ・ヤムイモ・サツマイモ・キャッサバ等)は途上地域の10億人以上の人々にとって重要な主食であり、サハラ以南のアフリカの人口の半数にとっては食料源の約40%を占める。特にキャッサバは熱帯の途上地域において重要であり、約5億人の主食となっている。芋類の一般的な特徴としては、炭水化物・カルシウム・ビタミンCに富むが、タンパク質に乏しいことが挙げられる。
この他に豆類(大豆・インゲン・ササゲ・エンドウ・ソラマメ・レンズマメ・ヒヨコマメ・ラッカセイ等)が限定的に主食とされる。豆類は、タンパク質に富むが炭水化物に乏しい。熱帯地域ではプランテン(調理用バナナ)が古くから利用されている。一部の地域では、パンノキの果実や、サゴ(サゴヤシの髄)を主食とする。
エチオピアの一部ではパルショータと呼ばれる醸造酒を主食とする人々がいる。
世界生産高 2008年 |
作付面積 当たり 平均生産高 2010年 |
作付面積 当たり 最大生産国 2010年[6] | |||
---|---|---|---|---|---|
順位 | 作物 | (t) | (t/ha) | (t/ha)[7] | 国 |
1 | トウモロコシ | 8.23億 | 5.1 | 28.4 | イスラエル |
2 | 小麦 | 6.90億 | 3.1 | 8.9 | オランダ、ベルギー |
3 | 米 | 6.85億 | 4.3 | 10.8 | オーストラリア |
4 | ジャガイモ | 3.14億 | 17.2 | 44.3 | アメリカ |
5 | キャッサバ | 2.33億 | 12.5 | 34.8 | インド |
6 | 大豆 | 2.31億 | 2.4 | 3.7 | トルコ |
7 | サツマイモ | 1.10億 | 13.5 | 33.3 | セネガル |
8 | モロコシ | 0.66億 | 1.5 | 12.7 | ヨルダン |
9 | ヤムイモ | 0.52億 | 10.5 | 28.3 | コロンビア |
10 | プランテン | 0.34億 | 6.3 | 31.1 | エルサルバドル |
ノルウェー
ノルウェーの人々は、何世紀にもわたり、北大西洋の新鮮な魚を基本の主食として生きてきた[8]。まれにエルクやカリブーの肉を塩漬けにして乾燥させたものを主食とする場合もあった[8]。
- ^ a b 広辞苑第5版
- ^ コトバンク[1]
- ^ 世界大百科事典 第2版
- ^ “Dimensions of Need: An atlas of food and agriculture”. Food and Agriculture Organization of the United Nations (1995年). 2013年4月17日閲覧。
- ^ Allianz. “Food security: Ten Crops that Feed the World”. Allianz. 2013年4月18日閲覧。
- ^ “FAOSTAT: Production-Crops, 2010 data”. Food and Agriculture Organization of the United Nations (2011年). 2013年4月18日閲覧。
- ^ あくまでも一国平均であり、主要生産地域ではより高くなる。
- ^ a b Norway, Oslo.(Rough Guides Snapshot Norway)ISBN 9780241312742
- ^ The Most Essential Ingredients In German Cuisine
- ^ gastrotourismo, STAPLE FOOD – Bread
- ^ French bread and french baguette - food from france
- ^ a b c d e f What Are the Staple Foods in France?
- ^ a b c d e f [2]
- ^ a b Chinahighlights
- ^ [3]
- ^ 西田正規 「縄文時代の人間 - 植物関係」- 国立民族学博物館研究報告, 1981 [4]
- ^ 『日本の考古学: 弥生時代』河出書房新社 2011年、p.379に記述あり。
- ^ 新谷 尚紀 他 『民俗小事典 食』 吉川弘文館、2013年、ISBN 978-4-642-08087-3 、26-27頁、「主食」の項
- ^ 原田 信男 『コメを選んだ日本の歴史』 文芸春秋、2006年、ISBN 4-16-660505-4、221-223頁、「高度経済成長期と農政」の項
- ^ 野本 寛一 『食の民俗事典』 柊風舎、2011年、ISBN 978-490-3530-51-2 、14頁、「主食としての米」の項
- ^ a b c d LEAF TV, Mexican staple foods
- ^ Discover Peru
- ^ “Nutrient data laboratory”. United States Department of Agriculture. 2013年3月4日閲覧。
- ^ United Nations Food and Agriculture Organization: Agriculture and Consumer Protection. “Rice and Human Nutrition”. 2010年10月15日閲覧。
主食と同じ種類の言葉
- >> 「主食」を含む用語の索引
- 主食のページへのリンク