バジル バジルの概要

バジル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/08 22:19 UTC 版)

バジル
バジル
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : シソ類 Lamiids
: シソ目 Lamiales
: シソ科 Lamiaceae
亜科 : イヌハッカ亜科 Nepetoideae
: メボウキ連 Ocimeae
: メボウキ属 Ocimum
: メボウキ O. basilicum
学名
Ocimum basilicum L. (1753)[1]
和名
メボウキ
英名
Basil

名称

英語名 Basil(バジル)ならびにイタリア語名 Basilico(バジリコ)の名称は、「王」を意味するギリシャ語βασιλεύςバシレウス)に由来するという説のほか、伝説上の怪物バジリスク: basilisk, : basiliscus, 古希: βασιλίσκος [basiliskos])に由来するという説もある[7]。ただし、怪物バジリスクの名称も元はギリシャ語の βασιλεύς に由来している。

和名のメボウキ(目箒)は、種子(果実)が水分を吸収するとすぐにゼリー状の物質に包まれるようになり、これが目に入ったゴミをとるのに役立ったというところから名付けられている[3][8]

特徴

インド、熱帯アジア原産[5][9]アフリカユーラシア大陸の熱帯に分布する[3]。日本では一年生草本[2]。「バジル」と呼ばれるハーブには、Ocimum basilicum 以外の種に由来するものもふくめ、およそ150種類の栽培品種があるといわれ[3]、中でも最もポピュラーなバジルの品種がスイートバジル(O. basilicum)である[10][5]。バジルの葉は緑色が一般的であるが、紫種(パープルバジル O. basilicum 'Purpurescens' など)もある[5]。香りの主成分はメチルカビコール(エストラゴール)、リナロールシネオールオイゲノールで、刺激性は低く生でも食べられる。スイートバジル種は、葉に甘くてスパイシーな芳香がある[10]

ドライにしても食べられるハーブで、カロテンビタミンEのほか、ミネラル分も豊富。熱帯アジア、インド原産のため寒さに弱い。植えつけは、気温が十分に上がる5月が適期[11]

一般的なスイートバジルでは草丈60センチメートル (cm) から90 cmになり[2]、品種によって30 cmから150 cmまで生長する。太い直根性の根を延ばす。主は直立し、よく分枝する[2]。茎の断面は四角形で、は5 - 6 cmの葉柄がついて対生する[2]。葉身は卵形で長さ5 - 12 cmあり、葉縁に鈍鋸歯がつき、表面はやや波状で光沢がある緑色、裏面は灰緑色である[2]。ただし、栽培品種によって葉は様々な大きさと形をしている。花穂は各枝の先につき、花穂の長さは12 - 25 cm、各節に6花ずつ輪生する[2]は小さく、白色の唇形花で長さ1 cm、雄しべは4本つく[2]果実は長球形で長さ2ミリメートル (mm) 、幅1.5 mmほどで、黒色をしている[2]。果実(種子)は脱落するとすぐ発芽するため、休眠期はないと考えられている[12]

歴史

絵画に描かれたバジル

インドマレーシアの熱帯アジア原産で、16世紀にヨーロッパへ紹介された[2]。バジルは、アレキサンダー大王によって、インドからヨーロッパに伝えられたとする説がある。イギリスには16世紀に、アメリカには17世紀に渡来している。

インドではホーリーバジルが、クリシュナ神とヴィシュヌ神に捧げる神聖なハーブとされる。ヒンズー教の聖なるハーブであり、アーユルヴェーダ医学では、トゥルシ(Tulasi)と呼ばれ、ジュースに用いられる[13]。またバジルは、ペルシャエジプトでは墓に植える草とされていた。

歴史的にみて、とてもよく知られているハーブであり、様々な儀礼迷信と結びついている。昔のインドでは葬儀の際に死者の横にバジルを供えることで、故人が黄泉の国へ無事にたどり着けると考えられた。中世ヨーロッパでは、サソリがバジルを好むと考えられており、粉末にしたバジルを吸い込むと頭のなかにサソリが沸くと信じられていた[14]

日本へは江戸時代中国から薬草として導入された[3]。文献では、貝原益軒の『大和本草』(1709年)の雑草類に「羅勒」として出たのが始めである[2]明治初年以降にしばしば導入されてきたが普及には至らず、もっぱら乾燥品が輸入されてきた[2]。日本でも2000年代以降は生葉も市場に流通するようになり、イタリア料理に用いられるようになった[2]


注釈

  1. ^ 学名からオキムム属と書かれる文献もある[3]

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ocimum basilicum L. メボウキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年11月13日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 農文協編 2004, p. 271.
  3. ^ a b c d e f g h i j 神蔵嘉高 1997, p. 33.
  4. ^ a b c d e Basil”. Center for New Crops & Plant Products, Department of Horticulture, Purdue University, West Lafayette, IN (1998年2月23日). 2017年5月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年1月22日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 175.
  6. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 597. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358618 
  7. ^ 北野佐久子編 2005, pp. 113–116.
  8. ^ 農文協編 2004, pp. 271–272.
  9. ^ a b c d e f g h 板木利隆 2020, p. 422.
  10. ^ a b c d e 神蔵嘉高 1997, p. 30.
  11. ^ バジルの種類(原種、品種)|植物図鑑”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2020年7月11日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 農文協編 2004, p. 272.
  13. ^ バジル”. 野菜果物辞典. ZUKKA・オモシロ. 2023年10月17日閲覧。
  14. ^ マーガレット・B・フリーマン著 遠山茂樹訳『西洋中世ハーブ事典』八坂書房、2009年、p.53頁。ISBN 978-4896949254 
  15. ^ a b c d e f g h i j k l m n 主婦の友社編 2011, p. 259.
  16. ^ a b c d e f g 金子美登 2012, p. 159.
  17. ^ a b 板木利隆 2020, p. 432.
  18. ^ 板木利隆 2020, p. 423.
  19. ^ a b c d e f g h i j k l m 主婦の友社編 2011, p. 258.
  20. ^ 神蔵嘉高 1997, p. 31.
  21. ^ 神蔵嘉高 1997, p. 32.
  22. ^ Naji-Tabasi, Sara; Razavi, Seyed Mohammad Ali (2017). “Functional properties and applications of basil seed gum: An overview”. Food Hydrocolloids 73: 313–325. doi:10.1016/j.foodhyd.2017.07.007. 
  23. ^ バジルの栄養とは?イタリア料理に欠かせないハーブ!|【公式】まごころケア食
  24. ^ 大澤俊彦、「がん予防と食品」『日本食生活学会誌』 2009年 20巻 1号 p.11-16, doi:10.2740/jisdh.20.11
  25. ^ 板橋作美「迷信と笑いと狂気」『東京医科歯科大学教養部研究紀要』第38巻、2008年、55-78頁、doi:10.11480/kyoyobukiyo.38.0_55 
  26. ^ バジル・スパイシーグローブ”. Fukuurara. 2020年7月11日閲覧。
  27. ^ Ocimum africanum Lour. taxonomy detail from NPGS/GRIN”. ars-grin.gov. 2016年9月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月11日閲覧。
  28. ^ Ocimum × africanum Lour. in 'The Plant List: A Working List of All Plant Species', http://www.theplantlist.org/tpl1.1/record/kew-136798 2016年12月3日閲覧。 
  29. ^ Fandohan, P.; Gnonlonfin, B.; Laleye, A.; Gbenou, J.D.; Darboux, R.; Moudachirou, M. (2008). “Toxicity and gastric tolerance of essential oils from Cymbopogon citratus, Ocimum gratissimum and Ocimum basilicum in Wistar rats”. Food and Chemical Toxicology 46 (7): 2493–2497. doi:10.1016/j.fct.2008.04.006. PMID 18511170. 
  30. ^ Pessoa, L.M; Morais, S.M; Bevilaqua, C.M.L; Luciano, J.H.S (2002). “Anthelmintic activity of essential oil of Ocimum gratissimum Linn. and eugenol against Haemonchus contortus”. Veterinary Parasitology 109 (1-2): 59–63. doi:10.1016/S0304-4017(02)00253-4. PMID 12383625. 
  31. ^ Basil: A Source of Aroma Compounds and a Popular Culinary and Ornamental Herb. In: Perspectives on new crops and new uses”. ASHS Press, Alexandria,VA (1999年). 2020年7月11日閲覧。
  32. ^ Eberhard Breitmaier (22 September 2006). Terpenes: Flavors, Fragrances, Pharmaca, Pheromones. John Wiley & Sons. pp. 11–. ISBN 978-3-527-31786-8. オリジナルの12 October 2013時点におけるアーカイブ。. https://books.google.com/books?id=9yrbR2WZ8bwC&pg=PA11 2013年8月2日閲覧. "Acyclic monoterpenoid trienes such as p-myrcene and configurational isomers of p- ocimene are found in the oils of basil (leaves of Ocimum basilicum, Labiatae), bay (leaves of Fimenta acris, Myrtaceae), hops (strobiles of Humulus lupulus, ..." 
  33. ^ Md Shahidul Islam (4 February 2011). Transient Receptor Potential Channels. Springer. pp. 50–. ISBN 978-94-007-0265-3. オリジナルの12 October 2013時点におけるアーカイブ。. https://books.google.com/books?id=TCMnYLLb758C&pg=PA50 2013年8月2日閲覧. "Eugenol is a vanilloid contained in relatively high amounts in clove oil from Eugenia caryophyllata, as well as cinnamon leaf oil (Cinnamomum zeylanicum) and oil from the clove basil Ocimum gratissimum. While eugenol is often referred to as ..." 


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