クール・ビズ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/17 23:21 UTC 版)
概要
第1次小泉第2次改造内閣にて、環境大臣に就任した自由民主党の小池百合子が、2005年(平成17年)に内閣総理大臣小泉純一郎から「夏場の軽装による冷房節約」をキャッチフレーズにしたらどうかとアドバイスされた。それ以降、環境省主導のもと、ネクタイや上着を着用せず(いわゆる「ノーネクタイ・ノージャケット」キャンペーン)、夏季に摂氏28度以上の室温に対応できる軽装の服装を着用するように呼びかけた。
「クール・ビズ」(COOL BIZ)という表現は、2005年(平成17年)4月に行われた環境省の一般公募によって選ばれたものである[1]。「涼しい」や「格好いい」という意味のクール(英語: COOL)と、仕事や職業の意味を表すビジネス(英語: business)の短縮形であるビズ(BIZ)を掛け合わせたもので、2005年のユーキャン新語・流行語大賞のトップテンに選定された[2]。
2005年の段階では衣料メーカーや百貨店は、かつての「カジュアル・フライデー」につづく紳士服の商機ととらえ、開襟シャツなど、ネクタイを装着していなくともだらしなく見えないデザインのシャツや、沖縄で夏のシャツとして普及しつつあるかりゆしウエアの販売を展開した。当初は定着するかどうかは未知数とされたが、2007年に行われたアンケートでは認知度が9割以上、実践率が約46%と高くなっていた。
日本ではクール・ビズに関して、賛否両論があるものの、日本国外では日本のキャンペーンに賛同し、それをヒントにして類似のキャンペーンを行う政府も増え、2008年には国際連合もクールUNを行った(詳細は#日本国外での反響を参照)。
実施期間は、環境省の想定では「6月1日から9月30日まで」の4ヶ月となっている。ただし、2011年(平成23年)には東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)に伴う、東京電力・福島第一原子力発電所での事故による電力不足・電力危機も考慮して、政界・官公庁や一部の上場企業によって5月1日より実施された。2012年からは環境省が「スーパークールビズ」を打ち出している[3]。
2012年における環境省における服装の可否は、次のように提示された[4][5]。
衣服 | クールビズ | スーパークールビズ |
---|---|---|
ノーネクタイ | ○ | ○ |
ノージャケット | (○) | ○ |
半袖シャツ | ○ | ○ |
かりゆしウェア | (○) | ○ |
ポロシャツ | × | ○ |
アロハシャツ | × | ○ |
Tシャツ | × | △ |
タンクトップ | × | × |
チノ・パンツ | (○) | ○ |
ジーンズ | × | △ |
ハーフパンツ | × | × |
スニーカー | (○) | ○ |
サンダル | × | △ |
○…可 (○)…可だが徹底されていない △…TPOに応じた節度ある着用に限り可 ×…原則不可
環境省での服装については上記のように具体的な可否の例が提示されている。また、環境省では"可だが徹底されていない"の表現があるように具体的な衣装を提示している。推奨されている衣類は、新たに購入しなければならないような特別な衣類や、ノーネクタイ・ノージャケットなど具体的な衣装を指すものではなく、事務所衛生基準規則を出所とした室温上限の摂氏28度という室温の中でも涼しく効率的に働くことができるような軽装全般を指していて、それが満たされる衣服であればよいとされている。
経済産業省では、2011年にクールビズテックとして通気や断熱など高機能繊維製品の紹介を行った[6]。摂氏28度で快適に過ごすことを目標とする[3]。一方で、環境省の日常生活に関する指針では暑さ指数摂氏28度では熱中症への厳重警戒となる[7][8]。
自治体によってはアロハシャツや、その土地特有の服装を採用している役所も存在し、市や町のイメージ向上や宣伝に活用されている場合もある。
人事院では、国家公務員採用試験の案内で、官庁訪問時にネクタイや上着がなくても差し支えないとしている[9]。
防衛省ではクールビズは自衛隊法の品位を保つ義務に抵触しない服装と判断し[10]、防衛省職員のうちスーツで勤務する『背広組』に対し推奨している[11]。
公務員の中でも、衛視や警察官や自衛官など、制服の着用が義務付けられた職種では、クールビズの提唱以前から、夏期用の夏服制服が指定されている。
ただし、あくまでも日本国政府での基準であるので、気候が日本とは逆で冬になっている南半球の国家や亜熱帯気候の地域を含めた世界への出張等で、クールビズの服装で支障がある場合は、従来通りスーツ・ネクタイ着用になる。
実施期間
環境省が想定していた実施期間は6月1日から9月30日までの3か月である。2011年、2012年は、政界・官公庁において5月1日より実施された。
曜日配列等の都合上、初日や最終日が各企業や官公庁の休日にあたる場合は、実質それぞれ直後(6月最初の営業日)・直前の営業日(9月最終営業日)の日付に置き換えられることが多い。
6月から9月までの約4箇月間で実施するところが多い[12]が、開始時期に関しては、6月中旬や下旬または7月初旬より開始するところもある。終了時期に関しても、8月末で終了するところがある。反対に、気候に応じて、1ヶ月程度 前倒ししての開始や、同様に、1ヶ月程度 後ろ倒ししての終了とする事例も見受けられる。
2011年は、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)とそれに伴って起きた東京電力・福島第一原子力発電所での事故等により、東日本地域全体で夏場の電力不足・電力危機が想定されたことから、官公庁で5月1日から10月31日までの半年間と、1か月前倒し・延長の措置を取った。電力不足の影響が少ない西日本の自治体や一部の上場企業でも、前倒しで実施した(2012年も同じ)。
2020年(令和2年)3月31日、環境省はクールビズの実施期間を廃止し、2021年(令和3年)4月1日から実施すると発表した[13]。環境省が所管する啓発事業の効率化が目的で、環境大臣小泉進次郎は、閣議後の記者会見で「ネクタイを締めるかどうかは、一人ひとりが決めていくことが大事」と、各自が気温に応じた服装をするよう呼び掛けた[13]。これにより、環境省によるクール・ビズ、ウォーム・ビズの呼びかけは、令和2年(2020年)度で最後になる。
- ^ 『「夏の新しいビジネススタイル」愛称発表及び愛・地球博会場内での6月5日環境省関連イベントについて』(プレスリリース)環境省、2005年4月27日 。
- ^ “「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン 新語・流行語大賞”. 自由国民社. 2018年11月12日閲覧。
- ^ a b “夏のカイテキ、楽しくつくろう。COOL BIZ”. 環境省. 2012年5月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年6月26日閲覧。
- ^ 『平成24年度スーパークールビズの実施について』(プレスリリース)環境省、2012年5月25日 。
- ^ 『環境省におけるクールビズ服装の可否』(PDF)(プレスリリース)環境省、2012年5月25日 。
- ^ “「COOLBIZ TECH」事業とは”. 経済産業省. 2013年5月1日閲覧。
- ^ “暑さ指数(WBGT)とは”. 国立環境研究所. 2013年5月1日閲覧。
- ^ “熱中症予防情報”. 国立環境研究所. 2013年5月1日閲覧。
- ^ “採用情報に関するQ&A”. 人事院. 2018年11月12日閲覧。
- ^ “近畿中部防衛局におけるスーパークールビズの服装について” (PDF). 防衛省近畿中部防衛局. 2013年3月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月1日閲覧。
- ^ “防衛省官庁訪問の御案内”. 防衛省. 2016年10月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月13日閲覧。
- ^ 5月から10月までの約6カ月間で実施されるところもある。
- ^ a b “クールビズの期間設定廃止 ノーネクタイ、自分で判断―環境省”. JIJI.COM (時事通信社). (2020年3月31日) 2020年5月31日閲覧。
- ^ 『「COOL BIZ」の成果について』(プレスリリース)環境省、2005年10月28日 。
- ^ 『本年度の「COOL BIZ」の成果について』(プレスリリース)環境省、2006年11月10日 。
- ^ “クール・ビズに関する特別世論調査” (PDF). 内閣府 (2007年8月2日). 2010年12月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年1月19日閲覧。
- ^ “産業連関表からみる「クールビズ関連品目」の国内生産への波及効果”. 経済産業省. 2007年3月17日閲覧。
- ^ “クールビズ「28度では能率低下」…日本建築学会調査”. 読売新聞. (2008年7月18日)
- ^ “クールビズ反対:ネクタイ産地が動画製作 富士吉田商議所”. 毎日新聞. (2018年6月11日) 2018年6月23日閲覧。
- ^ “「断固反対!クールビズ」 ネクタイ産地があえて動画で発信するワケ”. ITmedia ビジネスオンライン (2018年6月14日). 2018年6月23日閲覧。
- ^ 番組のコンセプト上(重大事件・大災害が起きた場合を除いて)ノーネクタイなTBS『サンデーモーニング』やカジュアルフライデーを導入していた日本テレビ『NEWS ZERO』が該当
- ^ 実施以降では、2007年の参議院議員通常選挙及び、2009年の衆議院議員総選挙、2010年の参議院議員通常選挙が該当する。
- ^ “室温36度の部署も 環境省“猛暑””. 47NEWS. (2006年8月1日). オリジナルの2012年6月20日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b FNNプライムオンライン編集部 (2019年7月8日). “クールビズからの転換!? 姫路市役所がエアコンの設定温度を「25℃」に下げた狙いを聞いた”. FNNプライムオンライン (フジテレビジョン) 2019年5月31日閲覧。
- ^ http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070809i313.htm[リンク切れ]
- ^ “亀井氏、クールビズ閣議に“造反” 「着せ替え人形じゃあるまいし」”. MSN産経ニュース. (2010年6月1日). オリジナルの2010年6月5日時点におけるアーカイブ。
- ^ “涼しかったけど…クールビズ国会、1か月前倒し”. 読売新聞. (2011年5月1日) 2011年5月3日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “クールビズキャンペーンは成功?”. Yahoo! JAPAN. 2018年11月12日閲覧。
- ^ “ソウル市の公務員に半ズボン・サンダルでの勤務許容…賛否分かれる”. 中央日報. (2012年5月22日) 2012年5月12日閲覧。
- ^ “倉庫のような会議室であいさつもせず 輸出規制巡る韓日初会合”. 聯合ニュース (2019年7月12日). 2019年12月29日閲覧。
- ^ “Hot workers urged to adopt cool Japanese summer dress code” (英語). 英国労働組合会議(TUC). 2008年6月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月15日閲覧。
- ^ “パチャウリ議長:「変えたいなら行動を」環境会議で講演”. 毎日新聞 2007年10月19日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “スペイン閣僚に「クールビズ紛争」発生 国際ニュース”. AFPBB News (フランス通信社) 2008年7月4日閲覧。
- ^ “クールビズ国連版 「クールUN」始まる”. MSN産経ニュース 2008年8月2日閲覧。[リンク切れ]
- 1 クール・ビズとは
- 2 クール・ビズの概要
- 3 効果の試算・推計
- 4 クールビズへの反応
- 5 脚注
固有名詞の分類
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