各国海軍と海賊との交戦
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「ソマリア沖の海賊」の記事における「各国海軍と海賊との交戦」の解説
各国が、自国の船舶による通商貿易を保護するため海軍を派遣しており、海賊との海戦が頻発している。各国海軍は、海賊に対し圧倒的な軍事力を有しているものの、国内の法整備が不十分であり、海賊を討伐するまでには至っていない。 2006年3月18日、アメリカ海軍のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「ケープ・セント・ジョージ」、及びアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ゴンザレス」の2隻がソマリア沖で海賊と交戦する事件が発生した。疑わしい小型船を発見したゴンザレスの臨検チームが乗船しようとしたところ、小型船の乗員がロケット弾の発射基のような物を振りかざしているのを発見。小型船の乗員が発砲し、ケープ・セント・ジョージとゴンザレスはこれに応戦した。2隻のアメリカ軍艦は海賊との銃撃戦を約25海里に渡って行った結果、海賊1名が死亡し、5名が負傷したと報告された。 2008年11月11日、イギリス海軍の22型フリゲート「カンバーランド」、及びロシア海軍ネウストラシムイ級フリゲート「ネウストラシムイ」の艦載ヘリコプターKa-27が海賊に襲われた貨物船の救助に駆けつけ、イギリス海兵隊が海賊と交戦する事件が発生した。(詳細はソマリア沖2008年11月11日の事件を参照) 2008年11月18日、インド海軍のタルワー級フリゲート「タバール」がオマーンの沖合約530km地点で不審な船団を発見。海賊の母船の特徴と合致していたことから臨検のための停船を呼びかけたところ船団がそれを拒否、フリゲートに向け発砲してきたため主砲により反撃して撃沈する事件が発生した。しかし同26日、国際海事局はインド海軍が「海賊船」だとして撃沈した船が、海賊に乗っ取られたタイの水産会社に所属するトロール漁船であると発表した。この件についてインド海軍は事件の写真を公開し、相手が攻撃してきたため応戦したのであり、正当防衛であったと主張している。国際海事局は、インド海軍がこのタイ漁船がハイジャックされていると言う情報を受け取って居なかった可能性もあるとコメントしている。この漁船に乗り組んでいたカンボジア人1人が救助され、タイ人1人が死亡、14人が行方不明になっている。 2008年12月13日、インド海軍のデリー級駆逐艦「マイソール(Mysore)」は、イエメンの沖合約280kmのアデン湾上でエチオピアの貨物船から「2~3隻の高速艇に乗った海賊から攻撃を受けている」との救難信号を受信した。マイソールは即座に海兵を乗せたS-61ヘリコプターを現場に急行させ海賊船を攻撃したところ、海賊は貨物船の襲撃をやめ逃走。マイソールとヘリコプターは追跡を続け2隻の高速艇に乗り込みこれを制圧、これによりインド海軍はソマリア人12人とイエメン人11人からなる23人の海賊を逮捕・拘束し、7丁のAK-47(カラシニコフ自動小銃)に装填済の弾倉13個に加えRPG-7対戦車ロケット擲弾筒1基、さらにGPS装置やボート用の船外機などが押収された。23人の海賊は平和的に投降したという。 2008年12月25日、イエメン沖でエジプトの貨物船がソマリアの海賊に襲撃された。ドイツ海軍が救難信号を受けてフリゲートから哨戒ヘリを発進させて、海賊を撃退した。この事件で、エジプト貨物船の乗組員1人が負傷した。 2009年1月1日、アデン湾においてロシア海軍フリゲート「ネウストラシムイ」が護衛する船団に海賊が接近、発砲してきた。同艦が救援に駆けつけると海賊は逃走した。同日、「ネウストラシムイ」に随伴する給油艦「エリニヤ」も海賊の襲撃を受けたが、同艦が応戦すると逃走した(この事実は、「ネウストラシムイ」帰港後の2月8日に行なわれた航海指揮官オレグ・グリノフの記者会見で初めて明らかにされた)。 2009年1月13日、ロシア海軍のウダロイ級大型対潜艦「アドミラル・ヴィノグラドフ」は、アデン湾を航行中のオランダのコンテナ船「ネドモルド・バレンス」から「海賊の3隻の高速艇が船尾から接近しており、小型武器による攻撃を受けている」との救難信号を受信した。アドミラル・ヴィノグラドフはヘリコプターを現場に急行させ、海賊船を威嚇射撃したところ、1隻の海賊艇はイエメン領海に逃げ込んだが、あとの2隻はアドミラル・ヴィノグラドフの臨検グループにより制圧、海賊を拘束した。海賊3名がロシア海軍の銃撃により負傷した。海賊は麻薬中毒と診断され、イエメン沿岸警備隊に引き渡された。アドミラル・ヴィノグラドフは、1月11日、警備艦「ネウストラシムイ」からアデン湾における任務を引き継いでいた(しかしCNNは、1月15日配信のニュースで、「ロシア軍は高速艇を追跡したが、振り切られた」とだけ報じ、2隻を拘束した事を無視した)。 2009年2月2日、海賊の襲撃を受けた中国の貨物船2隻が、襲撃を回避した後に中国海軍駆逐艦の保護下に入った。 2009年2月11日、アメリカ海軍のイージス巡洋艦はアデン湾にて貨物船を襲撃しようとした海賊7人を拘束した。アメリカ海軍がソマリア沖にて海賊を拘束するのは初めてのケース。 2009年2月13日、先にインドを訪問した後、アデン湾で行なわれるロシア・インド海軍合同演習に参加する為、同海域へ向かう途中のロシア海軍キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」は、ソコトラ島の南東海域でイランの漁船に接近する2隻の小型高速艇を発見、搭載ヘリコプターを発進させて追跡した。2隻の小型艇は、その近くに居た大型母艇と共に「ピョートル・ヴェリキー」が拘留、乗っていた計10名のソマリア人は、同艦に連行され、北方艦隊の法務官による取調べを受けた。大型母艇からは武器、麻薬、多額の現金などが発見され、拘留された海賊は、麻薬中毒の状態にあった。 2009年3月29日、ソマリア沖のアデン湾において海賊がドイツ海軍のレーン級給油艦シュペッサルトを襲撃する事件が発生した。アメリカ海軍第5艦隊のプレスリリースによれば、シュペッサルトは海賊から銃撃を受け、それに対し乗船していた武装警備隊員が銃によって反撃を行った。その後シュペッサルトは各国海軍に対し応援を求め、オランダ海軍のデ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲートデ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン、スペイン海軍のサンタ・マリア級フリゲートビクトリア搭載のSH-60Bヘリコプター、スペイン空軍のP-3M哨戒機、さらにはCTF-150旗艦であるワスプ級強襲揚陸艦ボクサー搭載の海兵隊ヘリであるAH-1W及びUH-1、及びギリシャ海軍のEUCTF-465旗艦イドラ級フリゲートプサラなどと共に海賊を追跡した。およそ5時間の追跡の後、シュペッサルトの武装警備隊及び臨検チームが7名の海賊を拘束し、彼らの武器を押収した。アメリカ軍によれば、海賊達がドイツ海軍の補給艦を民間船舶と勘違いして襲撃した可能性があるとしている。 2009年4月26日、イタリア客船が海賊と交戦し撃退した。翌日、スペイン海軍のフリゲート艦「ヌマンシア 」が、フランスとセーシェルの哨戒機、インド海軍の艦艇と合同で海賊を追跡し、現場付近に2隻の小型ボートを発見した。海賊はうち1隻を乗り捨て、9人が1隻のボートに乗り移ったがその後、全員が拘束された。拘束した場所がセーシェル領海内だったため、9人の身柄はセーシェルの船に引き渡された。 2009年4月28日、ロシア海軍太平洋艦隊の大型対潜艦「アドミラル・パンテレーエフ」は、アデン湾東部において、アンティグア・バーブーダ国籍のタンカー「ブラウィ・バンク」乗っ取りを試みた海賊母船と2隻の高速ボートを停止させ、29名の海賊を拘留した。海賊1名が負傷し、損傷した海賊母船は沈没した。取調べの結果、海賊のメンバーには、ソマリ族の他、イラン人とパキスタン人も加わっていた事が判明した。 2009年5月4日、ソマリア沖で韓国海軍が、海賊に襲われた北朝鮮籍の貨物船を初めて救助。北朝鮮船は韓国軍部隊に対して「大変感謝する」と伝えた。 2009年8月26日、アメリカ海軍ヘリコプターが追跡中の海賊から発砲される。これはアメリカ軍航空機に対する初めての発砲とされる。 2011年1月21日、韓国海軍の特殊部隊UDT/SEALS(大韓民国海軍特殊戦旅団)が15日から海賊に乗っ取られていた三湖海運のケミカルタンカー「三湖(サムホ)ジュエリー」に突入した。銃撃戦の末、8人を射殺、5人を拘束した。海軍特殊部隊は人質全員(うち一人は重傷)の救出に成功し、韓国海軍側の死者はなかった。この過程で人質の船長は海賊の放ったAK47の弾三発、特殊部隊の放ったピストルの9ミリ弾かMP5短機関銃の消音弾とみられる弾一発が当たり、海賊の弾が大腸や肝臓のある腹部を貫通して、これが生死にかかわる傷となった。特殊部隊の放った弾丸は直接当たったものではなく、壁か床を跳ねて当たった跳弾であった。同事件は韓国初の海賊事件の国民参与裁判制度(陪審制に相当)の対象とされ、海上強盗殺人未遂などで釜山地方裁判所に起訴、うち1人は死刑求刑に対し無期懲役の判決が下され、1人が懲役15年、2人が懲役13年の判決を受けた。5人全員は控訴、検察側も量刑不当を理由に控訴した。なお2010年10月以来、韓国漁船「クムミ305」は乗っ取られたままであったが2月9日に全乗組員が解放された。 2012年12月25日、ソマリア北東部のプントランドの海洋警察が人質22人を海賊から救出。
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