無期懲役の判決
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/14 05:26 UTC 版)
「名護市女子中学生拉致殺害事件」の記事における「無期懲役の判決」の解説
1998年3月17日に判決公判が開かれ、那覇地裁(林秀文裁判長)は死刑求刑を受けた2被告人を無期懲役に処す判決を言い渡した。 那覇地裁 (1998) は判決理由で、殺人の共謀が成立した時期について、「殺害場所を求めて第二現場(殺害現場)に向かったと考えるのが自然だ。第一現場から第二現場へ移動を開始する時点で、犯行の発覚を免れるためには殺害・死体遺棄しかないと考え、殺害の共謀を暗黙のうちに遂げた」と認定。また、Y側が主張していた自首の成立については、「Yは本事件について、ポリグラフ検査を受けた際に、『犯人であることが明らかにならないようにしよう』という姿勢で臨み、その後自白したため、自発的な申告とは言えない」として、自首の成立を認めなかった。 量刑理由では、両被告人の役割分担や、刑事責任の差について「被告人Yが多少主導した面もないわけではないが、Y・Uの両者とも、ほぼ同等の実行行為を分担しているため、両者に主従関係や、刑事責任の差はつけ難い」という判断を示した上で、「犯行は極めて卑劣・非情。被害者が死亡したと確信するまで首を執拗に絞め続け、殺害直後、何の躊躇いもなく遺体を投げ捨てた。平和な農村地帯で起きた本事件は、教育現場・地域社会を震撼させ、地元や県全体に不安と恐怖を与えた」と指摘。そして、遺族の被害感情や、検察官の死刑求刑については、「何の落ち度もない被害者が夢多い将来を永久に奪われた事件であり、遺族の悲しみ・絶望・怒りは絶大で、極刑を望んでいることも無理からぬものがある。両名の刑事責任は極めて重大で、検察官の死刑求刑にも相応の理由がある」と理解を示した。 しかしその一方で、被告人らにとって有利な事情として、拉致などについては場当たり的な犯行である点や、殺人・死体遺棄に限れば計画性は高くなく、拉致を行った時点では殺害を漠然と考えていたに過ぎない点を挙げ、「当初から殺害を確定していた身代金目的誘拐殺人のような事例と比較すると、悪質さの程度には若干の差異がある」と指摘した。その上で、Y・Uの両名とも、前科・前歴はなく、逮捕後には犯行を自白し、反省・謝罪の念を深めていることについても言及し、「犯罪傾向が強いとも言い難く、更生可能性は肯定できる」と判示した。 そして、「死刑は、罪責が誠に重大で、罪責の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合に選択が許される究極の刑罰であり、その適用には慎重でなければならない。被告人らにとって有利に斟酌すべき事情がないとまでは言えず、近年死刑の適用に慎重になっている量刑の実情をも考えあわせると、死刑をもって処断するにはなお躊躇を感じざるを得ない」として、「被告人らには、犯行がいかに罪深いものであるかを自覚させつつ、終生、被害者の冥福を祈らせ、贖罪の道を歩ませるのが相当である」と結論づけた。 那覇地検は量刑不当を理由に、1998年3月30日付で福岡高等裁判所那覇支部へ控訴した。一方、被告人2人は控訴しなかった。
※この「無期懲役の判決」の解説は、「名護市女子中学生拉致殺害事件」の解説の一部です。
「無期懲役の判決」を含む「名護市女子中学生拉致殺害事件」の記事については、「名護市女子中学生拉致殺害事件」の概要を参照ください。
- 無期懲役の判決のページへのリンク