神戸新交通ポートアイランド線
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歴史
開業までの経緯
1968年(昭和43年)、「ポートアイランド利用計画委員会」において「埋立地は港湾施設に止まらず、未来指向の海上都市構想を整備する」という構想が生まれ、その都市内交通手段として初めて新交通システム (AGT) の導入が検討された。1970年(昭和45年)の「ポートアイランド基本設計委員会」では、専用軌道方式の輸送機関を導入することが具体的に示されることになる。その一方で運輸省と建設省は翌年、共同で「新交通システム開発調査委員会」を設置。都市交通への適応性、路線等の導入計画、経営分析等の概略検討が行われた。
具体的なAGTの機種は、1974年(昭和49年)12月から1977年(昭和52年)2月までの間に開かれた「神戸市新交通システム機種選考委員会」で検討が行われた。選考委員会では、川崎重工業のKCV (Kawasaki Computer Control Vehicle)、神戸製鋼所、神鋼電機、神鋼電機のKRT (KOBELCO Rapid Transit)、三菱重工業、三菱電機の三菱軌道バス・MAT(Mitsubishi Automatic Transportation System)、新潟鐵工所のNTS(ニュートランシステム)の4機種の側方案内方式システムで導入の検討が行われた。神戸市は地元企業を育成する立場から、川崎重工業・神戸製鋼所・三菱重工業の共同開発とし、新しく KNT (Kobe New Transit) として開発が進められた。川崎重工業がシステムとりまとめ、車両、分岐器、総合管理システム、車両基地を担当、神戸製鋼所が電力、信号、通信、駅設備を担当、三菱重工業が電力外部配線を担当した[15]。
車両の試作車は1000型として、川崎重工業の旧・加古川車両工場(現・カワサキモータース加古川工場[16])の"KCV加古川試験線"で試験運転が行われていた[17]。
翌年度の道路整備予算において、AGTに対してのインフラ補助が導入されたものの、補助の対象事業者となるには公営あるいは公的出資率51%以上の第三セクターであることが求められているため、第三セクターである神戸新交通株式会社が設立。その後はポートアイランドとともに建設が進められ、1981年2月4日に竣工式、翌日の2月5日に、世界初の自動無人運転方式として三宮 - 南公園 - 中公園間が開業した。
開業と博覧会輸送
開業当初は目新しさから、三宮から乗車し島内をそのまま循環して三宮で下車する体験乗車組も多く見られた。開業と同年の3月20日から9月15日まで開催された神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア'81)の会期中は、観客輸送が中心となった[3]。乗客数は当初の需要予測を大幅に上回り、AGTに対する利用者の不慣れもあいまって、博覧会の開催間もないころは、自動停止や出発不能などのトラブルが多発し、AGTに対しての批判も少なくなかった。しかし、その後は安定輸送で博覧会輸送を乗り切り、以後全国にAGTおよび無人運転システムが広まる先駆けとなった。博覧会終了後は、島民の移動の足や島内施設へのアクセス路線の一つとなっている。
震災の発生
1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)は、全線に大きな影響を与えた。
被害状況
路線上で走行していた車両は、地震発生直後に急停車し車両自体に大きな損傷はなかったものの、駅施設関係では、高架橋や柱に大きな被害を受け、橋桁が落下したり桁ずれなどが発生した箇所もあった。特に国道2号線直下の橋桁は宙吊りになっていたほか、新港第4突堤の橋脚が余震のたびに傾斜が進んでいる状況であった。ポートアイランド内でも、液状化現象による基礎の損壊や地盤の軟弱化が確認された。また、車両基地でも損傷を受けたほか、三宮駅とポートターミナル駅では駅舎が傾斜、特に大きな損傷が見られた。案内軌条や電気設備にも大きく損傷した箇所があり、復旧には相当な日数がかかるとされた。
市内のJR神戸線を初めとした私鉄各線が、当初見込みを大幅に短縮して復旧されていく中で、ポートアイランド線は、全線高架構造で高さ30mに及ぶところもあり、安全上仮支柱で仮復旧させることができないこと、仮復旧で営業を始めると本復旧が困難になること、落下等による橋桁の損傷が激しかったこと、在来鉄道に比べて集電装置が小さく、ミリ単位の高い精度が要求されること、全線が高架で幅員の狭い構造物であるため、同時並行作業が困難であったことなどにより、大幅な工期短縮が困難であった。さらに、液状化現象が発生した箇所に路線があったことや、AGTというこれまでにない構造の路線であったため、世界的にも前例がなく復旧策がはっきりしていなかった。できる限りの工期短縮のために、橋桁や走行路のうち従来コンクリート床版であった箇所を鋼床版に変更したこと、案内軌条などを橋桁製作時に先行的に取り付けしたこと、応急的な補修で安全性が保てる箇所は応急処置のみを行い、開業後に夜間作業で交換したことなどを行い、工期短縮が図られた。
2月8日に記者発表した資料では、8月下旬を目途に、貿易センター駅 - 市民広場駅間と貿易センター駅 - (北埠頭駅) - 南公園駅間をそれぞれ1列車による単線往復運行による部分的な運転再開をするとし、三宮駅 - 貿易センター間の復旧は目処が立っておらず年末までかかるとされ、損壊の激しいポートターミナル駅の復旧も年末までかかるとされ、当面通過駅となる予定であった。
代替バス
1月24日より、神戸税関前から市民病院前駅(現:みなとじま駅)までの暫定代替バスが運行、震災直後は15 - 30分、2月5日より増便され10 - 20分間隔で運行されていた。震災の混乱により周辺道路は渋滞が慢性化し、神戸大橋を渡るのに1時間近くかかることもあった。2月20日からは、停車場が神戸税関前から三宮駅前へと変更され、さらなる増便により朝ラッシュ時最短5分間隔の運行と運行時間帯の延長がなされた。3月27日からは、三宮駅前バス停ではさらなる増便に対応できなかったことから、停車場を市役所前へと変更し、朝ラッシュ時最短3分間隔の運行がされた。なお、ポートアイランドまでのバスはこれとは他にK-CAT行きのリムジンバスや航路があった。代替バスは、全線復旧する前日である7月30日をもって廃止した。
運行再開
復旧工事を急ピッチで進めたことにより、予定よりも大幅に早い5月22日に、中公園駅 - (市民広場駅) - 北埠頭駅間 (2.7km) の部分開業が行われた。この区間は単線であるため、1列車の手動運転による単線往復運行となり、1日49本往復運行された。従来通りの方向(左回り)の場合は従来通りの速度で、逆方向(右回り)の場合は 30km/h 以下での走行となった。6月5日には、北埠頭駅 - 中公園間 (0.9km) の復旧工事が完了、当時存在していた中公園駅の引き上げ線を使用しポートアイランド内では従来通りの一方通行による手動運転を再開した。当初年末まで、その後も8月下旬まで復旧工事がかかるとされていた箇所を含めた三宮 - 中公園間 (2.8km) の復旧も周辺住民との合意で夜間工事が可能となり工期短縮され、当面通過駅とされていたポートターミナル駅も営業を再開し、7月31日に195日ぶりに全線が開通。9月11日には震災前のダイヤに戻され、全線が復旧した。
空港線延伸とその後
ポートアイランド沖に神戸空港が建設される構想の中で、空港アクセス路線としての延伸事業が開始された[18]。神戸空港への延伸とともに、利便性の向上から中公園 - 市民広場間の複線化も行われるものであった[18]。1998年(平成10年)10月に発表した当初の延伸計画では、既存駅3駅の複線化と、ポートアイランド第2期に2つ、神戸空港島の東側と西側の2つの新駅および車両基地を建設する予定で、総延伸距離は 6.7km であったほか、三宮駅の改築や車両の8両編成化による輸送力増強などが盛り込まれていた。全体構想としては新神戸駅までの延伸も構想として存在していた。2000年(平成12年)9月19日に神戸市が発表した「神戸新交通ポートアイランド線延伸事業について」で、工事を二分し、現在の神戸空港駅より先の、西側の駅と車両基地の事業は先延ばしされることとなり、延伸距離が 5.4km の現在の形となった。なおこれにより、当初1200億円であった事業費は590億円まで減額された。
2度の軌道切替工事による運休[19][20]を経て、2006年(平成18年)2月2日、空港開業に先駆けて、既存の中公園 - 市民病院前(現:みなとじま) - 市民広場の複線部と、延伸区間である市民広場 - 神戸空港間が開業した[10]。なお、同日より快速運転が開始。運賃制度も単一距離制から区間距離制へ移行された[* 10]。
2005年12月4日、全駅で接近メロディ・発車メロディを採用した。制作会社はカンノ製作所。当初は4点チャイム・ベルであったが、接近メロディはかつてJR府中本町駅やJR明科駅の発車メロディで使用されたものを編曲したメロディに、発車メロディは西武秩父駅の発車メロディやJR京都駅の接近メロディを編曲したメロディなどへと変更した。多客時や扉開の延長時などではメロディを使わずベルを使うことがあるが、このときに鳴るベルは開業時の時よりも低い音になっている。また、駅の放送はこれまで三宮 - ポートターミナル間で北埠頭方面行きは中埠頭止まりをのぞいて「ポートアイランド方面ゆき」と案内され、中公園では「三宮(市民病院前経由)ゆき」、それ以外は「三宮ゆき」と案内されていたが、メロディに変更されると同時に三宮 - 中公園間は「北埠頭行き」に変更され、市民病院前(現:みなとじま)・市民広場の各駅は「北埠頭経由三宮行き」に変更された。
2011年7月1日、神戸市立医療センター中央市民病院の移転ならびに独立行政法人理化学研究所の次世代スーパーコンピュータ「京」施設等の進出に伴い、市民病院前、先端医療センター前、ポートアイランド南の各駅の駅名改称が行われた[21]。改称後の駅名は下表の通り。
旧駅名 | 改称後の駅名 | 備考 |
---|---|---|
市民病院前駅 | みなとじま駅 | |
先端医療センター前駅 | 医療センター駅 | |
ポートアイランド南駅 | 京コンピュータ前駅 | 2019年8月にスーパーコンピュータ「京」の運用が終了したことにより、2021年6月19日に計算科学センター前駅に改称[22]。 |
また、空港線延伸事業の際に考案されていた、新幹線との連携強化のための、三宮駅から新神戸駅への延伸構想(現在、両駅間は神戸市営地下鉄西神・山手線によって結ばれている)、三宮駅直前の急曲線が運転時分に大きく影響していることから、前述の延伸構想とも関連して同駅を移設する構想、また、神戸空港島に車両基地を新設し8両編成化する構想、神戸空港西側の旅客営業を行うための延伸構想などがあったが、どれも具体化されておらず、神戸新交通の財政悪化などにより、計画は白紙になった[23]。しかし近年になり、「神戸の都心の『未来の姿』検討委員会」や「三宮構想会議」などでこれらの構想は再浮上しつつある。
年表
- 1966年(昭和41年):新交通システムの導入事業開始。
- 1971年(昭和46年)12月:新交通システム開発調査委員会を設け、運輸省・建設省で調査実施。
- 1977年(昭和52年)
- 1978年(昭和53年)
- 1979年(昭和54年)
- 1980年(昭和55年)
- 1981年(昭和56年)
- 1982年(昭和57年)
- 1995年(平成7年)
- 1998年(平成10年)12月1日:ルミナリエ開催期間中に合わせてイルミネーションライナー「ルナ号」が運行されるようになる(後述)。
- 2001年(平成13年)9月4日:中公園 - ポートアイランド2期北(仮称→現:医療センター)間の軌道事業に特許[24]。
- 2002年(平成14年)11月6日:ポートアイランド2期北 - 神戸空港間の軌道事業に特許[29][24]。
- 2004年(平成16年)
- 2005年(平成17年)
- 2006年(平成18年)2月2日:市民広場 - 神戸空港間が延伸開業[10][24]、中公園 - 市民広場間が複線化、三宮 - 神戸空港間で快速運転開始。
- 2011年(平成23年)7月1日:市民病院前駅をみなとじま駅に、先端医療センター前駅を医療センター駅に、ポートアイランド南駅を京コンピュータ前駅にそれぞれ駅名改称。
- 2016年(平成28年)3月28日:ダイヤ改正を実施、快速列車を廃止[12]。朝ラッシュ時間帯に列車を増便(三宮 - 京コンピュータ前間折り返し列車設定)[12]。
- 2021年(令和3年)6月19日:京コンピュータ前駅を計算科学センター駅に改称[22][30][31][32]
注釈
- ^ a b 走行車軸の中心間。案内軌条間は2,430mm、集電装置間は2,796mm。
- ^ 正式には、空港線・ループ線等の区別はない。
- ^ Port-Loop
- ^ 貿易センター駅南側で阪神高速3号神戸線を乗り越す前後区間と中公園駅北側のポートピア大橋との接続部(3か所)。
- ^ 混雑率では、日暮里・舎人ライナーが上回るものの、輸送力、輸送人員はともにAGTの中で最も多い。
- ^ 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける以前の2018年の混雑率:128%
- ^ 神戸国際港都建設法及び都市計画法等に基づく都市高速鉄道としての名称は「都市高速鉄道6号新交通ポートアイランド線(三宮 - (南公園) - 中公園間)」及び「11号新交通ポートアイランド線延伸線(市民広場 - 神戸空港間)」で、軌道法区間における路線名はそれぞれ「新交通専用道1号線(三宮 - ポートターミナル間)」、「同2号線(中公園 - 南公園間)」、「同5号線(市民広場 - 神戸空港間)」である。
- ^ 日本のAGTで同じ例は山万ユーカリが丘線でも見られる。
- ^ 過去には、1999年から2004年の間、広島高速交通広島新交通1号線(アストラムライン)で急行列車が運行されていたことがある。
- ^ なお、移行される際に、ポートアイランド内の値上げに対する反対意見が多く見られたことから、ポートアイランド内は現行維持とし、事実上の値下げ区間も発生した。
- ^ 年によっては1月上旬まで運行。
出典
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- ^ 『鉄道ファン』(交友社)2014年12月号、p96-101「ようこそAGTへ 新交通システムのすべて 関西・中国のAGT車両編」、JAN 4910064591245
- ^ a b “市民のグラフ こうべ No.101(昭和56年2月)ポートライナー”. 神戸市市長室広報課. 2015年7月3日閲覧。
- ^ 『鉄道ファン』通巻650号 p.118
- ^ 『鉄道ファン』通巻650号 p.115
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- ^ カワサキモータース(株)加古川工場(インターネットアーカイブ)
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- ^ a b 神戸新交通ポートアイランド線延伸事業(神戸新交通お知らせ・インターネットアーカイブ)。
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- ^ “本日7/2㈯「神戸どうぶつ王国列車」が運行しました!”. 神戸どうぶつ王国公式Facebook (2016年7月2日). 2017年1月3日閲覧。
- ^ 劇場版「ペルソナ3」公開記念一日乗車券の発売について - 神戸新交通、2013年10月25日閲覧
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