神戸新交通ポートアイランド線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/13 01:10 UTC 版)
概要
神戸港沖に建設された人工島「ポートアイランド」と神戸市の中心地の三宮を一方通行の環状運転で結ぶ軌道系交通機関として建設され、1981年2月5日に日本初の実用的な新交通システムかつ世界初の自動無人運転方式として開業した[3]。その後、2006年2月16日の神戸空港の開港に先立って、神戸空港駅まで同年2月2日に延伸・複線化し[4]、現在の路線の形となっている。
運転士を必要としない世界初の無人運転システム(開業当初は添乗員が乗務[5])であり、全駅に、日本で初めてのフルスクリーンタイプのホームドアの設置[6]や、最小曲線半径 30m[7]、50パーミルの急勾配[* 4]など、AGTの性能を最大限発揮した線形となっており、既存市街地では高層ビルや高速道路などを縫うように軌道が敷設されている。また、車両基地を除く全線が高架構造である。
ポートアイランド内に多数の企業や大学のキャンパスがあり、また神戸空港のアクセスルートであるため、朝のポートアイランド行きおよび夕方の三宮行きにおいて激しい混雑が見られ、混雑率は、2016年(平成28年)度には160%程度に上る見込みである[* 5]。以前は重量制限のため駅を出発できないことがあったが、現在はそれが緩和されて改善されているものの、混雑は深刻化している。また、21時台から22時台にかけては神戸空港に到着便が集中するため、三宮方面行きにおいて混雑する。
路線データ
- 路線距離(営業キロ):10.8 km
- 空港線(三宮 - 神戸空港間) 8.2 km
- ループ線(市民広場 - 北埠頭 - 中公園間) 2.6 km
- 案内軌条:側方案内式
- 軌間:1,740 mm[* 1]
- 駅数:12駅(起終点駅含む。市民広場駅・中公園駅は重複計上せず)
- 複線区間:
- 複線:空港線全線(三宮 - 神戸空港間)
- 単線:ループ線全線(市民広場 - 北埠頭 - 中公園間)
- 電気方式:三相交流600 V・60 Hz
- 閉塞方式:車内信号式
- 最大勾配:50 ‰(本線)[1]・60 ‰(車庫線)[1]。1981年開業区間・2006年の延伸開業区間は含まない。
- 最小曲線半径:30 m(本線・車庫線とも)[1]。1981年開業区間・2006年の延伸開業区間は含まない。
- 最高速度:70 km/h
- 車両基地:中埠頭車両基地
- 2022年度の混雑率:102%(貿易センター駅→ポートターミナル駅 8:00-9:00)[8][* 6]
路線の免特許上は以下のように軌道法に基づく軌道区間と鉄道事業法に基づく鉄道区間(第一種鉄道事業)とが混在している。これは、その下を走る道が道路法に基づく道路であるか、それ以外の道(主として港湾法に基づく港湾道路)であるかの違いによるものである[* 7]。AGTには、他にも軌道区間と鉄道区間が混在している路線がある。
- 三宮 - ポートターミナル (1.8 km) - 軌道法
- ポートターミナル - 中公園 (1.0 km) - 鉄道事業法
- 中公園 - (市民広場) - 神戸空港 (5.4 km) - 軌道法
- 市民広場 - 南公園 (0.6 km) - 軌道法
- 南公園 - 中公園 (2.0 km) - 鉄道事業法
建設費用
1981年に開業した三宮 - 南公園 - 中公園間の建設費用について記載する。
路線免許を申請した1977年(昭和52年)6月時点の建設費用は、神戸市負担額で148億600万円、神戸新交通負担額で169億8,900万円、合計で317億9,500万円を見込んでいた[9]。ただし、国庫補助があり115億3,500万円が補助対象となったことから、神戸市と神戸新交通の負担額は202億6,000万円である[9]。この計画では開業7年目で単年度黒字、開業13年目で累積赤字を解消する予定であった[9]。
ただし、実際には設計変更などが多数発生したため、最終的な建設費用は「436億7,300万円」となった[9]。これは神戸市負担額で226億1,900万円(ただし、国庫補助対象で196億710万円が補助された)、神戸新交通負担額で210億5,400万円である[9]。この時点で開業10年目で単年度黒字、開業21年目で累積赤字を解消する予定に変更した[9]。
注釈
- ^ a b 走行車軸の中心間。案内軌条間は2,430mm、集電装置間は2,796mm。
- ^ 正式には、空港線・ループ線等の区別はない。
- ^ Port-Loop。神姫バスのPort Loopも「PL」の路線記号を使用するが、同バス路線は当路線との混同を防ぐために番号が30番台から始まるように付番されているため、被ることはない。
- ^ 貿易センター駅南側で阪神高速3号神戸線を乗り越す前後区間と中公園駅北側のポートピア大橋との接続部(3か所)。
- ^ 混雑率では、日暮里・舎人ライナーが上回るものの、輸送力、輸送人員はともにAGTの中で最も多い。
- ^ 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける以前の2018年の混雑率:128%
- ^ 神戸国際港都建設法及び都市計画法等に基づく都市高速鉄道としての名称は「都市高速鉄道6号新交通ポートアイランド線(三宮 - (南公園) - 中公園間)」及び「11号新交通ポートアイランド線延伸線(市民広場 - 神戸空港間)」で、軌道法区間における路線名はそれぞれ「新交通専用道1号線(三宮 - ポートターミナル間)」、「同2号線(中公園 - 南公園間)」、「同5号線(市民広場 - 神戸空港間)」である。
- ^ 日本のAGTで同じ例は山万ユーカリが丘線でも見られる。
- ^ 過去には、1999年から2004年の間、広島高速交通広島新交通1号線(アストラムライン)で急行列車が運行されていたことがある。
- ^ なお、移行される際に、ポートアイランド内の値上げに対する反対意見が多く見られたことから、ポートアイランド内は現行維持とし、事実上の値下げ区間も発生した。
- ^ 年によっては1月上旬まで運行。
出典
- ^ a b c d e 神戸製鋼所『R&D 神戸製鋼技報』1981年4月号「新しい都市交通システムの展開」pp.1 - 7。
- ^ 『鉄道ファン』(交友社)2014年12月号、p96-101「ようこそAGTへ 新交通システムのすべて 関西・中国のAGT車両編」、JAN 4910064591245
- ^ a b “市民のグラフ こうべ No.101(昭和56年2月)ポートライナー”. 神戸市市長室広報課. 2015年7月3日閲覧。
- ^ 『鉄道ファン』通巻650号 p.118
- ^ 『鉄道ファン』通巻650号 p.115
- ^ 『鉄道ファン』通巻650号 p.117
- ^ a b c d e f 『鉄道ジャーナル』通巻393号
- ^ “最混雑区間における混雑率(令和4年度)” (PDF). 国土交通省. p. 6 (2023年7月14日). 2023年8月12日閲覧。
- ^ a b c d e f 日本モノレール協会『モノレール』48号(1982年10月)「神戸新交通システム、ポートライナーの建設費について 」pp.2 - 15。
- ^ a b c d ポートライナー線延伸線開業に伴うダイヤ改正について(神戸新交通お知らせ・インターネットアーカイブ)。
- ^ 『ポートライナーのダイヤ改正』(PDF)(プレスリリース)神戸新交通株式会社、2011年3月10日。 オリジナルの2012年9月5日時点におけるアーカイブ 。
- ^ a b c d “ポートライナーのダイヤ改正”. 神戸新交通. 2016年3月15日閲覧。(インターネットアーカイブ)。
- ^ ポートライナー停車駅のご案内 (PDF) (神戸新交通・インターネットアーカイブ)。
- ^ “神戸の「ポートライナー」初代車両引退へ”. 読売新聞. (2009年10月16日). オリジナルの2009年10月18日時点におけるアーカイブ。
- ^ 日本鉄道車輌工業会『車両技術』147号(1980年3月)「神戸新交通システムの概要」pp.53 - 62。
- ^ カワサキモータース(株)加古川工場(インターネットアーカイブ)
- ^ 川崎重工業「車両とともに明日を拓く 兵庫工場90年史(正史)」103-104P。
- ^ a b 神戸新交通ポートアイランド線延伸事業(神戸新交通お知らせ・インターネットアーカイブ)。
- ^ a b 平成16年11月20日(土)、21日(日)複線化のための切替工事に伴いポートライナー全区間の運行休止及び代替輸送についてお知らせいたします。(神戸新交通お知らせ・インターネットアーカイブ)。
- ^ a b ポートアイランド線の運行休止と代替輸送について(神戸新交通お知らせ・インターネットアーカイブ)。
- ^ 『神戸新交通ポートアイランド線の駅名変更』(PDF)(プレスリリース)神戸新交通株式会社、2010年10月28日。 オリジナルの2012年9月3日時点におけるアーカイブ 。
- ^ a b “駅名変更のお知らせ” (PDF). 神戸新交通. 2021年5月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月29日閲覧。
- ^ 川島令三著 『日本三大都市 未完の鉄道路線』 p305
- ^ a b c d e 国土交通省鉄道局監修『鉄道要覧』平成18年度版、電気車研究会・鉄道図書刊行会、p.207, 242
- ^ 原武史『昭和天皇御召列車全記録』新潮社、2016年9月30日、151頁。ISBN 978-4-10-320523-4。
- ^ “中公園・北埠頭間運行計画” (PDF). 神戸大学附属図書館. p. 3 (1995年5月15日). 2015年7月3日閲覧。
- ^ “運行再開に係る連絡票” (PDF). 神戸大学附属図書館. p. 5 (1995年6月5日). 2015年7月3日閲覧。
- ^ “運行再開に係る連絡票” (PDF). 神戸大学附属図書館. p. 9 (1995年7月31日). 2015年7月3日閲覧。
- ^ 外山勝彦「鉄道記録帳2002年11月」『RAIL FAN』第50巻第2号、鉄道友の会、2003年2月1日、21頁。
- ^ 『神戸新交通ポートアイランド線の駅名変更』(PDF)(プレスリリース)神戸新交通、2020年11月16日。 オリジナルの2020年11月17日時点におけるアーカイブ 。2020年11月17日閲覧。
- ^ “「京」は駅名からも引退 神戸のポートライナー 「計算科学センター」駅に”. 毎日新聞. (2020年11月17日). オリジナルの2020年11月17日時点におけるアーカイブ。 2020年11月17日閲覧。
- ^ “スパコン「京」駅名変更へ 神戸新交通、富岳は使わず”. 共同通信. (2020年11月17日). オリジナルの2020年11月17日時点におけるアーカイブ。 2020年11月17日閲覧。
- ^ “会社沿革”. 交友印刷株式会社. 2009年5月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年5月27日閲覧。
- ^ 『「神戸どうぶつ王国列車」運行について』(プレスリリース)神戸市、2015年6月22日。 オリジナルの2017年1月3日時点におけるアーカイブ 。2017年1月3日閲覧。
- ^ 『「神戸どうぶつ王国列車」運行について』(プレスリリース)神戸市、2016年6月10日。 オリジナルの2017年1月3日時点におけるアーカイブ 。2017年1月3日閲覧。
- ^ “「神戸どうぶつ王国列車」の運行について”. 神戸新交通公式Facebookライナーくん (2016年6月11日). 2017年1月3日閲覧。
- ^ “本日7/2㈯「神戸どうぶつ王国列車」が運行しました!”. 神戸どうぶつ王国公式Facebook (2016年7月2日). 2017年1月3日閲覧。
- ^ 劇場版「ペルソナ3」公開記念一日乗車券の発売について - 神戸新交通、2013年10月25日閲覧
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