北投石 北投温泉産北投石と玉川温泉産北投石の相違点

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北投石

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/31 03:29 UTC 版)

北投温泉産北投石と玉川温泉産北投石の相違点

北投温泉産と玉川温泉産の北投石は、鉛を含む重晶石の変種ということで同じ鉱物とみなされているが、詳細に調べると、いくつかの相違点がある[3][4]

  1. 玉川温泉産の北投石はサンプル毎にBaSO4とPbSO4の比率がかなり大きい範囲で変動するのに対し、北投温泉産のそれは、ほぼ一定である。(Baのモル%は、玉川温泉産は 80 - 97%, 北投温泉産は 71 - 72% [14])
  2. 玉川温泉産はBaSO4が主成分であり、ほとんど重晶石と同じであることもある(つまりPbSO4をほとんど含んでいないこともある)。
  3. 北投温泉産は常にかっ色だが、玉川温泉産は、通常のかっ色の他に、淡黄色やほとんど白色のものもある。
  4. 特に注目すべき相違点は、玉川温泉産の方が多種類の希元素を含むことである。特に放射能がラジウム系列の元素だけでなく、トリウム系列の元素にもよることである。トリウムとその放射性沈殿物の存在は化学分析と放射化学的実験から確認されている。
  5. 典型的な玉川温泉産の北投石は、北投温泉産と同じようなかっ色の多数の微斜方晶からなるが、白色とかっ色の薄い層が規則的に重なる構造が見られる。北投温泉産の方にはこのような明確な構造は見られない。

白色層とかっ色層を分離して個別に分析すると、白色層にはBaSO4とSiO2が多く、かっ色層はPbOとFeOが多かった。PbとFeは、ペンタチオン酸塩(PbS5O6, FeS5O6) の形で存在してることが、いくつかの実験から推定される。この多層構造は、季節による気温の変化や藍藻の影響によると推定される。


注釈

  1. ^ 玉川温泉は古くは渋黒温泉と呼ばれていたが、1935年頃現在の名前に改称された[1]
  2. ^ フレデリック・ソディは、グラスゴー大学在任時 (1904 - 1914) に、多数のウラン鉱物についてウラン・ラジウムの比率を実験的に求め、その値が常に 3.4×10-7になることを見出した[10]。この値を北投石(北投温泉産)のラジウム含有量 1.73×10-7%に当てはめると、含まれているはずのウランの量は (1.73×10-7%)÷(3.4×10-7)=0.51% (UO3換算 0.61%) が得られる。

出典

  1. ^ a b 南英一、「玉川温泉の北投石について」『鉱物学雜誌』 1954年 2巻 1号 p.1-24, doi:10.2465/gkk1952.2.1,
    第2卷第1号 正誤表 『鉱物学雜誌』 1955年 2巻 2号 p.107b,doi:10.2465/gkk1952.2.2_107b,
    第2卷第1号,南 英一:玉川温泉の北投石について,著者よりの訂正 『鉱物学雜誌』 1955年 2巻 2号 p.107a,doi:10.2465/gkk1952.2.2_107a
  2. ^ a b 綿秡邦彦、「北投石-その地球化学」『地球化学』 1991年 24巻 2号 p.79-83, doi:10.14934/chikyukagaku.24.79
  3. ^ a b c d e Suganuma, Ichizo (1928). “On the constituents and genesis of a few minerals produced from hot springs and their vicinities in Japan, I. The Akita Hokutolite”. Bulletin of the chemical society of Japan 3 (3): 69 - 73. https://www.journal.csj.jp/doi/pdf/10.1246/bcsj.3.69 2019年4月26日閲覧。. 
  4. ^ a b c d 菅沼市蔵、1925、『硫黄泉秋田鹿湯に産する秋田北投石の成分及び成因』、ラヂウム鑛石研究所
  5. ^ 堀内公子「温泉の化学」『放射化学50年のあゆみ』日本放射化学会 2007年
  6. ^ 飯盛里安「分析化学その他の昔話」『ぶんせき』No.6、1975年、 71頁。
  7. ^ a b c d 飯盛里安「北投石一夕話(ほくとうせきいっせきわ)」我等の鉱物 Vol.10 No.1 pp.37 - 40 1941年
  8. ^ 斎藤信房「日本における放射化学の黎明と進展 (1907 - 1957)」 『放射化学研究50年のあゆみ』日本放射化学会 2007年, NAID 40016915010
  9. ^ Yoshimura, Jun (1929). “The radioactive constituents of Hokutolites and other minerals in Japan”. Bulletin of the Chemical Society of Japan 4 (4): 91 - 96. https://www.journal.csj.jp/doi/pdf/10.1246/bcsj.4.91 2019年4月24日閲覧。. 
  10. ^ 飯盛里安「SODDYの死を悼む」化学の領域 Vol.1,No1 pp.1 - 2 (1957)
  11. ^ 『飯盛里安博士97年の生涯』中津川市鉱物博物館、p.6 2003年
  12. ^ a b 綿秡邦彦、「一つの石の物語(<特集>化学のふるさと)」『化学教育』 1973年 21巻 5号 p.348-353, doi:10.20665/kagakukyouiku.21.5_348
  13. ^ 特別天然記念物盗む/容疑者逮捕/秋田県警・角館署”. Secure Japan. ウェリカジャパン. 2019年1月10日閲覧。
  14. ^ 百島則幸「北投石」『放射化学研究50年のあゆみ』日本放射化学会 2007年
  15. ^ 佐藤傳蔵、南英一「渋黒北投石」『新潟縣外七縣に於ける天然紀念物及名勝』(天然紀念物調査報告;地質鑛物之部 第2輯)内務省 p.41 1927年、doi:10.11501/1899900
  16. ^ 佐々木信行、流郷忍、堀口昇、「縞状北投石中の放射性核種の分布について」『香川大学教育学部研究報告』2012年 第2部 62(2), pp.95-104
  17. ^ 田健治郎伝記編纂会 編 『田健治郎伝』田健治郎伝記編纂会、1932年、516-517頁。全国書誌番号:53009203 NDLJP:1880388/308


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