世界国尽 世界国尽の概要

世界国尽

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/28 22:33 UTC 版)

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世界国尽
(せかいくにづくし)
頭書大全 世界國盡
著者 福澤諭吉
発行日 1869年(明治2年)の初冬[1]
発行元 慶應義塾
ジャンル 地誌
日本
言語 日本語
形態 和装本(木版半紙判6冊本)[1]
ページ数 巻の一は、序文4丁、凡例3丁、目録2丁、本文17丁、折込附図2面。
巻の二は本文16丁、巻末に亜非利加洲全図折込。
巻の三は本文33丁、巻末に欧羅巴洲全図折込。
巻の四は本文24丁、巻末に北亜米利加洲全図折込。
巻の五は本文19丁、巻末に南亜米利加洲全図と大洋洲全図との2面を折込。
巻の六は本文22丁[1]
公式サイト dcollections.lib.keio.ac.jp/en/fukuzawa/a13/34
コード ISBN 978-4-7664-0878-2
ISBN 978-4-623-07828-8
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内容

以下、原文の引用[2]を含む。

一の巻(亜細亜洲)

序文で、本書の発行の目的は子供や女性に世界の形勢を理解させることであると記している。さらに、「合衆国ニウヨルク州のワルプランク氏」の文章を飜訳して序文に代えている。

発端において、冒頭で

「世界は広し万国は、おほしといへど大凡おおおよそいつつに分けし名目みようもくは、亜細亜アジア阿弗利加アフリカ欧羅巴ヨーロツパ、北と南の亜米利加アメリカに、さかいかぎりて五大洲、太洋洲は別にまた、南の島の名称となえなり」

と述べているように、一の巻はアジア、二の巻はアフリカ、三の巻はヨーロッパ、四の巻は北アメリカ、五の巻は南アメリカと太平洋諸島およびオーストラリア、そして六の巻は附録(地理学の総論)のように構成されている。全巻にわたって、ほとんど全てのページに図が添えられていて、地理案内の図解のように構成されている。また、一の巻から五の巻までの最初と最後には、それぞれの「洲」の着色地図が添えられている。六の巻では地学を天文・自然・人間の3つのカテゴリーに分けて説明している。

そして、本文においては、例えば一の巻(アジアの巻)では、地理の説明以外に阿片戦争の歴史を説明している。

二の巻(阿非利加洲)

二の巻(アフリカの巻)では、アフリカ洲の一大国として「衛士府都」(エジプト)を取り上げて、特に「比羅三井天」(ピラミイデ)を説明している。

三の巻(欧羅巴洲)

また、三の巻(ヨーロッパの巻)では、当時の5大国として、「魯西亜」(ロシア)、「普魯士」(プロシヤ)、「墺地利」(オウストリヤ)、「英吉利」(英国)、「仏蘭西」(フランス)をあげて、文明開化の中心地と説明している。そして、ヨーロッパの説明では

「土地の広袤ひろさくらぶれば、五大洲の末なれど、狭き国土に空地あきちなく、人民つねの産を得て、富国強兵天下一、文明開化の中心と、名のみにあらず其実そのじつは、人の教の行届き、徳誼とくぎを修め知を開き、文学技芸美を尽し、都鄙みやこいなか差別しやべつなく、諸方にたつる学問所、幾千万の数知らず。」

と述べて、その繁栄ぶりを強調している。さらに、説明を続けて

産業すぎわいの安くして、かの商売の繁昌し、兵備整ひ武器足りて、世界に誇る泰平の、その源をたずぬるに、もとつとむる学問の、枝に咲きたる花ならん。花みて花をうらやむな、本なき枝に花はなし。一身ひとりの学に急ぐこそ、進歩あゆみはかどる紆路まわりみち、共に辿たどりて西洋の、道にさかゆる花をみん」

と述べて、文明開化を進めるには学問が根本にあるとして「学問のすすめ」を説いている。

四の巻(北亜米利加洲)

また、四の巻(北アメリカの巻)では、地理の説明以外にアメリカ独立戦争の歴史を説明している。さらに、アメリカ独立宣言を踏まえて「ひとにも貸さじわが自由、天の道理にもとづきて、国に報ゆる丹心たんしんの、誠にいでし一国の、不羈ふき独立の勢は、とめんとすれどとどまらず」と説明している。

五の巻(南亜米利加洲・太洋洲)

五の巻(南アメリカ)では、一帝国として「武良尻」(ブラジリ)をあげている。

六の巻(付録)

最期に、六の巻(付録)では、地学を天文・自然・人間の3つの章に分けて説明している。天文の章では、地球が丸いことや磁石が南北を指すこと、経度緯度などを説明している。自然の章では、地形の説明として、半島地峡火山砂漠大洋湖水、入海()、瀬戸(海峡)、などを説明している。人間の章では、文明の発達段階として4段階があることをあげて、第1段階を「渾沌」、第2段階を「蛮野」、第3段階を「未開又は半開」、第4段階を「文明開化」と説明している。また、政府の体裁に3種類があることをあげて、第1は「モナルキ」(立君政治)、第2は「貴族合議」、第3は「共和政治、或は合衆政治」であると説明している。

特徴

本書の特徴は、本文が七五調で統一されているところにある。『福澤全集緒言』の解説によると、日本国中の老若男女に世界地理を知らしめるため、江戸の地理案内書を購入して暗誦し、地理案内書にそっくりの七五調で書くことにしたとの事である[注釈 1]




注釈

  1. ^ 福澤は『福澤全集緒言』において『世界国尽』について以下のように説明をしている。
    世界国尽
    幾千百年来蟄居ちつきよの人民がにわかに国をひらい世界せかいまじわらんとするには、ずその世界せかい何物なにものにしていずれの方角ほうがくに位するやを知り、その地名ちめいを知りその遠近えんきんを知るは最も大切たいせつなることにして、前年は唐天竺からてんじくとて世界の末端はてと心得たりしに、今は唐天竺からてんじくほか欧羅巴ヨーロツパ亜米利加アメリカ等も出現しゆつげんし来り、したがつて人の眼界がんかいは旧時に幾倍いくばいして広からざるを得ず。眼界がんかいの広きはりもなおさず世界をせまく思うことなれば、かく全国民ぜんこくみんをして世界せかいること日本国内をると同様どうようならしめんと欲し、これついては江戸の各処かくしよに在る寺小屋てらこや手本てほんに、江戸方角ほうがく又は都路みやこじとて、府下東西南北の方角ほうがく地名ちめい等を記し、東海道五十三つぎ順序じゆんじよを五字七字の口調くちようもて面白おもしろ書綴かきつづり、児童じどうをしてその手本てほんの文字を手習てならいすると共にその文句もんく暗誦あんしようして自然しぜん地理ちりを覚えしむるの慣行かんこうにして、江戸方角ほうがく都路みやこじと云えば江戸中の貴賤貧富きせんひんぷかかわらず毎戸毎人まいこまいひとこれを知らざる者なき程の次第なれば、余は之を見てひと首肯うなずき、よし〱日本国中の老若男女ろうにやくなんによをして世界の地理風俗ちりふうぞくを知ること江戸の方角地名ほうがくちめい、東海道の五十三つぎ暗誦あんしようするがごとくならしめんとの一案を起し、にわか書林しよりんに就て江戸方角、都路の版本はんぽんを求め、幾度いくども之を熟読暗誦じゆくどくあんしようして、すなわちその口調くちようならうてつづりたるものは世界国尽せかいくにづくしなり。本文ほんもんのみにては尽さゞるが故に頭書かしらがきを加えて、およそ各地の風俗歴史ふうぞくれきし等の荒増あらましを記したれども、文章ぶんしようきわめて通俗つうぞくを主としていやしく難字なんじを用いず、まぎれもなき寺小屋流てらこやりゆう体裁ていさいなりと信ず。 — 福澤諭吉、『福澤全集緒言』、79-80頁[3]

出典

  1. ^ a b c デジタルで読む福澤諭吉 世界国盡. 一”. 慶應義塾大学メディアセンター. 2017年8月25日閲覧。
  2. ^ 福沢 1981, pp. 103-186。
  3. ^ 『福澤全集緒言』、79-80頁
  4. ^ 桑原 1979, pp. 89-90を参照。
  5. ^ 桑原 1979, pp. 89-117を参照。特に、94 - 95頁に楽譜が掲載されている。96 - 100頁に第1番から第26番までの歌詞が収録されている。
  6. ^ 桑原 1979, pp. 114-115を参照。特に、115頁には『首書絵入世界都路』の序文の一部が掲載されている。


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