パースニップ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/03 10:01 UTC 版)
栄養
根菜類の中では糖分(ショ糖)が多く、野菜と芋類の中間的な栄養成分を含んでいる[3]。典型的ものでは、パースニップには100グラム (g) 当たり75キロカロリー (kcal)のエネルギーが含まれる。ほとんどの栽培品種では、水が約80%、糖質が5%、タンパク質が1%、脂質が0.3%、食物繊維が5%である。パースニップはビタミンとミネラルが豊富で、特にカリウムは100 gあたり375ミリグラム (mg) と多い。ビタミンE・ビタミンB群・ビタミンCを含むが[2]、ビタミンCは調理すると減少する。ほとんどのビタミンとミネラルは表皮付近にあるため、皮をよほど丁寧に剥くか、丸ごと調理しなければ大半が失われてしまう。気温が下がり霜が降りるようになると、デンプンが砂糖に変換されるようになり、甘味が強くなる。
パースニップには健康効果がある可能性があるとされる。パースニップにはファルカリノール、ファルカリンジオール、パナキシジオール、メチルファルカリンジオールなどの抗酸化物質が含まれており、これらは抗がん性、抗炎症性、抗真菌性を持つ可能性がある。また、パースニップは食物繊維の量が多いため、便秘の予防や、血中コレステロール値を低下させる可能性がある。パースニップの食物繊維には可溶性と不溶性の両方があり、セルロース、ヘミセルロース、リグニンを含む。
栽培
野生のパースニップは、石灰岩土壌といった乾燥した草地や荒地に起源する。シルト質、粘土質、礫質の土壌では根が短くなり枝分かれするため、砂質やローム質の土壌が良いとされる。
種子は長期間保存すると発芽率が著しく低下する。種子は通常、早春に播かれる。生長している間は雑草のない状態に保ち、間引きも行う。収穫は、より糖度が増すように、秋の終わりに霜が降りてから行い、冬の間続く。霜が降りても容易に抜けるように、藁で覆うこともある。収穫しなければ、翌年に開花・結実するが、茎が木質化し、根も食べられなくなる。
病害虫
パースニップの葉は、ミバエの一種 Euleia heraclei の幼虫によって潜行食害を受け、淡褐色の食害痕が不規則な曲線として見える。葉全体にしわが生じて枯れることもあり、若い植物では深刻な影響を及ぼすことがある。薬品を用いるか、害を受けた小葉または葉全体を除去して対策する。
根はハネオレバエ科の1種 Chamaepsila rosae の幼虫の食害を受けることがある。この虫は根の外側の層を食害し、秋になるとより内側に侵入する。根が駄目になるだけでなく、若い植物は枯死することもある。食害を受けた場所から真菌が侵入し、腐敗する。このハエは傷ついた組織のにおいにひかれる。
パースニップは鱗翅目幼虫の餌にもなる。これを食草とするものとしては、アゲハチョウ属の1種 Papilio polyxenes、コウモリガ科の Korscheltellus lupulina や Hepialus humuli、クロヤガなどが知られる。ヒラタマルハキバガ類の Depressaria radiella はヨーロッパに自生し、1800年代半ばに北米に偶然に持ち込まれたが、これは散形花序に網を張り、花や発達中の種子を食害する。
パースニップにおける深刻な病害に、パースニップかいよう(parsnip canker)がある。黒またはオレンジ色から茶色の斑点が根の最上部に現れ、根のひび割れと硬化を伴う。冷たく湿った土壌に播種した場合や、土壌の pH が低すぎる場合、または根が食害を受けている場合に発生しやすい。かいように関係する菌類はいくつか知られており、Phoma complanata、Ilyonectria radicicola、Itersonilia pastinaceae、I. perplexans などがある。ヨーロッパでは、Mycocentrospora acerina が黒い病変を伴う病害を引き起こし、早期に枯死させることが分かっている。Sclerotinia minor と S. sclerotiorum は軟腐病を引き起こし、根が腐って柔らかく多汁質になり、表面に白または淡い色のカビが観察できるようになる。この病原菌は、温帯の冬に多湿になる地域と、亜熱帯地域で特によく見られる。
真菌の1種 Helicobasidium purpureum は紫色がかったマット状になって根を覆ってしまう。葉は歪んで変色し、菌糸は土壌中に広がる。雑草がこの菌を中継することもあり、特に湿った酸性条件でよく見られる。Erysiphe heraclei はうどんこ病を引き起こすため、重大な作物損失を引き起こしうる。これに感染すると、葉が黄変し、あるいは失われる。これは中程度の温度と高い湿度でよく発症する。
パースニップに感染するウイルスもいくつか知られており、 seed-borne strawberry latent ringspot virus、 parsnip yellow fleck virus、 parsnip leafcurl virus、パースニップモザイクポティウイルス、セロリモザイクウイルスなどが知られる。セロリモザイクウイルスは、葉脈付近の白変・黄変、黄土色のモザイク斑点、葉のしわを生じさせる。
毒性
パースニップの茎と葉の汁には、光毒性化学物質であるフラノクマリンが含まれ、汁がついた皮膚が日光に晒されると水疱を引き起こすため、注意して扱う必要がある。これはパースニップの属するセリ科ではしばしばみられる性質である。発赤、熱感、水疱といった症状がみられ、患部は最大で2年間、変色し過敏になる場合がある。庭師が葉と接触した後に発症した例もあるが、実際に栽培する人々の方が圧倒的によく発症する。晴れた日に、葉を集めたり、種を散布したあとの残骸を片づけるなどの作業を行った場合に最も発症しやすい。症状のほとんどは軽度から中程度である。
パースニップの抽出物では、毒性に加熱や数か月の保管に対する耐性がある。症状は、皮膚が露出した箇所のある家畜・家禽にも見られることがある。ポリインは他のセリ科野菜と共通してみられる物質で、細胞毒性を示す。
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