ノートパソコン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/24 00:17 UTC 版)
性能・用途別の分類
普及機(ローエンド~スタンダード)
ローエンドからロワメインストリームのCPU(2024年時点ではAMDのAthlonやRyzen、インテルのIntel Processor(旧・Celeron、およびPentium)、Core i3/i5/i7、Core Ultra5/7/9と、13~15インチクラスの液晶を搭載したモデル。価格優先の設計で寸法と重量が大きいが、CPUがボトルネックとなりにくい一般的な用途(ネットアクセス、低解像度の動画再生、文書作成や表計算などのオフィススイートなど)には必要十分な性能で、安価なこともあり各社の売れ筋商品となっている。チップセットにもモバイル向けローエンド製品が使われることが多く(一部例外あり)、GPUもチップセットに統合されている。中には無線LANをも省略したモデルもある[注釈 3]。また、2012年頃からUSB 3.0インターフェースや、一部に限られるがBlu-ray Discドライブ(主に東芝〈現・dynabook〉、NEC、富士通)、USB 3.1インターフェース(USB Type-C含む)、Thunderboltインターフェースなどをそれぞれ採用したも少なからず存在する。
ハイエンド
16~18インチクラスの液晶にデスクトップPC用のCPUと肩を並べる程の実力を持った最高レベルの処理能力(性能)を持ったCPU(2024年時点では主に最大24コア〈8Pコア・16Eコア〉/32スレッド版のインテルのCore HXシリーズ、もしくは最大8コア/16スレッド版のAMDのRyzen Proシリーズ)とハイエンドGPU(同・NVIDIAのGeForce RTX40シリーズあたり)を搭載したモデル。動画編集、DTM、パーソナルDAW、オンラインゲーム、CAD、解析用途など、充分なマシンパワーが必要な用途向け。「ゲーミングノートパソコン」や「モバイルワークステーション」などと銘打って売られているものもある。高速化を目的としたSSD、大容量のBlu-ray Discドライブや地上デジタルチューナーを搭載している機種もある。一般的な普及機よりも更に重量は重く(質量は大きく)、持ち運び移動などの用途にはあまり適さない。
2024年2月現在、日本で販売しているメーカーはLenovo(旧・IBM)、dynabook(旧・東芝)、富士通、NEC、デル、エプソンダイレクト、ヒューレット・パッカード、ASUS、エイサー、Apple、ショップブランドなどで、それぞれ各社のカラーがはっきりと出ているのが特徴。
ゲーミングノートパソコン
高負荷なPCゲームのプレイに堪える性能を備えたノートパソコン。高性能なCPU・GPU、大型の冷却機構や電源ACアダプタ、高精細なディスプレイ、マクロ機能を備えたキーボード、各部LEDライティングなどを特徴とする[17]。
ハイエンドモバイル
14インチクラス以下の液晶と高性能CPUを組み合わせたモデル。携帯性と高性能とを兼ねそなえている。GPUは消費電力を抑え携行性を確保するためチップセット内蔵のものを利用することもあれば、性能を重視してミドルレンジ程度のものを実装することもある。近年ではビジネスモバイルとの中間的モデルも増え、ビジネスモバイルとの区分がはっきりしなくなっている。
ビジネスモバイル
ビジネスで持ち歩くことを想定して作られたモデルで、携帯性と堅牢性、バッテリーの持続時間が重視されている。ビジネスバッグに簡単に収めることができ、(日本の)ラッシュ時の通勤電車にもまれても壊れないよう、マグネシウム合金やカーボンファイバー素材などの頑丈な筐体を持っている。CPUにも低電圧バージョンを採用し、細かな電力制御をするなど省エネに気を配って電池での稼働時間を延ばしている。その他にもハードディスクに対する負荷や衝撃を軽減する仕組みを採用したり、キーボードに水をこぼしても問題ない製品も存在する。
ただし、先述の素材を含め、小型軽量設計で高価格であることと、電池持続時間を優先するあまりCPUの性能が二の次になっているなど[注釈 4]、扱うデータのサイズやアプリケーションの種類によっては不利な面もある。
この分野は従来、パナソニック[注釈 5]、IBM(現・レノボ)[注釈 6]、富士通[注釈 7]が得意としていたが、最近ではNECやソニー(現・VAIO)も対抗するモデルを販売するなど、他社も追撃する気配を見せている。
ラグドPC
ビジネスモバイルから派生し、屋外での使用を主な用途と想定して耐振動・耐衝撃・防塵・防滴性能などを大幅に向上させたモデル。主に軍・警察・消防などで使われるが、振動に強いという性格から車載端末として使われるケースも多い。この分野は従来、パナソニック、ジェネラル・ダイナミクス(Itronix)、Getac(英語版)が市場をほぼ独占していたが、現在はNEC、デル、ヒューレット・パッカード、モトローラなども参入している (TOUGHBOOK、en:Rugged computerも参照)。
テレビパソコン
パソコンでテレビ放送を見るためのモデル。こういった方向性はアナログ放送・8ビットパソコン(デスクトップ機)の時代から存在するが、テレビチューナーを搭載しているのが条件で、地上デジタルテレビ放送開始後の2012年現在では、地デジチューナー搭載の大型ノートブックからワンセグチューナー搭載の1スピンドル機まで幅広くリリースされている。
パソコンとしての性能もさることながら、放送、あるいは映像ソフトを視聴するためのアプリケーションソフトウェアの使い勝手の良さも求められる。チューナーを内蔵するため、それなりの重量となる(東芝Qosmioは重さ4kg以上と、ノートパソコンとしては重い)が、チューナーを外付けにしてUSBケーブルでつなぐ形をとっているモデルは、テレパソでありながらテレビチューナーなしモデルとほぼ同じ重さとなる。テレビチューナーのない機種でもUSB接続の外付けワンセグチューナーを接続・テレビ局によるサイトでの同時配信(NHKプラス・日テレ系リアルタイム配信・TBS系リアルタイム配信・テレ東系リアルタイム配信・東京メトロポリタンテレビジョンのエムキャスなど)でテレビ番組を視聴することはできる。
ショップブランドPC
Clevoなど日本国外のメーカーから発売されているベアボーンを、パソコンショップが組み立てて販売する形態のパソコンのこと。BTO(受注生産)が基本。CPUグレードやメモリ、HDD容量など内容の設定の幅が広いため、無駄を極限まで切り詰めることができるので、低コスト、かつ、不必要な機能やアプリケーションソフトを省いたパソコンを手に入れることができるが、サポートセンターが存在しないので(販売店の対応レベルによる)、トラブルが起きても自力で解決(切り分け)できるスキルがユーザーにも要求される。一部にはノート型でありながらバッテリーを搭載しない機種も存在する。
デルやヒューレット・パッカードなど、直販BTO(またはCTO=Custom to order)主体のメーカーの製品も、ショップブランドほどではないものの、実際に製品に触れ、質問ができる店舗が限られるなど、初心者にとってはハードルが高い傾向にある。引き換えに、時折行われるキャンペーンなどを上手く利用すると、ショップブランド同様に低コストで不要なアプリケーションソフトが入っていないパソコンを手に入れることができ、サポートの内容もユーザーの好みで段階的に選べるため、電子掲示板などで情報を得られる中級者以上のユーザが購入する場合が多い。
また、家電量販店などで販売されている主要なメーカの多く(NEC、東芝、富士通、ソニーなど)は、並行して自社のウェブサイトで直接販売も行っており、直販専用モデルとして同程度の内容の製品が安価に売られていることも多く、メーカによっては通常より長い3年保証の付与、CPUやメモリ容量など一部内容の変更が可能、大型量販店でもオプションサービスで行われている自宅へ納品後の設定サービスが選択できる場合もある。
BTO販売の場合、2024年2月時点において、一般流通ルートではごく一部のパソコンショップを除き、ほとんど入手不能となったWindows 10が選択できる製品(流通のほとんどがHomeまたはProの各種64ビット版)もある(特に大手PC製造メーカーの法人向けの製品、およびパソコンショップ、直販BTOメーカーの各製品)。
ウルトラブック
14インチクラスの液晶画面を内蔵し、普及機並〜ハイエンドモバイルクラスのCPUを薄型の筐体に詰め込んだノートパソコン。SSDを搭載しているため、Webサービスやビジネス向けアプリケーションの使用では快適なパフォーマンスを発揮する。光学ドライブを省略し拡張性を排除した簡素な構成で、比較的低価格。性能と携帯性、価格のバランスに優れており、普及型とビジネスモバイル、ハイエンドモバイルのニッチを置き換える次世代の主流型ノートパソコンとして期待されている。
ウルトラモバイルPC
7~10インチ程度の小型液晶ディスプレイ、比較的低性能かつ超低消費電力タイプのCPUを搭載し、光学ドライブを省略した小型ノートパソコン(タブレットPC)の規格 が2006年に制定され、各社から製品が発表された。CPUにおいては、当初Intel A100などのCeleron MベースのCPU、もしくはVIA C7やAMD Geodeなどが主流を占めていたが、最近はIntel Atomを搭載した製品が大部分を占めている。しかし、ウルトラモバイルPCの特長であるペン入力やポインティングスティックなど複数の操作機構、画面を表にできる折りたたみ機構といった高付加価値による高価格、CPUやメモリの能力に見合わないOS (Windows Vista) がプリインストールされていたため、売り上げは伸び悩んだ。ただし、OSについては後述のネットブックが普及しだしてからはマイクロソフトのOS供給方針変更もあり、負荷が少ないWindows XPが搭載されるようになった。しかし、ネットブックともども2010年頃から急激に普及したタブレットコンピュータに駆逐され、結果的に消滅した。
ネットブック
2007年に、ラップトップパソコンよりもシンプルで低付加価値なネットブックと呼ばれている、10インチ前後のミニラップトップが急速に普及しだした。人気の背景にはパソコンが大半の用途において過剰性能になっていること、大容量のストレージや高い処理能力をそれほど必要としないウェブアプリケーションの普及がある。あえて低性能に抑える形で廉価なモジュールを組み合わせた製品が出回っており、2008年に前後する爆発的な普及では集積回路メーカーからOSをリリースしているMicrosoftまでもをまきこんでの、一大市場を形成した。なおこの際に、Microsoft側は低価格化のネックとなるOSのライセンス料を見直す上でULCPCという基準を示し、これがネットブックのスペック上限にも影響を与えている。
しかし、前記のウルトラモバイルPCと同様、このポジションはタブレットコンピュータに移行し、2010年に生産を終了した。
その他
ノートパソコンは、パソコン全般と共通するコンピュータ・アーキテクチャ(いわゆるPC/AT互換機)を採用、他のパソコンと互換性を備えているが、その互換性を持たない、ノートパソコンによく似た形態を持つ携帯機器として、スマートブックというジャンルも登場している。これらは、PC/AT互換アーキテクチャーを採用する上で小型化・低電力化を阻害する避け得ない様々な制約を回避する上で、ARMアーキテクチャなどスマートフォンのそれを採用した製品が見られ、これらはインターネット端末としてやクラウドコンピューティング端末など限られた機能しかもたない。
2010年より活性化したいわゆるタブレット端末にも通じるこれらでは、両ジャンルに食い込む製品も見られ、たとえばAsus Eee Pad Transformerのように、キーボードと本体であるタブレットPCが分離可能で、必要に応じて双方の利便性を使い分けられるようになっている。
注釈
出典
- ^ 最近のパソコントレンド(AllAbout2009年4月)
- ^ 2010年、ノートではなくデスクトップを選ぶ意味 ASCII.jp2010年6月
- ^ 世界のノート・パソコン生産台数,2009年に初めてデスクトップ型を上回る Tech-On!2009年3月
- ^ 世界PC生産台数、2010年は対前年比16.8%増で急回復 日経BPネット2010年6月
- ^ “日本初の世界標準「ノートPC」24年史”. 2013年8月閲覧。
- ^ “IBM 5100 computer”. oldcomputers.net. 2009年7月6日閲覧。
- ^ GRiD Compass 1101
- ^ ノート型コンピューターの父、ビル・モグリッジ氏が亡くなる
- ^ ASCII 1983年9月号, p. 119.
- ^ Bob Armstrong, http://cosy.com/language/cosyhard/cosyhard.htm
- ^ ASCII 1983年8月号, p. 96.
- ^ ASCII 1983年7月号, p. 97.
- ^ 格安Fusionベアで懐かしのラップトップPCを作ってみた ASCII.JP 自作PC
- ^ Macintoshを通じて視る未来 ASCII.JP MacPeople
- ^ “ITジャーナリスト・林信行とAppleのノートパソコン史を振り返る。|Pen Online”. Pen Online (2020年6月1日). 2024年1月20日閲覧。
- ^ “IT用語辞典バイナリ: スリムノートとは?”. 2008年12月9日閲覧。
- ^ 武者良太 (2020年9月29日). “ゲーミングノートPCメーカー4社に聞く「ライバル製品どうですか?」:ガジェットメーカーさんいらっしゃい!”. ギズモード・ジャパン (メディアジーン) 2024年1月21日閲覧。
- ^ Quanta と Compal、ノート PC 生産頂上決戦
- ^ “冷却台で夏場のノートPCの発熱対策”. ケータイWatch (インプレス). (2019年9月17日) 2020年5月5日閲覧。
- ^ 低温やけどにご用心 ノートパソコンでも 産経ニュース、2009年12月4日
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