本装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 06:08 UTC 版)
本装置(主コントローラ)は、操舵用制御圧力空気の1入力/2出力ポートをもち、魚雷の転動(ロール回転)に平行に配置される。本装置の中心軸に配置されたパイロット弁(パイロット・バルブ)にジャイロスコープから制御操作入力された魚雷のロール角度に対応して、ロール傾きを修正操舵する回転側の制御圧力空気の出力ポート(バルブ)を排他的にオンにする(開く)。本装置はさらに、修正操舵が効いて魚雷がロール傾きを正立位置に戻してくるときに、その角速度方向とロール角度の減少に対応して、修正操舵にブレーキをかける「当て舵」操舵(修正方向と逆向きの操舵)を行うため、それまでとは逆回りの回転側の制御圧力空気の出力ポートを排他的にオンにする。この結果、ロール角速度の時間微分である加速度を検出して制御することになる。 本装置は、円筒中空シリンダー形状のケースと、その気密状態中で所定の行程(ロール角度に比例する)を空気圧によって左右に滑動する円筒形重量物の滑動弁(スライダー・バルブ)、この滑動弁の中心軸を左右にプッシュプル操作されて動作するパイロット弁(パイロット・バルブ)、の3部位から構成されている。 滑動弁(スライダー・バルブ)は1入力2出力の構造をもつ円筒形状の重量物であり、ケース内部の両端壁と自由に動く滑動弁両端部との間に空気室ができる。滑動弁の芯となる中心軸の孔にはパイロット弁が挿しこまれていて、傾き検出したジャイロからプッシュプル(押し引き)操作されると、滑動弁の制御圧力空気の2出力ポートのうち片方の出力経路が塞がれ、他方の出力経路だけが排他的に開き、開いたオン側の出力ポートからは時計回り/または反時計回りの操舵をする制御圧力空気が出力される。 滑動弁(スライダー・バルブ)には内部に「通空気孔」とよばれる1対の空気補助孔が設けられている(説明動画)。この通空気孔が補助弁の働きをすることによって、重量物の滑動弁はプッシュプル操作されるパイロット弁の動作にやや遅れながら追随して、ロール角度に比例して左右に動く動作をする。この通空気孔から、オン側の出力ポートから分流した圧力空気がシリンダー形状ケースの片側端部に吹き込み、重量物の滑動弁をケース端壁から空気圧で押し出す。他方で押し込まれる側のケース端部の空気は、もう一方の通空気孔からオフ側の出力ポートを介して空気抜き孔から排出される。 重量物の滑動弁は、円筒中空シリンダー形状のケース内部を、密着状態で魚雷のロール角度に比例して左右に滑らかに動くが、その動作可能行程を魚雷の ±10.0° の範囲以内相当までに制限するために、ケースの構造寸法によって滑動弁のケース内滑動距離を制限している。このため、±10.0° の範囲を超えたロール状態のときには、この重量物の滑動弁はケース端部に密着したまま、したがってロール傾きを修正する操舵出力ポートをオン状態にしたまま、魚雷のロール角度が正立 ±10.0° の範囲に戻ってくるのを待っている。 正立 ±10.0° の範囲に戻ってきたときには、傾きは減少していき、ジャイロが操作するパイロット弁はそれまでとは逆方向に進むので、それに追随する円筒形重量物の滑動弁は逆方向に追随して働き、それまでの修正操舵出力ポートの回転とは逆回りの、もう一つの修正操作出力ポートを排他的にオンにする。これによって、魚雷のロール傾きが ±10.0° の範囲相当に戻ってきたときに「当て舵」(それまでとは逆回りの操舵)をして、ロール傾きを戻す回転角速度にブレーキをかける。 この当て舵操舵はジャイロがロール角度に比例してパイロット弁を再度反対方向に操作入力するまで続くので、結果的には魚雷のロール角度は、パイロット弁の操作入力と重量物の滑動弁の空気圧応答のわずかな時間遅れ(タイムラグ)を含んで、左右に微かなロール回転を残して揺れながら空中・水中を直進し、次第に正立位置に近づくように修正されていく。原理的に完全な傾き角度ゼロへの収束にはならず、わずかな揺れは残り、修正操舵の時間遅れ(タイムラグ)も残るが、航空魚雷の安定制御用として実用上支障なく、それ以上の理想追求の最適化は不要なことも確認された。
※この「本装置」の解説は、「九一式魚雷」の解説の一部です。
「本装置」を含む「九一式魚雷」の記事については、「九一式魚雷」の概要を参照ください。
- 本装置のページへのリンク