Influenza A virus subtype H1N1とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > Influenza A virus subtype H1N1の意味・解説 

H1N1亜型

(Influenza A virus subtype H1N1 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 16:10 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
H1N1亜型
復元されたスペインかぜ(H1N1)のウイルス
分類
: 第5群(1本鎖RNA -鎖)
: Incertae sedis
: オルトミクソウイルス科
Orthomyxoviridae
: A型インフルエンザウイルス属
Influenzavirus A
: A型インフルエンザウイルス
Influenza A virus
亜型 : H1N1亜型
subtype H1N1
学名
Influenza A virus subtype H1N1

H1N1亜型(エイチいち(ワン)エヌいち(ワン)あがた Influenza A virus subtype H1N1)はA型インフルエンザウイルスの亜型の一つである。H1N1A(H1N1) とも表記される。このうちA(H1N1)pdm09と呼ばれる系統がヒトの間で毎年流行している。

ヒトの季節性インフルエンザを引き起こすウイルスであり、2017/18シーズン現在、H3N2B型と並んで例年流行している。また、ブタの間で伝染する株もある(ブタの伝染株については豚インフルエンザの項目も参照)。鳥類からも、さまざまな種類の変異株が発見された。

低病原性のH1N1は、世界中に広く分布しており、2006年にヒトに感染したインフルエンザウイルスの約半数を占めている[1]スペインかぜとしてパンデミック(世界的流行)を起こしたウイルスもこの亜型のであり、1918年から1919年の間に5000万人から1億人の死者を出した[2](詳細は後述)。

1977年ソ連かぜが登場してからはAソ連型が季節性インフルエンザとして例年流行するようになり、2008/09シーズンまで続いた。末期にはオセルタミビル耐性株が広まり、2008/09シーズンには大部分が耐性株となった[3]。しかし2009/10シーズン以降はAソ連型は全く報告されていない[4]

2009年には新型インフルエンザとしてA(H1N1)pdm09が登場し、パンデミックを引き起こした(後述)。以降はこれがAソ連型に取って代わって流行を続けている。

2005年、H1N1のゲノムが科学雑誌サイエンスで発表されたが、このゲノム情報がバイオテロに使われる恐れがあるとして論争が起こった。同誌には 「1918年のスペインかぜを起こした株と現在の株を比較した場合、約4400のアミノ酸のうち、25個から30個程度しか変異していないことが判明した。この変異によってトリ由来のウイルスがトリからヒト、さらにヒトからヒトへと感染するようになった。」とある[5]

著名な流行

スペインかぜ

アメリカヨーロッパにおけるスペインかぜの死者数

スペインかぜは非常に致死率の高い悪性の変異株によって起こったインフルエンザパンデミックである。第一次世界大戦中の1918年から1919年の間に流行し、5000万から1億人の感染者が死亡した。他の伝染病戦争自然災害などと比較しても、最も短期間で多くの死者を出した出来事であった。

スペインかぜはH1N1のインフルエンザウイルスによって起こったものであるが、H5N1やH5N2によって引き起こされるトリインフルエンザと類似性が見られる。

一説には、H5N1と同様に全身にサイトカインストームを引き起こすため、致死率が高かったというものがある。この説による機序であるが、スペインかぜを起こしたウイルスは細胞に対して影響を及ぼし、結果肺組織においてサイトカインが過剰に分泌され免疫系を刺激する。これによって白血球が肺に移動し、肺の細胞を破壊して出血を伴う中程度から重度の肺胞炎、肺胞浮腫を引き起こすことで、患者は呼吸困難に陥る。このようなサイトカイン・ストームは、幼児や高齢者より、健康で免疫系が正常な若年の患者に起こりやすい。

ソ連かぜ

ソ連かぜは、1977年から1978年にかけてソ連で流行したA/USSR/90/77 (H1N1)によって起こったインフルエンザのエピデミック(局地流行)である。よく似た株によるインフルエンザが1947年から1957年にも流行したため、免疫を持たない23歳未満の子供や青年に感染した。パンデミックと言われることもあるが、主に青年のみに感染したため厳密にはパンデミックではない。1978年から1979年にかけて製造されたワクチンにはこのウイルスが含まれている。日本ではH1N1をソ連型、もしくはAソ連型と呼ぶこともある。ソ連かぜは研究所に保存されていたウイルスが何らかの理由で流出したことが原因といわれている[6][7][8][9]

2009年の流行(パンデミック2009H1N1)

2009年の春頃から2010年3月にかけて米国から世界中でH1N1亜型による新型インフルエンザが流行(パンデミック2009H1N1/H1N1pdm09)した。豚の間で流行っていた豚インフルエンザのウイルスがヒトに感染するようになったことに起因するとされる。メキシコで流行した後に全世界へ拡大しており、2009年6月12日には世界保健機関 (WHO) が世界的流行病(パンデミック)と宣言し、警戒水準もフェーズ6に引き上げられた。当初のメキシコにおける流行では感染死亡率の高さから注目されたが、その後の分析によって季節性インフルエンザ並みかそれ以下の致死率 (0.045%)とされている[10][11]。今回の流行により、2010年1月までに全世界で1万4千人以上の死者を出している(ECDC – 2010年1月18日[12])。

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ CDC
  2. ^ NAP Book
  3. ^ 2008/09インフルエンザシーズンにおけるインフルエンザ (A/H1N1)オセルタミビル耐性株 (H275Y)の国内発生状況 [第2報] , IASR Vol. 30 p. 101-106: 2009年4月号, 国立感染症研究所
  4. ^ 今冬のインフルエンザについて (2016/17 シーズン) 今冬のインフルエンザについて (2016/17シーズン)p.9 国立感染症研究所 平成29年6月19日
  5. ^ New York Times
  6. ^ CNN interactive health timeline box 1977: Russian flu scare
  7. ^ Time magazine article Invasion from the Steppes published February 20, 1978
  8. ^ Global Security article Pandemic Influenza subsection Recent Pandemic Flu Scares
  9. ^ State of Alaska Epidemiology Bulletin Bulletin No. 9 - April 21, 1978 - RUSSIAN FLU CONFIRMED IN ALASKA
  10. ^ 新型インフル:致死率「季節性」並み 米チーム解析(毎日新聞 2009年9月30日報道/インターネットアーカイブ
  11. ^ Situation updates - Influenza A(H1N1)” (English). 世界保健機関 (WHO). 2014年4月14日閲覧。
  12. ^ ECDC Daily Update – Pandemic (H1N1) 2009 – 18 January 2010”. European Centre for Disease Prevention and Control (2010-01-18 09:00 UTC +2). 2014年4月14日閲覧。

関連項目


「Influenza A virus subtype H1N1」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

Influenza A virus subtype H1N1のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



Influenza A virus subtype H1N1のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのH1N1亜型 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS